関節可動域の改善について考えると、最終域感という要素が重要です。最終域感はエンドフィールともいわれます。最終域感は、関節の可動域における最終域で感じる特有の感覚を指します。このブログ記事では、最終域感の種類や特徴、関節可動域制限との関係、最終域感を理解するための方法、そして最終域感を活かしたリハビリテーションやトレーニング提案について解説します。関節の柔軟性や治療に取り組む上で、最終域感を理解し活用することがいかに重要か、具体的な視点から探っていきましょう。
関節可動域と最終域感の関係性
骨盤、股関節、膝関節などの関節を中心にして、関節可動域と最終域感の重要性について考えてみましょう。
最終域感の種類とそれぞれの特徴
最終域感は関節可動域を感じる重要な要素です。抵抗感や方向感など、様々な種類があります。例えば、股関節の屈曲や伸展の際の感覚がこれにあたります。
関節可動域制限の原因と最終域感の関連性
関節可動域が制限される原因は骨性、靭帯関節包性、筋性、軟部組織性に分けられます。
最終域感で骨性の場合は、骨と骨が接触し動けなくなるためある位置でいきなり動かなくなります。カツッやゴリッとした感じを受けます。
靭帯関節包性の場合は、靭帯の一番伸ばされる方向に動かすと抵抗が現れます。強い抵抗ですが骨性のようなカツッとくる抵抗ではありません。
筋性の場合は、筋の起始と停止から一番伸ばされる方向に伸張すると最終域で筋腹の硬さを確認できるとともに靭帯関節包性に近い抵抗が感じられます。
軟部組織性はこの中では柔らかい抵抗として感じられます。
この最終域感から、原因が特定できれば、それに合わせた対応ができます。
最終域感を理解するためのアプローチ
最終域感を理解するためには、解剖学と運動学の知識が重要です。例えば軟部組織性を考えるとすると、皮膚、脂肪、神経、血管があり、術後の癒着の場合は筋を含めた状況を把握することになり、知識が必要となります。
最終域感の区別は運動学より、関節包の役割、筋の起始・停止・作用の理解があれば原因を絞り込むことができます。
外傷等で靭帯を損傷している場合はその靭帯の役割が分かればそれと反対の関節の動きを行うことで痛みやルーズニングが確認できます。その際はそれ以上動かさず、固定と圧迫を行い医師の診察を受けます。
最終域感より原因別のリハビリテーションの方法
リハビリテーションにおいて原因が判明した場合のリハビリテーションの方法があります。
骨性の場合は医師と可動できる範囲の相談をします。画像診断等、内部の状況から可動範囲が決定した場合、その範囲内で行うことができる日常生活指導を行います。関節固定術やリウマチ等の骨性の変形の場合などが考えられます。
関節包靭帯性の場合は、靭帯や関節包の強度について医師と相談をします。強度がある場合は関節モビリゼーションにより目的とした靭帯関節包の伸長を試みます。患者さんでも行うことができる場合は自主練習を指導します。
筋性の場合は、目的とした筋に対して持続的伸長を試みます。短縮してまだ期間が短い場合は早く効果が表れます。自主練習の効果が高い場合があるので患者さんに対して自主練習の指導を行います。短縮して期間が長い場合は、伸長しても効果が表れにくいことがあります。伸長されて角度が改善した場合は改善した範囲の筋力強化を行います。
軟部組織性の場合、目的とした組織の状態について医師と相談をします。状態によっては出血や強い痛みが出る場合があるので、対応する場合は患者さんにも十分な説明が必要です。conective tissue massageや組織のelongation法があります。
最終域感を体験してみましょう
関節の動き、靭帯の役割、筋の起始・停止・作用が分かれば最終域まで動かして最終域感をつかむトレーニングを行うことが有効です。病態や年齢、性別により、原因判定は難しいと思いますが、トレーニングを積むことが重要です。
痛みの治療ができるスタッフがいる場合は自分の判定の方法について話してみてください。いろいろな視点から痛みの原因を判定する方法を知っていますので、自分のやり方と比較してみてください。
はじめはうまくいかなくても大丈夫。実践を続けましょう
関節可動域の最終域で抵抗の感覚で、自分なりに原因を特定したとします。「間違っていたらどうしよう」そう思うことは自然のことです。まずは自分の仮説に対して、期間を決めて治療内容を設定します。期間まで実施し効果判定を行います。効果について再評価を行い原因が間違っていないか、治療内容が間違っていないかの判定を行います。それを繰り返すことで実力がついてくると思います。
最終域感の要因についてのヒント
最終域感の要因について表にまとめてみました。これを参考にしながら治療方針につなげてみてください。
関節の運動方向 | 最終域感 | 最終域の要因 |
---|---|---|
肩関節 屈曲 | 靭帯・関節包性、筋性 | 肩甲上腕関節:烏口上腕靭帯の後部束、関節包の後部、小円筋、大円筋、棘下筋の緊張 肩関節複合体:広背筋と大胸筋胸肋部線維の緊張 |
肩関節 伸展 | 靭帯・関節包性、筋性 | 肩甲上腕関節:烏口上腕靭帯の前部束、 関節包前部の緊張 肩関節複合体:最終域感は 大胸筋鎖骨線維、前鋸筋の緊張 |
肩関節 外転 | 靭帯・関節包性、筋性 | 肩甲上腕関節:関節上腕靭帯の中部束と下部束、 関節包の下部、広背筋、大胸筋の緊張 関節複合体:大・小菱形筋、僧帽筋の中部・下部線維の緊張 |
肩関節 内転 | 軟部組織性 | 上腕と胸郭との接触。また上腕二頭筋長頭、棘上筋の緊張の場合がある。 |
肩関節 外旋 | 靭帯・関節包性、筋性 | 肩甲上腕関節:関節上腕靭帯の3つの束、烏口上腕靭帯、関節包の前部、肩甲下筋、大胸筋、広背筋、大円筋の緊張 肩関節複合体:前鋸筋と小円筋の緊張 |
肩関節 内旋 | 靭帯・関節包性、筋性 | 関節上腕靭帯の3つの束、烏口上腕靭帯、関節包の前部、肩甲下筋、大胸筋、広背筋、大円筋の緊張 |
肘関節 屈曲 | 軟部組織性 | 前腕の前面の筋腹と 上腕の筋腹間の接触。筋腹が少ないとき、尺骨鉤状突起と上腕骨鈎突窩の間の接触、および橈骨頭と上腕骨橈骨窩との間の接触で骨性の場合がある。また関節包後部と上腕三頭筋の緊張の場合がある。 |
肘関節 伸展 | 骨性 | 尺骨の肘頭と上腕骨の肘頭窩との接触。また関節包の前部、側副靭帯、上腕二頭筋、上腕筋の緊張の場合がある |
前腕 回内 | 骨性 | 橈骨と尺骨の接触。また下橈尺関節の背側橈尺靭帯、骨間膜、 回外筋、 上腕二頭筋の緊張の場合がある |
前腕 回外 | 靭帯・関節包性、筋性 | 下橈尺関節の手側橈尺靭帯、斜策、 骨間膜、円回内筋、方形回内筋の緊張 |
手関節 背屈 | 靭帯・関節包性、筋性 | 掌側橈骨手根靭帯と掌側の関節包の緊張。また橈骨と手根骨の接触により骨性の場合がある |
手関節 掌屈 | 靭帯・関節包性、筋性 | 背側橈骨手根靭帯、背側の関節包の緊張 |
手関節 撓屈 | 骨性 | 橈骨茎状突起と舟状骨の接触。また尺側側副靭帯、尺骨手根靭帯及び関節包の緊張の場合がある |
手関節 尺屈 | 靭帯・関節包性、筋性 | 橈側側副靭帯と関節包橈側部の緊張 |
股関節 屈曲 | 軟部組織性 | 大腿前面の筋と下腹部との間の接触 |
股関節 伸展 | 靭帯・関節包性、筋性 | 関節包前部、腸骨大腿靭帯、わずかだが坐骨大腿靭帯 恥骨大腿靭帯の緊張。また腸腰筋、縫工筋、大腿筋膜張筋、薄筋、長内転筋など種々の股関節屈筋の緊張の場合がある |
股関節 外転 | 靭帯・関節包性、筋性 | 関節包下部(内側)、恥骨大腿靭帯 坐骨大腿靭帯および腸骨大腿靭帯の下部束の緊張。大内転筋、長内転筋、大内転筋、恥骨筋、薄筋の緊張の場合がある |
股関節 内転 | 靭帯・関節包性、筋性 | 関節包上部(外側)と 腸骨大腿靭帯の上部束の緊張。また中殿筋、小殿筋および大腿筋膜張筋の緊張の場合がある。 |
股関節 外旋 | 靭帯・関節包性、筋性 | 関節包前部 腸骨大腿靭帯 恥骨大腿靭帯の緊張。また中殿筋前部、小殿筋、大内転筋、長内転筋、恥骨筋の緊張の場合がある。 |
股関節 内旋 | 靭帯・関節包性、筋性 | 関節包後部と坐骨大腿靭帯の緊張。また内閉鎖筋、外閉鎖筋、上双子筋、下双子筋、大腿方形筋、中殿筋後部線維、大殿筋の緊張の場合がある。 |
膝関節 屈曲 | 軟部組織性 | 下腿と大腿の後面の筋腹間 あるいは踵部と臀部の接触。また内側広筋、外側広筋および中間広筋の緊張の場合がある |
膝関節 伸展 | 靭帯・関節包性、筋性 | 関節包後部、斜膝窩靭帯、弓膝窩靭帯、側副靭帯及び前・後十字靭帯の緊張 |
足関節 背屈 | 靭帯・関節包性、筋性 | 最終域感は関節包後部、アキレス腱 三角靭帯後部、後距腓靭帯の緊張 |
足関節 底屈 | 靭帯・関節包性、筋性 | 関節包前部 三角靭帯前部、前距腓靭帯 前脛骨筋、長母指伸筋、長趾伸筋の緊張。また距骨後端結節と 脛骨後縁との接触のために骨性場合のがある |
足関節 外転 | 骨性 | 踵骨と足根洞底部が接触のため。また関節包、三角靭帯、内側距踵靭帯、底側踵舟靭帯、踵立方靭帯 背側踵舟靭帯、二分靭帯内側部束、横中足靭帯および立方舟状、楔舟、楔間、楔立方、足根中足、中足間の各関節の背側、底側および骨間の種々の靭帯 さらに後脛骨筋の緊張の場合がある |
足関節 内転 | 靭帯・関節包性、筋性 | 関節包、前後距腓靭帯、踵腓靭帯、前・後・外側骨間距踵靭帯 、背側踵靭帯、背側踵立方靭帯 背側距舟靭帯、二分靭帯の外部束 横中足靭帯および立方舟状、楔舟、楔間、楔立方、 足根中足、 中足間の各関節の背側・底側・骨間の種々の靭帯さらに長・短腓骨筋の緊張 |
足関節 内がえし | 骨性 | 踵骨と足根洞底部が接触。また三角靭帯、内側距踵靭帯および後脛骨筋の緊張の場合がある |
足関節 外がえし | 靭帯・関節包性、筋性 | 関節包外側部、前後距腓靭帯 踵腓靭帯、外側・後・前骨間距舟靭帯の緊張 |
関節の運動方向 | 最終域感 | 最終域の要因 |
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