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心臓エコー検査とは?検査の流れや発見できる異常を徹底解説!

疾患・医学全般

 心臓エコー(Echocardiography)検査(超音波検査)でわかる心臓の状態や異常、検査の流れ、メリット・限界について詳しく解説します。非侵襲的で安全な検査方法で、心臓病の早期発見に役立つ重要な情報を提供します。

  1. 1 心臓エコー検査とは
  2. 2. 心臓エコー検査の目的
  3. 3. 心臓エコー検査の種類
    1. 経胸壁心エコー(TTE:Transthoracic Echocardiography)
    2. 経食道心エコー(TEE:Transesophareal Echocardiography)
    3. ストレスエコー(Stress Echocardiography)
    4. ドプラーエコー(Doppler Echocardiography)
  4. 検査の流れ
    1. 準備
    2. 検査中の手順
  5. 検査後
  6. 検査機器
  7. 検査の数値と指標
    1. 1.左心室駆出率(EF:Ejection Fraction)
    2. 2.左室拡張末期径(LVIDd:Left Ventricular Internal Diameter in Diastole)
    3. 3.左心房経(LAD:Left Atrial Diameter)
    4. 4.心拍出量(CO:Cardiac Output)
    5. 5.心拍指数(CI:Cardiac Index)
    6. 6.逆流量(Regurgitation Volume)
    7. 7.拡張末期容積(EDV:End-Diastolic Volume)
    8. 8.心拍数(HR:Heart Rate)
    9. 9.大動脈弁圧較差(Aortic Valve Pressure Gradient)
    10. 10.前駆出期(PEP:Pre-Ejection Period)
    11. 11.駆出時間(ET:Ejection Time)
    12. 12.僧帽弁E点ー心室中隔距離(EPSS:E-point Septal Separation)
    13. 13.僧帽弁後退速度(EF Slope:Mitral Valve D-E Excursion Slope)
    14. 14.左室収縮末期径(LVIDs:Left Ventricular Internal Diameter in Systole)
    15. 15.左室拡張末期径(LVIDd:Left Ventricular Internal Diameter in Diastole)
    16. 16.左室駆出率(EF:Ejection Fraction)
    17. 17.左室内径短縮率(%FS:Fractional Shortening)
    18. 18.心室中隔収縮末期厚(IVSTs:Interventricular Septal Thickness in Systale
    19. 19.左室後壁収縮末期厚(LVPWTs:Left Ventricular Posterior Wall Thickness in Systole)
    20. 20.左室後壁拡張末期厚(LVPWTd:Left Ventricular Posterior Wall Thickness in Diastole)
    21. 21.大動脈径 大動脈基部最大(Aortic Root Diameter)
    22. 22.大動脈径 大動脈弁輪経(Aorti Annulus Diameter)
    23. 23.大動脈弁口径(AVO:Aortic Valve Orifice)
    24. 24.左房径(LA:Left Atrial Diameter)
    25. 25.右室内径(RV:Righit Ventricular Diameter)
    26. 25.右房径(RA:Right Atrial Diameter)
    27. 26.下大静脈径(IVC:Inferior Vene Cava Diameter)
    28. 27.三尖弁逆流圧較差(TRPG:Tricuspid Regurgitation Pressure Gradient)
  8. 心エコー検査で見つかる心臓の異常
    1. 1.心臓弁膜症(Valvular Heart Disease)
    2. 2.心筋症(Cardiomyopathy)
    3. 3.心不全(Heart Failure)
    4. 4.先天性心疾患(Congenital Heart Disease)
    5. 5.心膜炎および心嚢液貯留(Pericarditis and Pericardial Effusion)
    6. 6.大動脈疾患(Aortic Diseases)
    7. 7.虚血性心疾患(Ischemic Heart Disease)
  9. 心エコー検査のメリット
    1. 1.非侵襲的で安全
    2. 2.リアルタイムで心臓の動きを確認
    3. 3.広範囲な異常を発見できる
    4. 4.ストレスエコーや経食道心エコーなど用途に応じた検査が可能
    5. 5.繰り返し検査が可能
  10. 心エコー検査の限界
    1. 1.解像度の制約
    2. 2.特定の構造や病変の評価が困難
    3. 3.TEEの不快感
    4. 4.虚血性心疾患の初期診断に限界

1 心臓エコー検査とは

 心臓エコー検査は超音波を使って心臓の構造や動きを詳細に観察する検査です。超音波は、体に無害で痛みを伴わないため、患者さんにとって負担が少なく安全に心臓の常置を確認することができます。主に心臓の大きさ、壁の動き、弁の働き、そして血流の状態を調べるのに用いられます。

2. 心臓エコー検査の目的

 心臓エコー検査の主な目的は、心臓の異常を早期に発見し、適切な治療につなげることです。具体的には心筋梗塞や心不全、心臓弁膜症、先天性心疾患などの診断に役立ちます。また、心臓の機能や構造を継続的に観察することで、治療効果を評価したり、今後の治療方針を決めるための重要な情報を提供します。

3. 心臓エコー検査の種類

経胸壁心エコー(TTE:Transthoracic Echocardiography)

 経胸壁心エコー(TTE)は最も一般的な心エコー検査です。胸壁から超音波を当てて、心臓の動きや構造を確認します。患者さんがベッドに横たわり、胸部にジェルを塗り、プローブを使用して心臓を映し出します。

 特徴:非侵襲的で安全。痛みを伴わず、外来で簡単に実施できます。

 用:心臓の大きさ、弁の働き、心臓壁の動き、血流を確認するために使用されます。

 メリット:簡単で安全、幅広い心疾患の診断が可能です。

経食道心エコー(TEE:Transesophareal Echocardiography)

 経食道心エコー(TEE)はより詳細な心臓の画像を得るための方法です。超音波プローブを食道内に挿入することで心臓に近い位置から観察できるため、胸の骨や肺による画像の妨げが少なくなります。

特徴:経胸壁心エコー(TTE)では見えにくい部分や、より精度の高い観察が必要な場合に用いられます。プローブは鎮静剤を使用して、喉から食道に挿入します。

用途:心臓弁の詳細な評価や血栓の有無、心臓の内部構造を調べるのに適しています。

メリット:非常に詳細で高精度な画像が得られます。

デメリット:プローブの挿入がやや不快で、鎮静が必要な場合があります。

ストレスエコー(Stress Echocardiography)

 ストレスエコーは、運動や薬剤によって心臓に負荷をかけた状態での心臓機能を評価する検査です。安静時とストレス時の心臓の動きや血流を比較し、心臓の異常を発見します。

特徴:心臓に負荷がかかっている状態での心臓の働きを評価できる点で、他のエコーとは異なります。通常、運動(トレッドミルやエルゴメーター)か薬剤を使って心拍数を上げて実施することがあります。

用途:心臓の血管(冠動脈)の狭窄や心筋梗塞のリスク評価に使われます。運動中の症状が出るかを確認し、虚血性心疾患(狭心症など)の診断に役立ちます。

メリット:安静時では見つけられない心臓の問題を検出できる

デメリット:負荷をかけるため、検査中に体調が悪化するリスクがありますが、医師がついての測定のため急な時の対応ができるようになっています。

ドプラーエコー(Doppler Echocardiography)

 ドプラーエコーは、血液の流れを可視化するための技術です。心臓内や血管内の血流の速さや方向を測定し、血流の異常を発見します。通常は、TTEやTEEと組み合わせて実施されます。

 特徴:ドプラー効果を利用して、血流の流れをリアルタイムで観察します。色付きの画像で血流の方向を視覚的に表示する「カラードプラー」も良く使用されます。

 用途:弁膜症(心臓の弁の異常)や心臓内シャント(異常な血流の通路)を評価するのに効果的です。特に血流の速度や逆流(弁からの逆流)を確認するのに適しています。

 メリット:血流の問題を的確に把握でき、心臓弁や血管の異常を診断するのに重要です。

検査の流れ

準備

  • 検査を受ける際特別な準備はほとんどありません。胸部を露出するため、上半身が開けやすい服装となります。通常、検査台に横たわり、リラックスした状態で検査が進みます。
  • 経食道心エコー(TEE)の場合は、検査前に食事制限が必要となります。また、喉の麻酔や鎮静剤が使用されることがあります。

検査中の手順

  • 経胸壁心エコー(TTE)の場合、胸の上にジェルを塗り、その上からプローブ(超音波を発生する機械)を使って心臓の画像を映します。医師や検査技師がプローブを胸に当てて心臓の各部位を観察します。
  • 経食道心エコー(TEE)の場合、喉に麻酔をかけた後、細長いプローブを口から食道に挿入します。検査中は軽く鎮静されているので痛みはほとんど感じませんが、少し喉に違和感があるかもしれません。
  • ストレスエコーでは、運動または薬剤によって心臓に負荷をかけた状態で心臓の働きを観察します。運動をして心拍数が上がった状態で心臓の画像を撮ります。
  • ドプラーエコーでは、血流の速度や方向を観察するために、特に心臓の弁や血管の部分で詳細な測定が行われます。カラードプラーを使用して血液の流れを色で表示し、逆流や血流の異常を発見します。

検査後

  • 経胸壁心エコー(TTE)やドプラーエコーの場合、特に回復期間は必要なく、検査が終わるとすぐに日常に戻れます。
  • 経食道心エコー(TEE)の場合、検査後しばらくは喉の違和感や軽い疲労感が残ることがありますが、数時間後には普通の生活に戻れます。

検査機器

心エコー検査機器は機能としておおまかに超音波を発生するプローブと、画像を表示するモニター部に分かれます。

  • 超音波プローブ:このプローブからの超音波を体内の組織に当てて、その反射波を画像として表示します。プローブは胸等に接触させますが、強い圧力は必要としないため痛みはありません。
  • モニター:検査中、心臓の動きや血流の様子がリアルタイムでモニターに映し出されます。医師や検査技師がこれを確認しながら必要な部位の画像を取得し、必要な数値を読み取ります。

検査の数値と指標

1.左心室駆出率(EF:Ejection Fraction)

EF(左心室駆出率)は心臓が一回の拍動で送り出す血液の割合を示します。通常、左心室が収縮して体全体に血液を送り出しますが、その際にどれだけの血液が実際に送り出されたかパーセンテージで示します。

  • 基準値:50~70%が正常範囲です。50%未満は心機能が低下している可能性があり、心不全の徴候とされます。
  • 意義:EFが低い場合、心臓のポンプ機能が低下している可能性があり、心不全やほかの心疾患の診断に重要です。

2.左室拡張末期径(LVIDd:Left Ventricular Internal Diameter in Diastole)

LVIDd(左室拡張末期径)は、心臓が拡張した時の左心室の内部の直径を測定したものです。この数値は心臓が血液をしっかりと受け入れ、送り出す能力を評価するために重要です。

  • 基準値:男性で42~59mm、女性で39~53mmが正常範囲です。
  • 意義:左室が異常に拡大している場合、心臓がうまく機能していない可能性があります。特に拡張型心筋症の診断に役立ちます。

3.左心房経(LAD:Left Atrial Diameter)

LAD(左心房径)は、左心房の大きさを示す指標です。左心房は、肺から戻ってきた血液を受け入れる場所です。左心房のサイズが異常に大きい場合、心房細動や心不全の兆候となることがあります。

  • 基準値:30~40mmが正常範囲です。
  • 意義:左心房が拡張している場合、僧帽弁の異常、血圧や心房細動が関係していることがあります。

4.心拍出量(CO:Cardiac Output)

CO(心拍出量)は心臓が1分間に送り出す血液の量です。心臓のポンプ機能を評価するために重要な指標です。

  • 基準値:通常4~8ℓ/分が正常範囲です。
  • 意義:心拍出量が低い場合、心臓が十分な血液を全身に供給できていない可能性があります。

5.心拍指数(CI:Cardiac Index)

CI(心拍指数)は、心拍出量を体表面積で割った数値です。患者の体格に応じて心機能を評価できるため、個別の心機能の評価に役立ちます。

  • 基準値:約2.5~4.0ℓ/分/m2が正常範囲です。
  • 意義:低い心拍数は、心臓が効率的に血液を供給していない可能性を示唆します。

6.逆流量(Regurgitation Volume)

逆流量は、心臓の弁が正常に閉じない場合に逆流する血液の量を測定します。主にドプラーエコーで評価することができます。

  • 基準値:正常な心臓では逆流はほとんどありません。軽度、中等度、重度の逆流が評価されます。
  • 意義:重度の逆流は、弁の修復や置換術が必要になる場合があります。

7.拡張末期容積(EDV:End-Diastolic Volume)

 EDV(拡張末期容積)は心臓が最も多くの血液を蓄えた状態(拡張末期)での左心室の容積を指します。心臓のポンプ機能や血液の充満状態を評価するのに役立ちます。

  • 基準値:100~150㎖が正常範囲です。
  • 意義:EDVが高い場合、心臓が血液を効率的に送り出せていない可能性があります。心不全や心筋症の診断に役立ちます。

8.心拍数(HR:Heart Rate)

 HR(心拍数)は1分間に心臓が拍動する回数です。安静時の心拍数を測定し、心臓の状態を評価します。

  • 基準値:60~100回/分が正常範囲です。拍動のリズムが一定であれば正常です。
  • 意義:心拍が高すぎる(頻脈)または低すぎる(徐脈)の場合と、心臓のリズムの異常を把握することができます。

9.大動脈弁圧較差(Aortic Valve Pressure Gradient)

 大動脈弁圧較差は、大動脈弁を通る血流の圧力差を測定したものです。大動脈弁狭窄症の診断に使用されます。

  • 基準値:20mmHg以下が正常です。20mmHg以上の場合、大動脈弁狭窄が疑われます
  • 意義:圧較差が大きいほど、血液の流れが制限されている可能性が高く、弁の狭窄が進行していることを示します。

10.前駆出期(PEP:Pre-Ejection Period)

PEP(前駆出期)は、左心室が収縮し始めてから大動脈弁が開くまでの時間を示します。この期間は、心臓の収縮機能を評価するために使用されます。

  • 基準値:約70~120ms
  • 意義:PEPが延長する場合、左心室の収縮機能が低下している可能性があります。心不全や虚血性心疾患が疑われます。

11.駆出時間(ET:Ejection Time)

ET(駆出時間)は、大動脈弁が開いてから閉じるまでの時間、すなわち心臓が血液を送り出している期間を測定します。心臓の収縮機能や血流の状態を評価するために使われます。

  • 基準値:約200~300ms
  • 意義:ETが短い場合、心臓が十分に血液を送り出せていない可能性があり、心機能の低下を示唆します。逆に、ETが延長している場合は大動脈弁狭窄などが疑われます。

12.僧帽弁E点ー心室中隔距離(EPSS:E-point Septal Separation)

EPSS(僧帽弁E点ー心室中隔距離)は僧帽弁のE点(左心房から左心室への血液流入時の最大移動点)と心室中隔の距離を測定したものです。左心室の収縮機能を評価するために使用されます。

  • 基準値:7mm以下
  • 意義:EPSSが7mm以上になる場合、左心室の収縮機能が低下している可能性があり、心不全や心筋症の徴候となります。

13.僧帽弁後退速度(EF Slope:Mitral Valve D-E Excursion Slope)

EF Slope(僧帽弁後退速度)は、僧帽弁のE点からF点までの後退速度を示します。この指標は、左心房から左心室への血液流入の動態を評価するために使用されます。

  • 基準値:60~150mm/s
  • 意義:EF Slopeが低い場合、左心室の弛緩不全や拡張障害の可能性があります。これは拡張型心筋症や心不全の診断に役立ちます。

14.左室収縮末期径(LVIDs:Left Ventricular Internal Diameter in Systole)

 LVIDs(左室収縮末期径)は心臓が収縮し終わった時(収縮期末)の左心室内径を示します。この指標は、左心室の収縮機能を評価するために使用されます。

  • 基準値:男性で約25~40mm、女性で22~35mm
  • 意義:LVIDsが拡大している場合、心臓の収縮機能が低下している可能性があり、心不全や心筋症の兆候となります。

15.左室拡張末期径(LVIDd:Left Ventricular Internal Diameter in Diastole)

LVIDd(左室拡張末期径)は心臓が最も拡張した時(拡張末期)の左心室内径を測定たものです。左心室の拡張機能を評価するために重要です。

  • 基準値:男性で約42~59mm、女性で約39~53mm
  • 意義:LVIDdが拡大している場合、心臓が血液を十分に送り出すことができず、心不全や心筋症のリスクが高まります。

16.左室駆出率(EF:Ejection Fraction)

EF(左室駆出率)は左心室が収縮する際にどれだけの血液を大動脈に送り出したかを示す指標です。これは心機能を評価するうえで非常に重要な数値です。

  • 基準値:50~70%
  • 意義:EFが50%以下の場合、左心室のポンプ機能が低下している可能性があり、心不全や虚血性心疾患が疑われます。

17.左室内径短縮率(%FS:Fractional Shortening)

%FS(左室内径短縮率)は心臓の収縮によって左心室内径がどれだけ縮小したかを示す指標です。これは左心室の収縮機能を評価するために使用されます。

  • 基準値:25~45%
  • 意義:短縮率が低い場合、左心室の収縮機能が低下している可能性があり、心不全や心筋症が疑われます。

18.心室中隔収縮末期厚(IVSTs:Interventricular Septal Thickness in Systale

IVSTs(心室中隔収縮末期厚)は心臓が収縮した時の心室中隔の厚さを測定します。心室中隔部の心筋の肥厚を評価します。

  • 基準値:6~10mm
  • 意義:中隔が肥厚している場合は心筋症や高血圧の兆候があるかもしれません

19.左室後壁収縮末期厚(LVPWTs:Left Ventricular Posterior Wall Thickness in Systole)

LVPWTs(左室後壁収縮末期厚)は、心臓が収縮しているときの左室後壁の厚さを測定します。心筋肥厚を評価するために用いられます。

  • 基準値:8~12mm
  • 意義:左室後壁が肥厚している場合、心筋症や高血圧の可能性があります。

20.左室後壁拡張末期厚(LVPWTd:Left Ventricular Posterior Wall Thickness in Diastole)

LVPWTd(左室後壁拡張末期厚)は左室後壁が拡張しているときの厚さを示します。拡張期における心筋の評価に使われます。

  • 基準値:6~10mm
  • 意義:左室後壁が肥厚している場合、心筋症や高血圧の可能性があります。

21.大動脈径 大動脈基部最大(Aortic Root Diameter)

大動脈基部最大径は、大動脈が心臓から出る基部の最大直径を測定します。大動脈瘤や拡張のリスクを評価するために重要です。

  • 基準値:28~40mm
  • 意義:大動脈基部が拡大している場合、大動脈りゅうのリスクや高血圧が考えられます。

22.大動脈径 大動脈弁輪経(Aorti Annulus Diameter)

大動脈弁輪経は、大動脈弁が位置する部分の直径を測定します。大動脈弁の異常や手術の必要性を評価するのに役立ちます。

  • 基準値:20~30mm
  • 意義:弁輪が拡大している場合、大動脈弁疾患のリスクがあります。

23.大動脈弁口径(AVO:Aortic Valve Orifice)

AVO(大動脈弁口径)は、大動脈弁が開いた時の弁口の大きさを測定する。狭窄や閉塞のリスクを評価するために使われます。

  • 基準値:2.5~4.0cm2
  • 意義:弁口が狭い場合、大動脈弁狭窄症が疑われます。

24.左房径(LA:Left Atrial Diameter)

LA(左房径)は左心房の大きさを示す指標です。左心房の拡大は心房細動や心不全の兆候となることがあります。

  • 基準値:30~40mm
  • 意義:左房が拡大している場合、心房細動や弁膜症が疑われます。

25.右室内径(RV:Righit Ventricular Diameter)

RV(右室内径)は、右心室の内径を測定したもので、右心室の機能を評価するために使われます。

  • 基準値:20~30mm
  • 意義:右心室が拡大してる場合、肺高血圧症や右心不全の可能性があります。

25.右房径(RA:Right Atrial Diameter)

RA(右房径)は右心房の大きさを示します。右房の拡大は、肺高血圧症や右心不全の兆候となることがあります。

  • 基準値:30~45mm
  • 意義:右心房が拡大している場合、右心不全や肺高血圧症の可能性があります。

26.下大静脈径(IVC:Inferior Vene Cava Diameter)

IVC(下大静脈径)は、右心房に血液を戻す下大静脈の大きさを示します。右心房の圧力を推定するために使用され、下大静脈径が呼吸性変動の影響を受けなく径が一定の場合は中心静脈圧が高まっていると推測されます。

  • 基準値
最大下大静脈径(mm)呼吸性変動(虚脱率)推定右房圧(mmHg)
≦21≧50%3
≦21<50%8
>21≧50%15
>21<50%15
  • 意義:IVCが拡大、また、呼吸性変動が少ない場合は、右心不全や肺高血圧症が疑われる

27.三尖弁逆流圧較差(TRPG:Tricuspid Regurgitation Pressure Gradient)

TRPG(三尖弁逆流圧較差)は三尖弁逆流の最大血流速度を用いて算出した数値です。TRPGは右房ー右室間の収縮期較差を意味しますので、TRPGに上記の推定右房圧を加えることで右室収縮期圧(RVSP:Right Ventricular Systolic Pressure)を推測することができます。

基準値:35mmHg未満。(ただ、TRPG+RAPにてRVSPを推測します)

意義:肺高血圧症の診断に役立ちます

心エコー検査で見つかる心臓の異常

心エコー検査は、非侵襲的で安全に心臓の構造や機能を詳細に評価できる重要な検査です。この検査によって、心臓弁膜症、心筋症、心不全、先天性心疾患、虚血性心疾患など、さまざまな心臓の異常が発見されます。早期の診断と治療につながるため、心エコー検査は心臓病の管理において不可欠な役割を果たしています。

1.心臓弁膜症(Valvular Heart Disease)

心臓には4つの弁(大動脈弁、僧帽弁、三尖弁、肺動脈弁)があり、血液の逆流を防ぎ、正常な血流を維持しています。心エコー検査では、これらの弁の動きや機能に異常がないかを確認します。

心エコーで見つかる異常:弁の狭窄(弁が十分に開かない)、弁の閉鎖不全(弁が十分に閉じないため血液の逆流がおきる)などの異常を確認できます。大動脈弁狭窄症(AS)や僧帽弁閉鎖不全(MR)などを発見することができます。

2.心筋症(Cardiomyopathy)

心筋症は、心筋が肥大したり、心筋が薄くなり収縮力が低下する病気です。

心エコーで見つかる異常:心筋の肥大、心室の拡張、心壁の厚みや動きの異常。主に心筋症は3つのタイプに分けられます。拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症です。

拡張型心筋症:左心室が拡張し、心臓のポンプ機能が低下する状態。心エコーでは、左心室が拡大していることが確認されます。

肥大型心筋症:心筋が異常に肥大し、特に心室中隔が厚くなる状態。心エコーで心室壁や心室中隔の肥厚が見つかります。

拘束型心筋症:心筋が硬くなり、拡張がうまくできなくなる状態。心エコーでは、心臓が十分に拡張できないことが示されます。

3.心不全(Heart Failure)

心不全は心臓が全身に十分な血液を送り出すことができなくなる状態です。心エコー検査では、心臓のポンプ機能や心室の収縮・拡張能力を評価します。

心エコーで見つかる異常:左心室・右心室の機能低下、心臓のポンプ機能の低下、心腔の拡大や弛緩障害が分かります。

左心不全:左心室が十分に収縮できないことで、全身に血液を送り出す力が弱まります。心エコーでは、左心室の駆出率(EF)が低下しているかどうかを確認します。

右心不全:右心室が正常に働かず、血液が体内に滞留する状態です。心エコーでは右心室の機能低下や下大静脈の拡大がみられます。

4.先天性心疾患(Congenital Heart Disease)

先天性心疾患は出生時に心臓や血管に異常がある状態です。心エコー検査は特に小児において先天的な異常の診断に重要です。

心エコーで見つかる異常:心臓内の異常な穴やシャント、異常な血流経路。

心房中隔欠損症(ASD):心房の間に穴が開いている状態。心エコーで血液の異常な流れが確認されます。

心室中隔欠損症(VSD):心室の間に穴が開いている状態。ドプラーエコーで異常な血流が見られます。

動脈管開存症(PDA):胎児期に機能していた血管が生後も開いたまま残っている状態です。

5.心膜炎および心嚢液貯留(Pericarditis and Pericardial Effusion)

心膜炎は、心臓を包む膜(心膜)の炎症を示し、心嚢液が貯留すると心臓の働きを妨げます。心エコーは心膜の炎症や心嚢液の貯留を確認するために使われます。

心エコーで見つかる異常:心膜の肥厚、心嚢内の体液の貯留、心タンポナーデ(体液が心臓を圧迫している状態)

心膜炎:心膜が厚くなり、炎症が起きている状態

心嚢液貯留:心臓周囲に液体がたまり、心臓のポンプ機能を制限する状態です。

6.大動脈疾患(Aortic Diseases)

大動脈疾患は、大動脈(心臓から全身に血液を送る大血管)に異常がある状態です。心エコー検査では、大動脈の拡張や狭窄などを評価します。

心エコーで見つかる異常:大動脈の拡張、瘤の形成、大動脈壁の異常な動き

大動脈瘤:大動脈の壁が異常に膨らんだ状態。心エコーで大動脈の拡張が確認されます。

大動脈解離:大動脈壁の内層が裂け、血液が壁の層の間に流れ込む状態です。

7.虚血性心疾患(Ischemic Heart Disease)

虚血性心疾患は冠動脈(心臓に血液を供給する動脈)が狭窄または閉塞して、心筋が十分な酸素を受け取れなくなる状態です。心エコー検査は、心筋の血流不足による異常を検出します。

心エコーで見つかる異常:心筋の収縮不全、壁運動の異常、ポンプ機能の低下。

心筋梗塞:冠動脈がつまり、心筋に血液が供給されなくなる状態。心エコーでは、心筋の一部が正常に収縮しないことが見られます。

狭心症:心筋が一時的に血流不足となり、共通などの症状を引き起こす状態です。

心エコー検査のメリット

1.非侵襲的で安全

心エコー検査は、体にメスを入れたり針を刺すことがなく、超音波を用いて心臓の構造や機能を評価できるため、痛みがなく身体に負担が少ない検査です。放射線を使用しないため被爆のリスクもありません。

2.リアルタイムで心臓の動きを確認

超音波を使って、リアルタイムで心臓の動きや血流の様子を観察できるため、心拍や弁の動き、血液の流れをその場で確認できます。これにより異常な動きや逆流などを発見できます。

3.広範囲な異常を発見できる

心エコー検査は、心臓弁膜症、心筋症、先天性心疾患、心不全、大動脈疾患、心膜の異常など、様々な心臓疾患の診断に役立ちます。特に心臓の構造異常や血流の異常を見つけるのに適しています。

4.ストレスエコーや経食道心エコーなど用途に応じた検査が可能

状況に応じて様々な種類の心エコー検査が利用できます。例えば、運動や薬剤によって心臓に負荷をかけるストレスエコーは、通常では発見しにくい虚血性心疾患(狭心症など)の診断に役立ちます。また、より詳細な画像が必要な場合は経食道エコー(TEE)が利用され、心臓の内部や弁の詳細な構造が確認できます。

5.繰り返し検査が可能

心エコー検査は身体に負担が少ないため、何度でも繰り返し行うことが可能です。これにより心臓病の経過を定期的にモニタリングし、治療の効果を確認することができます。

心エコー検査の限界

1.解像度の制約

超音波を使用するため、心臓の一部が明瞭に見えないことがあるという限界があります。特に肥満の方や肺気腫の患者では、体内の脂肪や超音波の通過を妨げ、鮮明な画像が得られにくくなります。

2.特定の構造や病変の評価が困難

心エコー検査は心臓の外部構造や動きには強いものの、細かい冠動脈の異常(狭窄や閉塞)などを詳細に観察することは難しいです。そのため冠動脈の状態を詳しく調べる場合には、心臓カテーテル検査やCT検査な動画必要になることがあります。

3.TEEの不快感

経食道心エコー(TEE)は食道を通して心臓に近い場所から観察するため、高精度な画像を提供しますが、プローブを食道に挿入するため、患者にとって不快感を伴います。また、鎮静剤を使用する場合もあり、TTE(経胸壁心エコー)に比べてややリスクや負担が高くなります。

4.虚血性心疾患の初期診断に限界

虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症)の診断には心エコーが有用ですが、安静時の心エコー検査では、軽度の狭窄や血流の問題が検出できない場合があります。このような場合は、心負荷をかけるストレスエコーが必要です。また、より詳細な評価は冠動脈造影が行われます。

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