認知症の状態を把握するときには、記憶や見当識に加えて、生活動作、行動・心理症状、家族の支援状況も確認する必要があります。ABC認知症スケールは、日常生活動作、行動・心理症状、認知機能を合わせて評価する尺度です。
この記事では、評価の進め方、得点の読み方、リハビリテーションでの活用を解説します。
ABC認知症スケールとは
ABC認知症スケール(ABC Dementia Scale:ABC-DS)は、主にアルツハイマー型認知症の重症度評価を目的として開発されました。医療従事者が、本人の状態を知る介護者や家族に聞き取って評価します。公式資料では、13項目、所要時間は約10分と紹介されています。[1]
本人に記憶や計算の問題を解いてもらう検査とは、評価方法が異なります。
ABCの3領域
| 領域 | 英語 | 項目数 |
| A:日常生活動作 | Activities of Daily Living | 6項目 |
| B:行動・心理症状 | Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia | 3項目 |
| C:認知機能 | Cognitive Function | 4項目 |
3領域を通して、生活動作と認知・行動面を合わせて評価します。[1] 合計点が同じでも領域の内訳は異なるため、領域別の変化を確認することが大切です。
ABC認知症スケールの評価方法
1.正式な評価セットを準備する
公式の提供窓口から、スケール本体、集計シート、評価ガイダンスなどを入手します。使い方の資料・動画を確認し、項目の文言や挿絵を独自に変更せず使用します。[1]
2.介護者・家族への聞き取りを行う
半構造化面接で、各項目に関係する生活のエピソードを確認します。[1] 本人との関係、同居・別居、接触頻度を記録すると、情報の範囲を把握しやすくなります。
3.具体的な状態を基準と照合する
「できる」「困る」という表現だけではなく、実際の行動、必要な声かけや介助を確認します。正式な評価ガイダンスの記述・挿絵を用いて、該当する段階を判断します。
4.項目・領域・合計を記録する
各項目を1~9点で評価し、13項目を単純合計すると13~117点になります。高得点ほど状態が良好な方向です。奇数の段階の状態記述と、その間に位置する中間段階を用いて評価します。[2]
独自に「毎日あるから1点」などの基準を作らず、正式なガイダンスに従ってください。
結果の見方
合計点による重症度の目安
開発・検証研究では、Global CDRとの対応を検討した結果から、次のような得点範囲が用いられています。[2][3]
| 合計点 | Global CDRとの対応を参考にした目安 |
| 101~117点 | 正常または認知症疑い相当 |
| 86~100点 | 軽度相当 |
| 71~85点 | 中等度相当 |
| 13~70点 | 重度相当 |
これは認知症の確定診断や、すべての病型に共通する判定表ではありません。101点以上でも認知機能障害を否定できません。また、ABCスコアからの重症度推定と、正式なCDR評価は区別して記録します。
領域別の結果を読む
次の表は、支援のために追加確認する実務上の例です。
| 気になった領域 | 追加確認すること |
| ADL | どの工程に声かけや介助が必要か、身体機能の影響はあるか |
| BPSD | どの場面で生じるか、環境や関わり方で変わるか |
| 認知機能 | 説明理解、記憶、判断が生活にどう影響しているか |
単純合計に加え、3領域から算出するTDDという方法も公式に紹介されています。[1] TDDは単純合計とは別の指標です。使用する場合は正式な算出手順を確認し、上記の単純合計の区分をそのまま当てはめないようにします。
リハビリテーションでの活用
実務上の例として、認知機能の変化が小さくてもADLが低下している場合は、痛み、筋力、疲労、環境などを追加確認します。行動・心理面の変化がある場合は、訓練の時間帯、騒音、説明方法、体調との関係を観察します。
本人が落ち着いて参加できる条件を探し、認知面だけでなく身体面と環境面も含めて支援を検討します。合計点の変化だけで訓練の効果や病気の進行を判断しないようにします。
記録例
記録例:ABC-DS単純合計82/117点。同居家族への面接で評価。研究上の区分では中等度相当。領域別得点と具体的エピソードを併記し、ADL低下に関する身体機能・環境の影響を追加確認する。
評価時の注意点
情報提供者が変わると、観察できる生活場面も変わる場合があります。再評価では回答者や環境、治療変更などを記録します。主な開発対象がアルツハイマー型認知症であることを踏まえ、ほかの病型への解釈は関連研究や正式資料を確認します。
尺度本体や挿絵は著作権で保護されています。ブログへの転載、配布、改変、教材販売、アプリへの組み込みは、公式窓口で利用条件を確認してください。[1]
まとめ
ABC認知症スケールは、ADL・BPSD・認知機能の3領域を合わせて読む尺度です。総得点と領域の内訳、実際の生活エピソードを確認し、本人と家族に必要な支援を検討しましょう。
参考資料
[1] 医療イノベーション推進センター(TRI).ABC認知症スケール・提供案内.https://www.tri-kobe.org/service/abc-dementia/
[2] Mori T, et al. ABC Dementia Scale: A Quick Assessment Tool for Determining Alzheimer’s Disease Severity. Dement Geriatr Cogn Disord Extra. 2018;8:85–97. https://doi.org/10.1159/000486956
[3] Shimoda W, et al. Concurrent Validity of the ABC Dementia Scale with Other Standard Scales: A New Comprehensive Instrument for Assessing Dementia in Japan. Dement Geriatr Cogn Disord. 2020;49:617–627(オンライン公開2021年). https://doi.org/10.1159/000513485
資料確認日:2026年10月9日。
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