精神機能評価として、意識、うつ、認知機能について紹介します。
意識障害
意識障害の程度を表す評価尺度として使用されているものです。意識障害の程度の分類は深昏睡(deep coma)、昏睡(coma)、半昏睡(semicoma)、昏迷(stupor)、傾眠(somnolence)、せん妄(delirium)、錯乱(confusion)で表すことができますが、より客観性のある評価のため開発されました。
Glasgow Coma Scale (GCS)
3つの要素に分けてそれぞれの点数を評価しますが、合計得点が用いられることもあります。
Eye opening 開眼反応(E) | 点数 | Verbal response 言語反応(V) | 点数 | Motor response 運動反応(M) | 点数 |
---|---|---|---|---|---|
Spontaneous 自発的に開眼 | 4 | Oriented 見当識あり | 5 | Obeying 指示に従う | 6 |
To speech 呼びかけで開眼 | 3 | Confused やや混乱した会話 | 4 | Localizing 刺激を払いのける | 5 |
To pain 痛み刺激で開眼 | 2 | Inappropriate 意味の通じない言葉 | 3 | Withdrawal 逃避的屈曲 | 4 |
None 開眼なし | 1 | Incomprehensible 意味のない発声 | 2 | Flexing 異常屈曲反応 | 3 |
None なし | 1 | Extending 異常伸展反応 | 2 | ||
None なし | 1 |
Japan Coma Scale(JCS)
意識の覚醒の状態によって3群に分類し、それぞれに3段階に小分類した形です。医療系スタッフ全体で理解しやすいためよく使用されています。
Ⅰ. 刺激しないでも覚醒している状態(1桁)
1. 意識清明とは言えない
2. 見当識障害がある
3. 自分の名前、生年月日が言えない
Ⅱ. 刺激すると覚醒する状態。刺激をやめると眠り込む(2桁)
10. 合目的な運動(右手を握って、開いて)をするし言葉も出るが間違いが多い
20. 簡単な命令に応じる(握手)
30. 呼びかけを繰り返すとかろうじて開眼する
Ⅲ. 刺激をしても覚醒しない状態(3桁)
100. 痛み刺激に対して、払いのけるような動作をする
200. 痛み刺激で少し手足を動かしたり、顔をしかめる
300. 痛み刺激に反応しない
うつ
SDS
うつ状態の重症度を評価することを目的として開発されました。20項目あり、被検者には点数が見えないものを使用します。「ない、たまに」「ときどき」「かなりの間」「ほとんどいつも」の4つから選びます。これらの点数を合計します。
うつ病の診断のためのカットオフ値は設定されていません。
番号 | 質問 | 状態因子 | めったにない | 時々 | しばしば | いつも |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 気が沈んで憂鬱だ | 憂鬱、抑うつ、悲哀 | 1 | 2 | 3 | 4 |
2 | 朝方は一番気分が良い | 日内変動 | 4 | 3 | 2 | 1 |
3 | 泣いたり泣きたくなる | 啼泣 | 1 | 2 | 3 | 4 |
4 | 夜よく眠れない | 睡眠 | 1 | 2 | 3 | 4 |
5 | 食欲は普通だ | 食欲 | 4 | 3 | 2 | 1 |
6 | 性欲はある、異性に関心がある | 性欲 | 4 | 3 | 2 | 1 |
7 | 痩せてきたことに気がつく | 体重減少 | 1 | 2 | 3 | 4 |
8 | 便秘している | 便秘 | 1 | 2 | 3 | 4 |
9 | 普段よりも動悸がする | 心悸亢進 | 1 | 2 | 3 | 4 |
10 | なんとなく疲れる | 疲労 | 1 | 2 | 3 | 4 |
11 | 気持ちはいつもさっぱりしている | 混乱 | 4 | 3 | 2 | 1 |
12 | いつもと変わりなく仕事がやれる | 精神運動性減退 | 4 | 3 | 2 | 1 |
13 | 落ち着かずじっとしていられない | 精神運動性興奮 | 1 | 2 | 3 | 4 |
14 | 将来に希望がある | 希望のなさ | 4 | 3 | 2 | 1 |
15 | いつもよりイライラする | 焦燥 | 1 | 2 | 3 | 4 |
16 | たやすく決断できる | 不決断 | 4 | 3 | 2 | 1 |
17 | 役に立つ、働ける人間だと思う | 自己過小評価 | 4 | 3 | 2 | 1 |
18 | 生活はかなり充実している | 空虚 | 4 | 3 | 2 | 1 |
19 | 自分が死んだほうが他の者は楽に暮らせると思う | 自殺念慮 | 1 | 2 | 3 | 4 |
20 | 日頃していることに満足している | 不満足 | 4 | 3 | 2 | 1 |
BDI-Ⅱ
この検査は、「うつ」の程度を自己評価するものです。下に書いてある21組の文章を読
んで、この2,3日のあなたの気分にもっともよく当てはまる答えの番号に○をつけてく
ださい。選ぶ前に、必ずそれぞれの組のすべての文章を読むようにしてください。
第1問
0 悲しい感じはしない
1 悲しい感じがする
2 いつも悲しく感じて、追い払えない
3 耐えられないほど悲しくて、不安である
第2問
0 将来をとくに悲観するようなことはない
1 将来を悲観してしまう
2 将来に何の期待もないように感じる
3 将来は絶望的で、良くなることはないと感じる
第3問
0 自分が失敗者だとは思わない
1 私は他の人よりも失敗してきたと思う
2 これまで失敗の連続だったと思う
3 私は人間としてまったくの失敗者だと思う
第4問
0 これまでと同じように満足感を感じる
1 以前のようにものごとを楽しむことができない
2 本当に満足できるようなことはなくなった
3 何もかも不満足で、うんざりする
第5問
0 とくに罪悪感を感じるようなことはない
1 罪悪感を感じることが多い
2 ほとんどの時間、罪悪感に悩まされる
3 いつも罪悪感を抱いている
第6問
0 自分がなにかの罰を受けているとは思わない
1 自分は罰を受けるかもしれないと思う
2 自分は罰を受けるにちがいないと思う
3 自分は、今、罰を受けていると思う
第7問
0 自分に失望してはいない
1 自分に失望している
2 自分にうんざりする
3 自分を憎んでいる
第8問
0 自分が他の人より劣っているとは思わない
1 自分の弱さやあやまちに対し批判的である
2 自分の欠点をいつも責めている
3 何か悪いことが起こると,いつも自分のせいだと自らを責める
第9問
0 自殺を考えるようなことはない
1 死にたいと思うことはあるが、実行することはないだろう
2 自殺したいと思う
3 もし機会があったら自殺するだろう
第10問
0 いつもより泣きやすくなったとは思わない
1 以前とくらべ泣いてしまうことが多い
2 いつも泣いてばかりいる
3 以前は泣くことができたが,今はそうしたくてもできない
第11問
0 これまで以上にイライラするようなことはない
1 以前とくらべイライラすることが少し増えた
2 かなりの時間、イライラした気分である
3 たえずイライラしている
第12問
0 他の人に対する関心を失ってはいない
1 以前とくらべ他の人に関心を持たなくなった
2 他の人に対してほとんど関心がなくなった
3 他の人に対してまったく関心がわかない
第13問
0 これまでと同じようにものごとを判断できる
1 以前とくらべ判断を先送りするようになった
2 なにかにつけて決めることがとても難しい
3 まったく何も決めることができない
第14問
0 特に自分の魅力がおとろえたとは思わない
1 老けて見えるのでないか,魅力がないのではないかと心配である
2 もう自分の容姿は変わってしまい、魅力がなくなったように感じる
3 自分は醜いにちがいないと思う
第15問
0 だいたいこれまでと同じように働ける
1 何かやり始めるのにかなり努力がいる
2 何をやるのにも相当な努力がいる
3 何できなくなってしまった
第16問
0 いつもどおりよく眠れる
1 以前とくらべよく眠れない
2 いつもより1~2時間早く目が覚め,再び寝つくのが難しい
3 いつもより数時間も早く目が覚め,再び寝つくことができない
第17問
0 いつもより疲れた感じはない
1 これまでより疲れやすくなった
2 何をやってもすぐ疲れる
3 疲れてしまって何もできない
第18問
0 いつもどおり食欲はある
1 以前とくらべ食欲がない
2 食欲がかなり落ちている
3 まったく食欲がない
第19問
0 最近、とくにやせたということはない
1 最近2kg以上やせた
2 最近4kg以上やせた
3 最近6kg以上やせた
第20問
0 体の調子が特に気になることはない
1 痛み、胃の不快感、便秘などの体の調子が気になる
2 体の調子が気になって、他のことを考えるのが難しい
3 体の調子ばかり心配し,他のことはまったく考えられない
第21問
0 性に対する関心はこれまでと変わりない
1 以前とくらべ性欲が低下した
2 性欲がほとんどない
3 性欲がまったくない
合計得点が、1~10点→ 正常範囲の気分の揺れ。11~16点→ 軽度の気分の動揺。17~20点→ うつとの境界域。21~30点→ 中度のうつ状態。31~40点→ 重度のうつ状態。41点以上→ 極度のうつ状態。
認知機能スクリーニング
MMSE Mini Mental Scale Examination
1. 時間の見当識 (5点:各1点)
「今日は何日ですか」
「今年は何年ですか」
「今の季節は何ですか」
「今日は何曜日ですか」
「今月は何月ですか」
最初の質問で被検者の回答に複数の項目が含まれてもいいです。その場合該当する項目の質問は省きます。
2. 場所の見当識 (5点:各1点)
「ここは都道府県でいうと何ですか」
「ここは何市(*町・村・区など)ですか」
「ここはどこですか」(*回答が地名の場合、この施設の名前は何ですか、と質問をかえます。正答は建物名のみです)
「ここは何階ですか」
「ここは何地方ですか」
3. 即時想起 (3点:各1点)
「今から私がいう言葉を覚えてくり返し言ってください。
『さくら、ねこ、電車』はい、どうぞ」
*検者は3つの言葉を1秒に1つずつ言います。その後、被験者にくり返していただき、この時点でいくつ言えたかで得点します。
*正答1つにつき1点です。合計は3点満点です。
「今の言葉は、後で聞くので覚えておいてください」
*この3つの言葉は、質問5で再び復唱させるので3つ全部答えられなかった被験者について
は、全部答えられるようになるまでくり返します(ただし6回まで)。
4. 計算 (5点)
「100から7を引いて、出た答えから7を引きます。5回それをくり返してください」
*5回くり返し7を引いた数字を答えます。正答1つにつき1点です。合計は5点満点です。
正答例】93 86 79 72 65
*答えが止まった場合は「それから」と促します。
5. 遅延再生 (3点:各1点)
「さっき私が言った3つの言葉は何でしたか」
*質問3で提示した言葉を再度復唱していただきます。
6. 物品呼称 (2点:各1点)
時計(又は鍵)を見せながら「これは何ですか?」
鉛筆を見せながら「これは何ですか?」
*正答1つにつき1点です。合計は2点満点です。
7. 分の復唱 (1点)
「今から私がいう文を覚えてくり返し言ってください。
『みんなで力を合わせて綱を引きます』」
*口頭でゆっくり、はっきりと言って、『』の部分をくり返していただきます。1回で正確に答えられた場合に1点となります。
8. 口頭指示 (3点)
*紙を机に置いた状態で教示を始めます。
「今から私がいう通りにしてください。
右手にこの紙を持ってください。それを半分に折りたたんでください。
そして私にください」
*段階毎に正しく作業した場合に1点ずつ与えます。合計は3点満点です。
9. 書字指示 (1点)
「この文を読んで、この通りにしてください」
*被験者は音読でも黙読でもかまいません。実際に目を閉じれば1点を与えます。
10. 自発書字(1点)
「この部分に何か文章を書いてください。どんな文章でもかまいません」
*検者が例文を与えてはいけません。意味のある文章ならば正答とします。(*名詞のみは誤答、状態などを示す四字熟語は正答)
11. 図形模写(1点)
「この凹形を正確にそのまま書き写してください」
*模写は角が10個あり、2つの五角形が交差していることが正答の条件です。手指のふるえなどはかまいません。
FAB
FABは前頭葉機能を判断するうえで簡便な検査です。特別な機器を必要としないので、よく使用されています。検査の方法の説明が難しく理解したかの確認が必要です。
検査の詳細は画像をクリック!!
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