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基本動作における立ち上がりの必要な条件と姿勢保持のバランスの関連

基本動作

 基本動作とは寝ている姿勢から立っている姿勢、その逆の立っている姿勢から寝ている姿勢になるまでの一連の動作を指します。

 寝ている姿勢から立っている姿勢になるまでには様々な動作を経由します。

 この動作は基本動作と呼ばれ、起き上がり、立ち上がりなどです。関節可動域と筋力、バランス能力が必要でこれらどれかに障害があると基本動作が困難になります。歩行、走行、跳躍は別の項目として検査します。

 姿勢とは動きが伴わない静的な保持が中心です。

 姿勢保持はその姿勢を保ち続けることです。

 姿勢保持は静的ではありますが全身の筋が協調して働き、立ち直り反応を含めた姿勢制御をしているため、静的であっても全身の筋が働いています。

 重心の位置が床から離れるほど、また支持基底面の中心から離れるほど姿勢制御に関わる機構が多くなるため立位の姿勢保持は高度な制御が必要となります。臥位であっても重心の位置が比較的高くなる側臥位は制御機構が必要で、側臥位を維持できる制御系が働かないと保持は難しくなります。姿勢保持のための制御系は筋力と姿勢バランスが重要で感覚統合や立ち直り反応など高次脳機能が重要な要素となります。感覚障害がある疾患やパーキンソン病、小脳障害で姿勢保持が困難になります。いろいろな要素が絡み合い、複数の検査項目と組み合わせを行わなければならず、分析が複雑になります。姿勢保持の検査は難易度が高いため、理学療法士同士で話し合いをしても全く意見が合わないことがあります。

 ベッド上背臥位からベッド端坐位になるには「起き上がり」の基本動作が必要です。また座位から立位となるためには「立ち上がり」の基本動作が必要です。ある姿勢からある姿勢まで重心が移動する場合、基本動作を行うことにより次の姿勢に移ることができます基本動作は大きく分けて3つに分類され、寝返り、起き上がり、立ち上がりです。寝ている姿勢から立ち上がるまでを行う方法は、その人が普段行っている一連の流れを選択するか、今の身体能力で可能な流れを提示することが必要です。今は提示した基本動作ができないとしても、必要な筋力を向上し、動作の技術を取得することで行えるようになることがあります。

 基本動作の分析には、動作の方法を実際に見る動作分析機能障害に関する検査項目を実施してその結果に対して因子分析を行います。機能障害に関する検査項目は、認知機能(前頭葉機能を含める)、関節可動域検査、筋力検査など、また疾患に関連する必要な評価項目を実施します。

 幼児期は背臥位から寝返って(腹臥位)、そこから上体を起こし両膝に体重をかけ四つ這いの姿勢になります。台があればそこに手をついて片膝立ちから立位あるいは両ひざを上肢と下肢の力でそのまま伸展し立ち上がろうとします。さらに筋力がつくと四つ這いから両下肢伸展しそのまま立位になる場合や、いったんしゃがむ恰好から立ち上がる子もいます。登攀性起立(とはんせいきりつ)(Gowers sign)は腹背筋群、殿筋群の筋力低下が原因ですが、デュシャンヌ型筋ジストロフィー症の経過過程で見られる立ち上がり方です。さらに発達が進むと側臥位から横座りになり、片膝立ちになるか、または高這いになってから立位になるなどいろいろなルートで立位になります。変形性膝関節症で膝関節屈曲制限がある方は、この方法で床から立ち上がります。

 病院や施設の場合は、背臥位から起き上がり端坐位へ、端坐位から立位となるパターンが主体となります。また、背臥位から寝返って側臥位や腹臥位ができると、安楽な睡眠や褥創予防になるため、ベッド上の動きも重要になります。これら基本動作は日常生活動作や社会参加に大きく影響を及ぼすため確認することが大切です。

 少し動作分析の観点から例を挙げて考えてみましょう。両側変形性膝関節症の方の床からの立ち上がりを見たことがありますか?両方の膝が90°屈曲できない時は四つ這いになれません。ただ、膝が90度に曲がらない格好の四つ這いの姿勢から目の前にテーブルがあれば片手、あるいは両手をテーブルにつき片膝立ちから立ち上がるか両膝立ちからそのまま両ひざ伸展し、立ち上がる人もいます。その人ならではの立ち方があり、床から立ち上がりができないような方でも、意外な方法で立ち上がることがありので自宅で行っていると問診でわかれば実際の動作をお願いしてもいいと思います。

 また、両変形性膝関節症の方は別な方法で立ち上がることがあります。横座りになって(片足が伸展位になっていることが多い)そのままの膝の角度で床に両手を付けるか低いテーブルに手をついての高這いのような姿勢から、体幹を伸展して立位の姿勢になります。動きの中で、各関節の最大角度とその角度での筋力発揮(トルク)が必要で、そのどれか1つでも機能が損なわれると床からの立ち上がりができなくなることがあります。

 もう少し細かく解説します。動作ができなくなり再獲得を目指すときは自分が目指す基本動作の各関節の最大角度を把握し関節角度の可動域確保を行います。関節が目標まで到達できない場合は原因を探索し、治療計画を立てます。原因の探索のためには最終域感から原因となる組織を特定し、その組織の特性に合わせた治療方針にします。筋性の原因の場合はストレッチで十分効果が期待できます。関節包や靭帯が原因の場合は、関節モビリゼーションやAKAによる手法で効果が期待できます。複合している問題の場合は早く効果が出そうな組織からアプローチするほうが良いと思います。筋力に由来するアプローチの方法は、その動作で必要な開始角度から終了角度までの参加する筋の収縮様式を分析します。等張性収縮なのか遠心性収縮なのか、目的の関節だけでなく体幹部の動作への参加の割合と固定方法はどのようになっているか、など参加する筋でも役割や収縮様式が全く異なる部分を正確に把握します。右肘付き起き上がりを例にとると、肘のつく位置と手の固定のあるなし(手すりに摑まる)を考えます。今回は手の固定なしで、肘は外転60度、回内回外0度で床に固定するとします。そこから肘に体重をかけながら体幹部、頸部の右回旋と屈曲を伴い、肩関節0°からー10℃の範囲(体幹部に対して伸展位になることが多くみられる)で状態が起き上がります。起き上がりはじめは上腕三頭筋、棘下筋、大円筋、小円筋、広背筋、菱形筋が強く働き、肩関節に対して伸展、内転方向に等張性収縮により固定力と駆動力を発揮します。また、体幹部は腹直筋と右内腹斜筋と左外腹斜筋により右回旋と体幹屈曲を

 姿勢保持について詳しく見てみましょう。姿勢保持は臥位、座位、四つ這い、立位と大きく4つに分類されます。

臥位 lying (姿勢保持)

背臥位 supine position

 安楽な肢位としての代表格です。痛みの位置や腹部膨満、心不全による胸部の苦痛はこの肢位で問題が表れることがあるので、状態に合わせて違う姿勢をとることもあります。重心の位置は腰椎の4~5付近とされていますが、指示面が広いため安定しています。

背上げ背臥位 crook lying, head side up

 ベッドで臥位の場合、食事などのために頭部背部を持ち上げた状態。安定している肢位だが、仙骨部と坐骨部に圧と擦れ応力が加わるため長時間の姿勢保持は苦痛が伴うことがあります。

膝立背臥位 half lying

 背臥位でこの姿勢をとることがありますが、下肢が安定しないため長時間この姿勢を取ることが難しいです。この姿勢を長く取るためには膝に当て物(膝枕)を設置するといいでしょう。ただ、下肢の重量の1/6が仙骨部に圧として加わるため褥創がある場合は注意が必要です。

 ここからベッド端坐位になるときにこの肢位を経由する人がいます。

腹臥位 prone lying

 腹臥位はこの図ではなく胸部と頭部が床に接しています。頭部は左右のどちらかに回旋しています。上肢は挙上した状態や体側につけている場合もあります。若い人ほど腹臥位で睡眠することが可能で、年齢を重ねると各関節可動域の関係上、腹臥位となれる人が少なくなってきます。術後の呼吸管理で、無気肺予防のため腹臥位の姿勢をとることがあります。からだのラインに注意しながら複数人で行います。

 この図は肘立て腹臥位です。小児の場合はこの姿勢がとても重要になります。

側臥位 side lying

座位 sitting (姿勢保持)

正座 kneel sitting,sit straight

胡座(あぐら) crossed legs sitting

割座(お姉さん座り) Japanese traditional informal female sitting posture(英語もないので説明臭い)

横座り(トンビ座り) sitting sideways,side sitting

体育座り sitting on the floor grasping your knees(説明文),crook sitting

長坐位(長座り) long sitting position

椅子座り(端坐位) sitting

膝立ち kneeling (姿勢保持)

両膝立ち kneeling

片膝立ち half kneeling

四つ這い on all fours (姿勢保持)

四つ這い on all fours,crawling on all fours

立位 standing (姿勢保持)

立位 standing

爪先立ち立位 toe standing

脚広げ立位 wide base standing(stance)

片足前立位 walk standing

片足台載せ立位 half standing

さらに応用姿勢があり、またそれに上肢の位置が伴って日常生活では、さらに複雑な動作分析が必要となります。はぁ~(*´Д`) 列挙するだけで疲れた。

姿勢保持と構えについて

 先ほど応用姿勢に、さらに上肢の動作が加わって分析が複雑になると言いましたよね。

 基本動作は臥位から座位へ、座位から立位へ(寝るときはその逆方向)、この座位と立位で姿勢保持が必要になってきます。ここが安定していることが、日常生活やQOLに重要であります。座位にはいろいろな種類があります。ただ立位は足の位置でベースとなる基底面の大小がありますが、どれも立位としてとらえます。

 ただし、立位には様々な構えがあり、この構えに名称はついていません。よく「かがんだ姿勢」と呼ばれるように、下の引き出しを開け閉めする、下のものを拾うなど足を広げて膝を曲げて体幹を屈曲する姿勢であります。ここからさらに膝を屈曲し「しゃがむ」と座位に分類されるようです。私は臀部が床から離れて両足で支えていれば立位の感じがするのですが、皆様はどうでしょう。立位の構えには名前はありませんが、動作をそのまま表現するとどんな格好になるか容易に想像できます。例えば、干し物を干すとき、高いところのものをとるとき、片手でさらに高いところのものを触れようとしたとき、立ったまま離れた横のものをつかもうとしたとき、立ったまま後ろのものをつかもうとしたとき、トイレでおしりを拭こうとしたとき、など動作を表現するとその恰好が目に浮かぶと思います。これが構えです。空手の試合のはじめ、といえばやったことない人でもこの構えは真似できそうですよね。

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