最近注目されている「MoCA-J (Japanese version of The MONTREAL COGNITIVE ASSESSMENT)」について、今回はその特徴と効果的な活用法について探ってみたいと思います。認知機能の評価において、MoCA-Jはどのような点でMMSEと異なるのでしょうか。また、MoCA-Jの評価方法や検査用紙の使い方、購入情報についても説明します。さらに、MoCA-Jの点数と認知機能評価の関連性についても考察していきます。効果的な活用法に焦点を当てると、MoCA-Jを用いた認知症の重症度分類や教示方法、モバイルアプリを活用した検査の実施方法などが重要になります。さらに、MoCA-Jの算定方法や活用のコツについても紹介していきます。MoCA-Jを活用することで、軽度認知障害の早期発見や適切なケアにつなげる手助けとなるでしょう。
MoCA-J(Montreal Cognitive Assessment-Japan)の特徴
MoCA-Jは認知機能をスクリーニングするための有用なツールです。MoCA-Jは診断と病院での利用に適しており、認知症やMCIなどの早期発見に役立ちます。
MoCA-JとMMSEの違いは?
MoCA-JとMMSEは両方とも認知機能を評価するツールで、広範囲な認知機能を評価する一方、MMSEは特に記憶や言語に焦点を当てています。また、MoCA-JはMMSEよりも難易度が高く、認知障害の早期発見に効果があります。
MoCA-Jの評価方法とは?
MoCA-Jの評価は、患者に質問をし、特定の課題を遂行させて、行われます。視空間、遂行機能、命名、記憶、注意力、復唱、語想起、抽象概念、遅延再生、見当識からなり、MCI(軽度認知障害:Mild Cognitive Impairment)をスクリーニングする検査として注目されています。検査用紙に記載された項目を評価し、スコアを算定します。
MoCA-Jの入手方法について
MoCA-Jの検査用紙と実施マニュアルは公式WEBサイト
https://www.mocatest.org/ にて登録後に入手できます。
正確な評価を得るためには、訓練を受けた専門家が適切に評価する必要があります。
MoCA-Jの採点方法を解説
MoCA-Jの検査結果は各項目ごとにポイントが割り振られており、患者の回答に基づいてスコアリングされます。正しい回答にはポイントが与えられ、最終的なスコアは全体のポイント数によって算定されます。
詳細は下記の「MoCA-Jの採点方法のチェック」をご覧ください。
MoCA-Jの検査用紙の使い方
MoCA-Jの検査用紙は様々な質問や課題が記載されており、患者に提示されます。検査用紙の指示に従い、患者が各課題に対して適切に回答することで、総合的な認知機能を評価することが可能です。
MoCA-J(Montreal Cognitive Assessment-Japan)の効果的な活用法
MoCA-Jの効果的な活用法は、認知症の重症度分類や認知機能評価などに適したスクリーニングツールとして利用することです。また、MoCA-Jの点数と認知機能評価の関連性を確認し、適切な支援や治療方針の立案に役立てることが重要です。
MoCA-Jのカットオフ値
MoCA-Jのスコアは患者の認知機能の状態を示す重要な指標となります。高いスコアは認知機能の低下が少ないことを示し、低いスコアは認知機能の低下が進んでいる可能性があります。MoCA-Jは25点以下がMCIとされ、感度80~100%、特異度50~87%です。最近では糖尿病患者の認知機能障害を見出すために使用している医療機関が多くなっています。
MoCA-Jの教示方法について
MoCA-Jの検査は患者に適切な教示が必要です。質問や課題を患者が理解しやすいように説明し、適切な環境で検査を行うことが重要です。また、患者の意向や状態に配慮しながら検査を進めることが大切です。
モバイルアプリでのMoCA-J検査の実施方法
近年、モバイルアプリを活用してMoCA-Jの検査が行われることが増えています。患者自身がアプリを通じて検査を受けることで、より手軽に認知機能を評価することが可能です。検査結果は専門家に送信され、適切なアドバイスや治療が提供されます。
参考) 認知機能テストサービス
https://www.braincure.jp/cognitivetest/moca/AboutService.aspx
MoCA-Jの点数と認知機能評価の関連性
MoCA-Jの点数は患者の認知機能と密接に関連しています。高い点数は良好な認知機能を示し、低い点数は認知機能の低下を示す可能性があります。適切な点数とその解釈を行うことで、患者の認知状態を正確に把握し、適切な支援を行うことができます。
MoCA-Jの算定方法をチェック
MoCA-Jの算定方法は検査用紙に記載されたポイントを正しく集計することで行われます。各項目ごとに与えられたポイントを合算し、最終的なスコアを算出します。検査結果の正確性を確保するためには、慎重な算定が必要です。
1. Trail Making
指示:数字から平仮名へ順番通りに線で結んでください。ここから始めて(「1」を指す)、「1」から「あ」へ、そして「2」へ線を描いてここで終わります(「お」を指す)
採点:線が交差せず、「1」→「あ」→「2」→「い」→「3」→「う」→「4」→「え」→「5」→「お」の順になっていれば1点です。自己修正以外のエラーが見られれば0点となります。
2. 視空間認知機能(立方体模写)
指示:この絵の通りに(立方体を指して)できるだけ正確に下の空欄に書いてください。
採点:立方体を正確に描けたら1点となります。①3次元として描かれています。②すべての線画描かれています。③余分に線を追加していません。④線の平衡が保たれ長さが均等です(四角柱になってもOKとします)。この4つの条件全てに当てはまれば1点です。
3. 視空間認知機能(時計描画)
指示:時計を描いて下さい。文字盤にすべての数字を書いてください。11時10分になるように針を描いてください。
採点:輪郭(1点) 時計の文字盤が円形となっています(四角い時計もありますが。。。)。円はわずかな歪みはOK。円の最後が微妙に閉じてなくてもOK。
数字(1点) 数字が正しい順番で正しい位置となっている場合に1点とします。ローマ数字もOK。
(時計の)針(1点):①長針と短針が11時10分になっているか、②長針の方が短針より長くなっているか、③長針と短針が文字盤の中心から出ているか?の3つが満たされた場合1点となります。
4. 命名
指示:この動物の名前を教えてください。 左から順に指をさして答えていただきます。
採点:動物の名前が正しく言えればそれぞれ1点となります。(1)ライオン、(2)サイ、(3)ラクダ
5. 記憶
指示:今から単語を読み上げますので覚えてください。私が読み終えたら、覚えている単語を教えてください。読み上げた順番通りでなくてもいいです。
【第一試行】 1秒につき1つのペースで単語を読み上げます。読み上げた後に被検者に覚えた単語を再生していただきます。被検者がすべての単語を再生することができるか、またはそれ以上再生できなかったら次の指示に移ります。言えた単語は第一試行の欄にチェックします。
次の指示:同じ単語を読み上げます。もう一度覚えている単語をすべて教えてください。
【第二試行】第一試行と同様に読み上げます。被検者が読み上げた後に単語の再生をしていただきます。すべて言えるか、または再生ができなくなったら終了し、第二試行の欄にチェックします。
次の指示:検査の終わりころに、今覚えていただいた単語をもう一度聞きます。
採点:ここでの第一試行と第二試行では採点はありません。
6. 注意
順唱の指示:これから数字を読み上げますので、読み終えた後に同じように繰り返して言ってください。
5つの数字を1秒につき1つのペースで読み上げます。
逆唱の指示:次に数字を読み上げますが、読み終えた後に読んだ数字を逆から言ってください。
3つの数字を1秒につき1つのペースで読み上げます。
順唱と逆唱の採点:正しく繰り返すことができたら、それぞれに1点となります。
ビジランスの指示:平仮名を読み上げますので、「あ」と言うたびに手を叩いてください(片麻痺等で手が叩けない場合は片手で机を叩いてもかまいません)。「あ」以外は手を叩かないでください。
検査用紙に書かれた平仮名を1秒につき1つのペースで読み上げます。
ビジランスの採点:間違いが1回以下で1点となります(間違い:「あ」の時に手を叩かないか、「あ」以外の時に手を叩いた)
計算の指示:100から7を引いてください。私がやめというまで出た答えからさらに7を引いてください。
計算の採点:正答がないときは0点。正答が1の時は1点、正答が2~3の時は2点、正答が4~5の時は3点となります。注意点は、100から7を引いてその答えから7を引くことを次々行いますが、それぞれにおいて判定をします。例えば100-7は93(正解)、93-7は85(不正解)、85-7は78(正解)、78-7は72(不正解)、72-7=76(不正解)とすると正解2となり2点となります。
7. 復唱
指示:これから文章を読みます。私が読んだ後に正確に繰り返してください。
(間を取って) 「太郎が今日手伝うことしか知りません」
(被検者が返答し終えた後に)それではもう一つ文章を読みます。先ほどと同じように正確に繰り返してください。
(間を取って) 「犬が部屋にいるときは、猫はいつもイスの下に隠れていました」
採点:文章を正しく復唱できれば、それぞれに1点ずつ付与します。(省略したり違う単語に変換されているときは0点となります)
8. 語想起
指示:これから私が言うひらがなで始まる”言葉”をできるだけたくさん言ってください。”言葉”であればなんでもかまいません。時間は1分です。(間を取って)それでは、”か”ではじまる言葉をできるだけたくさん言ってください。(60秒経ったら)それでは終了してください。
採点:”言葉”を11個以上言えれば1点となります。被検者の言った内容は余白に記録します。”言葉”となっているので、単語だけでなく動作も採点対象となります。カエル(生き物)と帰る(動作)どちらとも正解ですが、両方答えた場合はそれぞれ1個づつとします。
9. 抽象的思考
指示:例題より始めてください。「バナナとミカンはどのように似ていますか?」。被検者が”果物”と答えた場合は検査の項目に移ります、もし”果物”以外に答えた場合は「そうですね。また、両方とも果物でもあります」と話をします。その後検査項目に移行します。
それでは”電車”と”自転車”はどのように似ていますか?(回答後に次の問いに移ります)。それでは”ものさし”と”時計”はどのように似ていますか?(質問にはヒントなど与えないようにします)
採点:それぞれ次のような反応が得られれば、それぞれに1点付与します。
「電車と自転車」は交通手段、旅行の手段、乗り物
「ものさしと時計」は測るもの、計測に使用するもの、計測器具
「車輪がある」、「数字がある」は不適切とみなし、0点となります。
10. 遅延再生
指示:先ほどいくつかの単語を覚えていただきましたが、覚えている単語をできるだけ教えてください。(ここで正確に答えられた単語は”自由再生”の欄にチェックを入れます。)
採点:手がかりなく再生できた単語それぞれに1点となります。
遅延自由再生ができなかった単語については意味的なてがかり(カテゴリ)を与えます。てがかり(カテゴリ)によって再生できた場合は手がかりの欄にチェックを入れます。
顔:手がかり(カテゴリ)→「体の一部です」
絹:手がかり(カテゴリ)→「生地です」
神社:手がかり(カテゴリ)→「建物です」
百合:手がかり(カテゴリ)→「花です」
赤:手がかり(カテゴリ)→「色です」
手掛かりを与えても再生できない時は多肢選択試行として次の指示をします。「次の単語のうちどれだと思いますか?」。他選択によって再生できた場合は手がかり(多肢選択)の欄にチェックを入れます。
顔:手がかり(多肢選択)→「口、顔、手」
絹:手がかり(多肢選択)→「絹、麻、木綿」
神社:手がかり(多肢選択)→「神社、学校、病院」
百合:手がかり(多肢選択)→「バラ、百合、椿」
赤:手がかり(多肢選択)→「赤、青、緑」
手がかりを与えた採点:手がかりを与えた単語については0点です。手がかかり再生による得点は記憶障害のタイプについての追加的情報としてのみ使用します。記憶障害が検索の失敗に起因している場合は手がかりによって再生は改善されます。記憶障害が符号化の失敗に起因している場合は手がかりによる再生の改善は見られない。
11.見当識
指示:「今日の日付を教えてください」。被検者の回答が完全でない場合は次の指示を与えます。「今日は何年、何月、何日、何曜日ですか?」。回答後に次の指示をします。「それでは、ここは何市(区・町)ですか?」。回答後に次の指示をします。「それでは、この場所(建物)の名前は何ですか?」
採点:正しく回答できた項目にそれぞれ1点となります。日付や名前については正確な回答となります。
合計得点
検査用紙の右側に記入した得点をすべて合計します。教育年数が12年以下の場合には1点を追加します。ただし最高得点は30点とします。合計得点が26点以上であれば健常範囲と考えられます。
1)Nasreddine ZS,Phillips NA,Bédirian V,Charbonneau S,et al.The Montreal Cognitive assessment(MoCA):A Brief Screening Tool For Mild Cognitive Impairment.J Am Geriatr Soc 53:695-699,2005.

評価用紙および検査方法については、登録後入手できますので、まずはホームページでご確認ください。
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