リハビリテーション評価は、単に検査・測定を行って終了するものではありません。
対象者に関する情報を収集し、必要な検査・測定を行い、得られた情報を統合・分析します。そして、問題点を明らかにしたうえで目標を設定し、具体的なリハビリテーション計画へとつなげていきます。
基本的な流れは、次のように整理できます。
情報収集
↓
検査・測定
↓
問題抽出・統合と分析
↓
目標設定
↓
リハビリテーション計画の立案
↓
介入
↓
再評価
↓
必要に応じて目標・計画を修正
それぞれについてみていきましょう。
1.情報収集
評価の最初の段階では、対象者について必要な情報を収集します。
情報収集では、診断名や既往歴などの医学的情報だけでなく、対象者本人や家族からの情報も重要になります。
たとえば、
- 診断名・発症日・受傷日
- 現病歴・既往歴
- 治療内容
- 服薬状況
- 医師からの指示やリスク管理上の注意点
- 発症前・受傷前の生活状況
- ADL・IADL
- 家族構成・介護力
- 住環境
- 仕事・趣味・社会的役割
- 本人や家族の希望
などについて情報を集めます。
ここで重要なのは、単にカルテから情報を書き写すことではありません。
「この対象者のリハビリテーションを考えるために、どのような情報が必要なのか」
という視点を持って情報収集を行います。
また、本人との会話や動作の観察から得られる情報も重要です。
2.検査・測定
情報収集によって対象者の全体像を把握したら、必要な検査・測定を行います。
検査・測定には、
- 意識
- 認知機能
- 高次脳機能
- 疼痛
- 関節可動域
- 筋力
- 筋緊張
- 運動麻痺
- 感覚
- 協調性
- バランス
- 起居・移乗動作
- 歩行
- ADL
などがあります。
すべての検査を行えばよいわけではありません。
情報収集や動作観察から、
「何が問題となっている可能性があるのか」
「その仮説を確認するためには、どの検査が必要なのか」
を考えながら検査・測定を選択することが重要です。
たとえば歩行時に膝折れがみられた場合、「大腿四頭筋の筋力低下が関係しているのではないか」「感覚障害はないか」「疼痛の影響はないか」などの仮説を立て、それを確認するために必要な検査を行います。
このように、検査・測定は単独で行うものではなく、情報収集や動作観察と関連づけて実施します。
3.問題抽出・統合と分析
検査・測定を行った後は、得られた情報を整理し、対象者が抱えている問題を明らかにします。
ここは、リハビリテーション評価の中でも特に重要な過程です。
たとえば、
「立ち上がりに介助が必要」
という問題があった場合、
立ち上がれない → 下肢筋力が弱い
と単純に判断するのではなく、
- 下肢筋力
- 関節可動域
- 体幹機能
- バランス能力
- 疼痛
- 感覚
- 運動麻痺
- 動作方法
- 認知機能
- 使用している椅子の高さ
など、さまざまな要因との関連を検討します。
そして、
「どの要因が問題に関係しているのか」
「複数の問題がどのように関連しているのか」
「どの問題を優先して介入すべきなのか」
を考えていきます。
これが、評価における統合と分析です。
検査結果を一つずつ並べるだけではなく、それぞれの情報を結びつけて対象者の状態を説明できるようにすることが重要です。
4.目標設定
問題点とその要因を整理したら、リハビリテーションの目標を設定します。
目標は、「筋力を上げる」「関節可動域を改善する」といった身体機能だけで考えるのではなく、対象者が実際の生活で何をできるようになりたいのかを考えることが重要です。
たとえば、
下肢筋力を改善する
こと自体を最終的な目標とするのではなく、
下肢筋力を改善する
↓
一人で立ち上がれる
↓
トイレまで移動できる
↓
自宅で安心して生活できる
というように、身体機能の改善が活動や生活にどのようにつながるのかを考えます。
そのため、本人・家族の希望や予後、生活環境などを考慮しながら、長期目標と短期目標を設定します。
5.リハビリテーション計画の立案
目標が決まったら、その目標を達成するための具体的な計画を立てます。
たとえば、
- 関節可動域練習
- 筋力増強練習
- バランス練習
- 基本動作練習
- 歩行練習
- ADL練習
- 装具・歩行補助具の検討
- 福祉用具の導入
- 住宅環境の調整
- 家族への介助方法の指導
- 多職種との連携
などを検討します。
ここでも、「この人にはこの疾患があるから、この訓練を行う」と考えるのではなく、
評価で明らかになった問題に対して、目標を達成するために何が必要なのか
という考え方が重要です。
6.介入
作成した計画に基づいて、実際のリハビリテーションを行います。
ただし、一度計画を立てたからといって、その内容を変更せずに続けるわけではありません。
介入中にも対象者の反応を観察し、
「この方法で動作が改善するか」
「疲労や疼痛は生じていないか」
「想定していた問題が本当に動作を制限しているのか」
などを確認します。
つまり、介入そのものも評価の機会になります。
7.再評価
一定期間リハビリテーションを実施した後には、再評価を行います。
初回評価と同じ検査・測定などを行うことで、
「どの程度改善したのか」
「目標に近づいているのか」
「現在の介入は適切なのか」
を確認します。
そして、結果に応じて目標やリハビリテーション計画を見直します。
改善がみられなければ、問題の捉え方や介入方法を再検討する必要があります。
一方、目標を達成していれば、次の目標を設定します。
評価は一方向ではなく循環する
リハビリテーション評価は、
評価をする → 計画を立てる → リハビリをする
という一方向の流れではありません。
情報収集 → 検査・測定 → 統合と分析 → 目標設定 → 計画 → 介入 → 再評価
という過程を繰り返しながら、対象者の状態に合わせてリハビリテーションを修正していきます。
さらに、実際の臨床ではこれらが完全に独立して進むわけではありません。
情報収集をしながら動作を観察し、そこから仮説を立てて検査を行い、検査結果によって再び情報を集めることもあります。
そのため、評価とは決められた検査を順番に行う作業ではなく、
「情報を集め、仮説を立て、確認し、分析し、介入し、その結果を再び確かめる」という継続的な臨床推論の過程
として捉えることが大切です。
この評価の流れの中で、対象者の「心身機能・身体構造」だけでなく、「活動」「参加」「環境因子」「個人因子」まで含めて全体像を整理するために役立つ考え方が、ICF(国際生活機能分類)です。

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