呼吸困難は多くの人々が抱える問題であり、「MRC息切れスケール」というツールが息切れを評価するために広く使用されています。MRC息切れスケール(Medical Research Council Dyspnea Scale)は診療報酬上にも「2以上の呼吸困難を有する状態」などの記載がある項目があるため、算定するためにこのスケールを使用しています。診療点数以外でも臨床の現場で、医療スタッフは患者の症状の重さを定量的に把握し、適切な治療方針を立てることができます。本記事では、MRC息切れスケールとその修正版について深堀りしていきます。その基本概念から、具体的なグレードの解説、修正MRC息切れスケールとの違い、そしてこれらのスケールが臨床現場でどのように活用されているかについて詳細に説明します。この情報が、医療従事者だけでなく、日常の不快な息切れに悩む多くの方々に役立つことを願っています。
MRC息切れスケールとは何ですか?
MRC息切れスケールは呼吸困難の評価と管理に活用される臨床的ツールです。
基本概念と利用の背景
MRC息切れスケールは、患者が日常生活において感じる息切れの程度を段階的に評価することで、その障害の重さや治療効果のモニタリングを行う目的で開発されました。このスケールは6段階に分かれており、患者自身が自らの症状を認識しやすくなるよう設計されています。
MRC息切れスケールの各グレードの解説
修正版MRC息切れスケールでは、息切れ感を0から5のグレードで評価します。0は息切れが全くない状態を指し、5では非常に重度の息切れで、自宅の中の活動でも困難を感じるレベルを意味します。この分類を通して、患者の日常生活における制限を具体的に評価することが可能となります。
修正MRC息切れスケールとの違い
従来のMRCスケールが6段階評価であるのに対し、修正版は0-4の5段階で評価します。
実際の臨床での活用法
臨床でのMRC息切れスケールの活用法には、評価結果を基にした治療方針の決定や進行管理があります。特に呼吸リハビリテーションの内容や強度の調整に役立てられ、患者一人ひとりの症状や体力に合わせた個別の治療計画を立てる際の重要な手がかりとなります。
このMRC息切れスケールは調べると複数出てきて、どれを採用しているか十分検討が必要となります。また、MRC息切れスケールの現状をまとめた投稿文がありますのでご参照ください。
1)宮本顕二.MRC息切れスケールをめぐる混乱ーいったいどのMRC息切れスケールを使えばよいか?ー.日呼吸会誌.46(8).593-600.2008
MRC息切れスケールの評価方法
MRC息切れスケールの評価方法は、主に患者に自己報告してもらう形式を取ります。医療従事者は患者にスケールを説明し、具体的な日常生活の例を挙げながら、どのグレードが最も自分の状態に合致するかを選んでもらいます。このプロセスにより、患者の主観的な症状の重さが定量的に記録されます。
修正MRCスケール覚え方と応用
修正MRCスケールは、より詳細に呼吸困難を評価するためのスケールです。
修正MRCスケールの基礎知識
修正MRCスケールは、従来のMRCスケールのGrade0とGrade1があいまいだったため、この部分の修正が行われました。現在は修正MRCで評価することが多くなっていて、進行性の肺疾患を抱える患者に対するモニタリング目的でも使用されています。
効果的な覚え方と指導のコツ
修正MRCスケールを効果的に覚えるために、具体的な日常シナリオを用いる方法が有効です。例えば、「4段階中3であれば、少し話すことができるが、歩行時には止まって話す必要がある」といった具体例を用いることで、スケールの各段階がどのような状態を指し示しているのかが理解しやすくなります。
関連する疾患とスケールの使い方
修正MRCスケールは、特に慢性的な呼吸器疾患−肺炎、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺高血圧症など−の患者の評価に有効です。これらの疾患において呼吸困難は一般的な症状であり、治療効果のモニタリングや日常生活のリスク評価に役立ちます。
看護とリハビリテーションでの応用例
看護やリハビリテーションの現場では、修正MRCスケールを用いて患者の呼吸困難の程度を定期的に評価し、その情報を基に運動プログラムや日常生活の送り方についての指導を行います。
最下部にPDFファイルダウンロードあります。ご活用ください。
MRC(Mecical Research Council Dyspnea Scale)
MRCは0~5のGradeで分類され6段階評価です。一番適合したグレードの番号を示します。
MRC 息切れスケール | |
Grade 0 | 息切れを感じない |
Grade 1 | 強い労作で息切れを感じる |
Grade 2 | 平地を急ぎ足、緩やかな坂を上るとき息切れを感じる |
Grade 3 | 平地で同年齢の人より歩くのが遅い、自分のペースで歩いていても息継ぎのために休む |
Grade 4 | 約100ヤード(91m)歩行した後、息継ぎのために休む |
Grade 5 | 息切れが強く外出できない、更衣でも息切れがする |
mMRC(Modified Mecical Research Council Dyspnea Scale)
mMRCはModified Mecical Research Council Dyspnea Scaleの略です。MRCの修正版です。0~4のGradeで5段階評価になっています。主な修正箇所は0と1Gradeです。また、修正版は表現の違うものが多く存在するようで、mMRCの場合は内容を十分確認することが求められます。
mMRC | |
Grade | 息切れの症状 |
0 | 激しい運動をした時だけ息切れがある |
1 | 平坦な道を早足で歩く、あるいは緩やかな上り坂を歩くときに息切れがある |
2 | 息切れがあるので、同年代の人よりも平坦な道を歩くのが遅い、あるいは平坦な道を自分のペースで歩いているとき、息切れのために立ち止まることがある |
3 | 平坦な道を約90m、あるいは数分歩くと息切れのために立ち止まる |
4 | 息切れがひどく家から出られない、あるいは衣服の着替えをするときにも息切れがある |
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