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「職場をやめたい」と,相談受ける

コラム

よく相談を受けるナンバーワンの内容がこれです。入職したばかりの新人さんからベテランさんまで、非常に多くの人が思っているようです。自分の働く理想と現実が離れていることが原因のようです。

 「もうやめたいです」2人になれる部屋に呼ばれて切り出された。やめたい、ということはまだやめることを決定していないようだ。ひとまず誰かに相談したかったのか。とりあえず状況が全くつかめないので「どうしてやめたいと思っているのですか?」と問いかけてみる。その子が言うには、私だけ大変な仕事を振られている、協力してくれない、希望の休みを変更させられた、自分自身全くここでは成長できない、注意されるだけで指導はない、などマシンガンのように次からつぎへと言葉が出てくる。聞き漏らさないように言葉一つ一つをつかみ取る。一通り話したのか「どうおもいますか?」とその子。

 聞きながら分析していたがその子の思いは、1つは職場の体制の不満と周りのスタッフから協力が得られていないと感じていること。もう一つは自分自身の成長について。スタッフの多い職場でも、休みのやりくりは非常に骨が折れる。急な休みや周りの人を考えない長期の休み希望、学会参加などある特定の日に休みが集中するなど管理をしている方にはこの苦労に頷かれると思う。休みだけでなく、出勤している職員一人一人のノルマを決められていて、帰るまでにリハビリ実施と記録、その他カンファレンスの準備や実施と次からつぎへと業務が襲ってくる。自分自身その日の業務をこなすことでやっとなのだ。わたし自身も余裕などほとんどなく一日が終わることがほぼ毎日。スタッフと十分話する時間などほとんどないことに気づく。

 自分自身の成長の実感は知識と実践での結びつき、計画通りに実施ができるようになり、さらに結果が伴うことで臨床家としての自信がつく。いろいろな病気や障害、将来に対する不安や相談事にも対応できるようになって初めて一人前になった実感が湧くわけだが、地道に勉強し実践しても10年以上かかると私自身思っている。ただ、毎日が忙しく、相談できず、勉強を今日もやらなかった、そんな日が何日も続くと焦りが出てくる。勉強を続けられる人は本当に一つまみの人で、自分の人生が楽しいものになるには遊びや息抜きも重要である。さて、どのように返答しようか。

 私は「まず、自分自身がどのようになれば理想の状態に近づけると思いますか?」と質問してみた。その子は一瞬戸惑った表情をしたが、少し考えて「もっと仲間とかチームとか、ドラマで見るような、みなを信頼し、私が困っているときに『どけっ、俺がやる』みたいな素敵なことがあるといいなと思います」と言った。すべて気持ちがわかった気がした。この子は辛いこと自体に嫌気をさしているわけでなく、もっと仲間とのつながりが必要と思っているようだ。それで、私は早速その子を含めた3名の大腿骨骨折専門チームを作り、その子たちに任せてみることにした。1か月もたたないうちに術式、術後経過と管理、リハビリの進め方のパスを作成し、チームとして結果を共有しながらさらに発展しようとしていた。3人とも前より生き生きしているように感じた。やりがいや居場所が見つかれば生きがいにつながるのか、たまたまいい方向に向かったがこの通りになることはめったにないことだ。

 人の理想とのギャップはそれぞれ。もっと自分を高めたい方向が見えている、職場のスタッフが気に入らない、職場のシステムや雰囲気が自分と合わない、自分のやりたい仕事と違う部署に異動させられたなどいろいろな内容の話を聞いてきたが、やめる前に本人とじっくり話ができればいいな、と思うことがいまだにある。みなの理想に近い職場づくりは本当に難しく日々困っているのが現実だ。そういえば自分自身、やめたいと思うことが1か月に1回はあるな。

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