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日常生活動作(ADL)である食事、整容、更衣、排泄、入浴を解説します

活動

 日常生活動作は狭義では食事、整容、更衣、排泄、入浴の5項目を指します。

 私たちが行っている日常生活は買い物、洗濯、掃除、調理、皿洗い、後片付け等の活動から生活が成り立っていて、これらは日常生活関連動作と呼ばれます。また、活動範囲を家の外にまで広げると、学校や仕事、お金の管理、地域で活躍など自分と社会をつなぐ活動をしていることがわかります。

 ここでは、狭義の日常生活について、もう少し深堀りしてみます。

食事

 食事とは何でしょう?

 料理されたものが自分の目の前に運ばれてきました。白い大きなお皿の中央にミディアムに焼かれた牛肉にソースが絵を描いたようにかかっています。彩の野菜も一口サイズに添えられています。香りもよく静かな環境ではより引き立ちます。明かりもちょうどよく、空調も柔らかな風がたまに通り過ぎます。私の向かいにはあこがれのあの人がいます。

 なんちゃって、こんな雰囲気の食事もいいでしょう。ここで、自分の周りの環境や食事の見た目や香りなど食事には非常に重要になります。信頼できる人と楽しい会話ができればより食事の時間が華やぎます。

 病院や施設ではただの栄養摂取の意味合いが強い感じがして、重要なことはわかっていますがなんだか楽しい感じがしません。

 病院や施設では給仕が楽になるようにテーブルに配置し、配膳も、食事の時間も、下膳も、忙しく大変に見えます。薬の飲み込みが大変な人はおかゆに混ぜられておかゆとともに内服完了します。

 もっと食事の時間を大切にする研究を行うことが必要だと考えています。

 脱線しましたが、

 食事には摂食、咀嚼、嚥下により食べ物や飲み物を口から胃まで運ぶことを指すことが多いと思います。

 摂食食べ物を咀嚼できる大きさにして、それをスプーンなどですくい、または箸でつまんで口の中に入れるところまでを指します。上肢機能と目と手と口の協調性について評価が必要です。

 咀嚼歯で食物をかみ砕くことですが、それだけでなく、咀嚼することで唾液腺から唾液が分泌され食物と混ざることによって消化酵素としての役割を果たします。しっかり嚙むとよく食物が砕かれ、また連続して胃に送り込まれなくなるため胃の負担が軽減されます。口唇の筋力、咀嚼に関する筋力、舌の筋力と動き、口腔内の感覚、舌の味覚、唾液腺と唾液量についての評価が必要になります。

 嚥下はⅠ相、Ⅱ相、Ⅲ相に分かれて、Ⅰ相は随意運動としての送り込み期、Ⅱ相は喉頭・咽頭期、Ⅲ相は食道期です。

 Ⅰ相は随意運動とされていて意識的に動かすことで筋力の強化を図ることがあります。

 Ⅱ相、Ⅲ相は反射によるもので、神経機構や筋収縮の強さやタイミングが重要になります。神経機構に不具合があると飲み込み間違いや嚥下困難が出現するため、検査で状態を把握する必要があります。

 嚥下障害と介助の工夫:摂食リハビリと介助はここをクリック

 嚥下障害に関する評価はここをクリック。

更衣

 更衣は必要な動作で、その日の気分やこれからお出かけする場所に合わせたコーディネイトをすることで自分の気持ちが上がりお出かけして人に会いたくなります。

 自分で服を選んで着ることはQOLの向上にも非常に重要な項目です。

 更衣の評価では、服を取り出したり、しまったりすることはここでは評価しません。服をタンスから出すことや、畳んだ衣類をタンスにしまう動作は別に評価をします。なぜかというと、その人の家の状況で動作パターンが全く違うため、一つの動作で評価ができないためです。

 更衣の中でまず上着から評価します。

 上着の着脱の評価をする前に、関節可動域検査、筋力検査、感覚検査、座位保持検査を事前に行う必要があります。上着の着脱のための上肢の動きができるか、また座位姿勢を保持して上肢が動いている間座位保持ができるかの判定が必要です。

 かぶりの上着を着る場合は、一瞬顔の前を衣服が通る間に視覚性の立ち直り反応が使えなる時間があるため、視覚性の立ち直りに頼っている人はバランスが取れなくなる可能性があります。

 上着は前開きの服を着ることから見てみます。

 座位の姿勢は両手で支持していなくても保持できていますか?座位が安全に保持できていることが確認できれば、服を渡してください。

 服の裏表や左右を確認して最初に通すところを探します。腕を服の袖に通す動作はバリエーションが多くなります。初めに腕を通した上肢の反対側の上肢の屈曲外転外旋の可動域が大きく肘を通す動作の時には外転が140°までに達します。外旋も最終域の90°に達します。腕を通した上肢の反対側の上肢が全可動域でMMT4レベルにある場合、前開きの服が自分で着ることができる可能性が高まります。

 整容

 リハビリの中での整容動作は洗顔、歯磨き(口腔ケア)整髪爪切り髭剃り(主に男性)、化粧(主に女性)を指します。

 外見を整えることで気持ちが安定し、人とお話をすることや出かけたい気持ちになることがあります。感情や表情に変化が現れるため、整容動作は重要な項目であると認識しています。

1. 洗顔とスキンケア

 朝の洗顔と、夕方の化粧落としを行います。適切な洗顔製品の使用することをお勧めします。メイク汚れを取り除くことも専用の製品で行います。目の周りと口回りに注意して行います。洗顔後は保湿の製品を塗布するとより状態は良くなります。

 洗顔だけでなく両手をみます。かさかさしているときは手にも保湿剤を塗布します。自分でできるだけ行うよう援助してください。

 鏡を見た際は目と顔の皮膚の状態を見てください。目の状態は、充血、瞼の腫れ、目ヤニ、白目の部分の色を見て、異常が見られるときは医師に診てもらってください。顔の皮膚は、傷、腫れ、色を見て異常があれば医師の診察が必要です。

2. 歯磨きと口腔ケア

 鏡の前で自分の歯と舌の状態をよく見てください。汚れ、色、腫れ、出血がないかよく見ます。

 歯ブラシと歯磨きペーストによりブラッシングします。軽く当てて小刻みに動かします。歯茎についても意識してきれいにします。舌の表面が汚れている場合は、専用の舌ブラシと洗浄ペーストを使用してきれいにします。舌の洗浄は一日一回で十分です。舌の表面が傷つかないように軽い力で行ってください。歯を含めて濯いできれいになったら、口腔内洗浄リンスで再度濯いでください。

 口腔内で、腫れや出血、痛みが強い、口内炎が1週間以上続くなど異常が見られるときは医師または歯科医師の診察が必要です。

3. 整髪と髪のケア

 髪ブラシで整えます。その際に、脱毛の程度、フケの状態をみます。頭皮の状態が悪いときは医師の診察を受けてください。

 髪と頭皮のケアは洗髪の際にシャンプーによる髪と頭皮ケアを行います。

4. 爪切り

 清潔や安全のため定期的に切りそろえる必要があります。ただ、爪切りハサミは刃物であり、目が見えにくい、手指の巧緻性が悪い、手が届かないなどの原因で自分でできないことがあるため、その時は無理せず援助を受けましょう。

排泄

 排泄は日常生活において不可欠であり、体内の有害な物質や不要な物質を取り除くという重要な働きを担っています。そのため生まれてから亡くなるまで排泄は行われます。排泄は尿と便の各動作があります。

 体が動けない時はおむつなどを使用して援助を受けるのですが、乳幼児期と高齢者でトイレの活動ができない際に援助が必要となります。トイレの活動ができないとは、身体動作と認知機能のどちらかかまたは両方がうまく機能していない時に現れます。

 おむつ管理の際に排泄したことを訴えることができない場合は、定期的におむつの中を確認します。

 それ以外では自分で排泄の管理を行いますが、投薬により排尿排便の管理ををしている、ストーマや留置カテーテルなど器具により排泄の管理を行っていることもあります。それぞれの管理方法に合わせた対応を行います。

1. 尿の排泄

 腎臓 排泄のプロセスは、まず腎臓で始まります。腎臓は血液をろ過し、不要な物質(尿素、尿酸、余分な水分、毒素などを取り除き尿を産生します。

 尿管 腎臓で生成された尿は尿管を通って膀胱に運ばれます。尿管は腎臓から膀胱に尿を送る役割を果たします。

 膀胱 膀胱は尿を一時的に貯蔵する器官です。尿が膀胱にたまると、尿意が生じます。

 尿道 尿意が生じたとき、膀胱から尿が尿道を通って体外に排泄されます。

2. 便の排泄

 消化器系 食べ物は消化器系を通り、栄養素が吸収された後、不要な部分が結腸に送られます

 結腸(大腸) 結腸は便を形成し、水分を取り込んで固化させます。便は大腸を下り、直腸に移動します。

 直腸 便が直腸に貯蔵され、排泄の準備が整えられます。

 肛門 排泄の際、肛門の筋肉を緩めて便を体外に排出します。

 尿は主に余分な水分と窒素廃棄物を排除し、便は未消化の食物、細胞の欠片、細菌などを排出します。排泄には適切な飲水、食事、運動、衛生が重要です。また排泄に関連する問題や病気(尿路感染症、腸の問題、腎臓疾患など)がある場合、医師の診察を受けることが重要です。

 排泄以外に排泄動作があります。トイレへの移動、戸の開け閉め、便座までのアプローチ、ズボンとパンツの上げ下げ、後始末、電気、手洗いと多くの動作を行う必要があります。

入浴

 入浴は、浴槽にお湯をためて、その中に身体を浸かることです。浴槽に入り、浸かり、出る、この動作は筋力が低下し、片足で支えることが難しく反応速度が遅い方には援助が必要になります。介助用具や機器を適切に導入し、援助者の負担や危険性を極力軽減します。

片麻痺の方の入浴方法

 浴槽に入るときは、浴槽の縁をまたぐ動作が必要になります。浴槽を跨ぐときは非麻痺側(よく動く方の足、健側)から、浴槽に入ることとされています。その理由は、非麻痺側は浴槽内で支持性が高い(踏ん張りがきく)こと、感覚障害がないためお湯の温度がわかりやすいということがあげられます。絶対ではありませんが、お風呂場環境みながら介助する方法がうまくできるかをリハビリと介護する側で十分検討してください。

 立って浴槽の出入りをする場合

 浴槽に入る場合は、立って入る方法座って入る方法があります。

 立って入る場合、つかまるところを設置してください。縦の手すりで、浴槽の縁に近いところがいいと思います。

 ユニットバスは手すりがあらかじめ設置されているため必要なところに手すりがないときがあります。家族とケアマネージャーと相談の上、福祉用具の専門家と話をすることをお勧めします。住宅改修も含めて手すりの取り付け方を検討するためです。賃貸住宅や設置ができない壁である場合は、福祉用具のバスグリップなどを導入する検討をします。その際も、複数のサービス提供業者と本人・家族を交えて十分検討をします。

 浴槽の近くに立ち、手すりのついている壁に体を向けます。浴槽内は滑らないような加工をしているか、滑り止めマットの設置をします。非麻痺側の手で手すりにつかまり、非麻痺側下肢から浴槽を跨ぎます介助者は麻痺側に立つか、後方から転倒しないように支えます。手すりの場合上半身が垂直に近い状態のため、前方に足を持ち上げての跨ぎ動作ができると思います。跨ぐための股関節や膝関節の屈曲の可動域が不十分か、持ち上げる筋力が不十分な場合は麻痺側下肢を後ろに跳ね上げる方法で跨ぐことができます。

 非麻痺側の跨ぎ動作が不十分な場合は立位での方法は行わないようにしましょう。また、浴槽内で非麻痺側下肢の支持性が不十分な場合は、座位で入浴する方法を選択します。

 浴槽の縁に取り付ける浴槽用手すりを使用する場合は順番は一緒ですが、体幹部を屈曲(前傾)するため跨ぎ動作はすべて麻痺側下肢は後ろに跳ね上げる方法にします。介助する際にも足の邪魔にならないところに立って介助します。

 非麻痺側が浴槽内でしっかり支持できれば、麻痺側の下肢を浴槽に移します。可動域や筋力に問題がなければ前方の持ち上げも行えますが、大抵は足を後ろに跳ね上げる形で下肢の跨ぎ動作を行います。介助者は下肢の介助をしますが、その際に上体のバランスが取れるかの注意も必要です。

 浴槽内に両足が入っています。横手すりがあれば浴槽1/3前の部分をつかみます。非麻痺側の下肢を30cmほど後ろに引きます。手で後方に倒れないようにしっかり支え、非麻痺側下肢を曲げて徐々にお湯の中につかります。介助者は前方に向き合い両肩の援助を行います。臀部が浴槽底に接地し、安定を確認し、介助者は浴槽から出ます。

 立ち上がりは浴槽の横手すりに浴槽の半分の位置に健側の手でしっかりつかみます。健側下肢を臀部のできるだけ近い位置まで引いてもらいます。介助者は前方から両肩をつかみますが、滑る危険性がある場合、介助ベルトを使用して立ち上がりの介助をします。立ち上がりができたら、縦手すりのある前方に1歩程度移動します。

 浴槽縁の縦手すりに摑まり、安定を確認し、非麻痺側の下肢の跨ぎ動作に移ります。非麻痺側の下肢を後ろに跳ね上げるようにして介助します。状態が不安定になるかの確認をしながらになるため注意が必要です。非麻痺側の下肢が床に付き、支えられることを確認出来たら介助者は上体を支えます。その間に健側下肢の浴槽からの跨ぎ動作をしていただき、外に出ます。前方か後方アプローチかは入るときと同じ方法としてください。ここである程度体を拭き、服を着る場所まで移動します。

 浴槽の縁に取り付ける浴槽用手すりを使用する場合は出る順番は一緒ですが、跨ぎ動作は下肢を後ろに跳ね上げる方法になりますので、介助の際注意して行います。

片麻痺の方で 立位で浴槽に入る場合 非麻痺側(動ける方の足)から入ります

片麻痺の方で 立位で浴槽から出る場合 麻痺側(動きにくいほうの足)から出ます

座って浴槽の出入りをする場合

 立っての跨ぎ動作が不安定な場合は座って行います。そのためには福祉機器が必要になります。入浴台(バスボード)を導入しますが、浴槽外と浴槽内に設置するものがあります。介助方法で機器を選定することになるので、導入前にケアマネージャー、介助者、福祉機器事業者と相談するようにします。練習が必要な場合は訪問リハビリテーションにて練習してから介助者に伝達します。

 外付け浴槽台で、入浴する。

 浴槽外の座るところがあるため、ずれ落ちないように注意して腰を掛けていただきます。壁を背に非麻痺側が浴槽側になるようにします。つかまるところがある場合は体が崩れないようにしっかりつかみます。非麻痺下肢を挙上(屈曲)して跨ぎます。挙上が不十分な場合は介助します。非麻痺下肢が浴槽底にしっかり接地したら、30度ほど浴槽のほうに体を回旋します。麻痺側の跨ぎは介助します

 両足が浴槽底面に着いたら立って体を浴槽に合わせてまっすぐ立ちます。浴槽の横手すりがあれば、その中央付近をつかみます。浴槽の底は滑り止めマットを敷くか、滑り止め加工が施されているかの確認をしてください。非麻痺側(健側)下肢を後ろに引きます。手の支えと、非麻痺側下肢を曲げて浴槽にゆっくりと浸かります。その時、麻痺側下肢は前方に伸展(伸ばした格好)している格好になります。介助者は前方から両脇を抱えるか、麻痺側の上肢に介助してふらつきや急な座り込みを防ぎます。臀部が健側の踵付近か浴槽の底に着いたら、安定していることを確認して、非麻痺側の下肢を伸ばします。

 お湯につかっているときの注意点は、痩せている人は足が浮いて頭が沈むような格好になることがあり、大変危険なので入浴中も目を離さないようにします。

 お湯から上がるときは、非麻痺側の下肢を屈曲して浴槽底に足をしっかり付けます。横棒の中央付近をつかんでもらいます。介助者は相手の前方か麻痺側に立ち、腋窩介助にて立ち上げます。相手の力を入れる程度に合わせての介助で介助量が少なくなる時があります。安全を確保しながら介助台に近づき座る介助をします。

 座る位置を調整して摑まるところがある場合はしっかり摑まってから麻痺側の下肢の浴槽跨ぎの介助を行います。座る姿勢を崩すことがあるので体勢を見ながら行います。非麻痺側の跨ぎを行います。できない時は介助します。

浴室内の移動

 浴室内の移動はシャワーチェアのキャスターがついているもので座ったまま移動することができます。装具を装着できない浴室内の移動で必要になります。歩行が可能の場合は、介助ベルトをしている場合は介助ベルトを必ず持ち、滑る注意をしながら歩行介助を行います。脱衣場に椅子を用意して、そこに腰を掛けて着衣を行います。

お湯の温度と入浴中の注意点

 浴槽のお湯の温度は季節や体調に合わせることが必要で、夏場は38℃付近、冬場は39~41℃付近で調節をします。温度が高すぎると言われることがありますが、部屋の温度と浴槽内の温度が25℃付近であればヒートショックによる危険性は低くなります。体を温めるため、長湯をする方がいますが、浴槽の出入りや移動、更衣の際に不安定になることがありますので、3分を目安に、長くても5分以内を心掛けましょう。

 入浴直後は心拍の上昇と、収縮期血圧の上昇が起きることがあります。入浴して体が温まると収縮期血圧が低下することがあります。また、極度の睡魔に襲われることがあるため、介助者は入浴中も掛け声をかけて反応を見てください。

 入浴が終わり、立ち上がった瞬間、収縮期血圧が大きく低下することがあります。体が温まることにより全身の毛細血管の拡張が起こっていることと、下肢や体幹部にかかっていた水圧が立つことによりなくなるため、重力によって血液が下肢に滞留します。そのため、起立性低血圧症状を起こし、めまい、ふらつき、眼前暗転、意識消失が生じることがあります。その際は安全に入浴台に吸われる場合はそちらに座り、入浴台に座れない時はお湯の中に戻っていただきます。

 入浴中や立ち上がりの際の事故が多いため、入浴用の介助ベルトを装着するか、他の人の救援が得られる状況での入浴がベストです。

 仕事で介護や介助する場合は、契約時の重要事項説明書で説明し、対応策を事前に決めておくことも重要です。

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