心エコー検査の報告書には、EFや弁の逆流、心腔の大きさなど、さまざまな情報が記載されています。リハビリ職にとって大切なのは、それぞれの情報が何を示すかを理解し、患者さんの症状や運動時の反応と合わせて考えることです。
この記事では、心エコー検査の基本と、リハビリを行う際に確認したいポイントをまとめます。詳しい数値・略語と画像の見方は、別の記事で解説します。
心エコー検査とは
心エコー検査は、超音波を使って心臓の構造や動き、血流を観察する検査です。「心臓超音波検査」とも呼ばれます。
一般的な経胸壁心エコーでは、胸にジェルを塗り、プローブを当てて検査します。放射線を使わず、心臓の動きをリアルタイムで観察できることが特徴です。
心疾患の診断を支えるほか、治療前後の変化や経過を確認するためにも行われます。[1]
心エコーで何がわかる?
心エコーでは、主に次の項目を評価します。
| 評価するもの | 確認する内容 |
| 心臓の大きさ・壁の厚さ | 心房・心室の拡大、心筋の肥厚など |
| 収縮機能 | 血液を送り出す働きや、心筋の各部位の動き |
| 拡張機能 | 心室がゆるみ、血液を受け入れる働き |
| 弁の状態 | 弁の開きにくさ(狭窄)や血液の逆流 |
| 右心系・圧の推定 | 右室機能、推定右房圧や肺動脈圧に関係する所見 |
| 心臓の周囲 | 心嚢液の有無や心臓への影響 |
心臓の働きは、ひとつの数値だけでは把握できません。 構造・収縮・拡張・弁・右心系などの所見を組み合わせて評価します。[1]
心エコー検査の種類と評価方法
検査の目的に応じた方法
| 方法 | 検査の特徴 | 主な目的 |
| 経胸壁心エコー(TTE) | 胸にプローブを当てる一般的な検査 | 心臓の構造・機能を幅広く評価する |
| 経食道心エコー(TEE) | 食道内にプローブを挿入する | TTEでは見えにくい構造や、弁・左心耳などを詳しく評価する |
| 負荷心エコー | 運動や薬剤で負荷をかけ、安静時と比較する | 負荷時の壁運動や血行動態の変化などを評価する |
TTEは通常、検査のための絶食を必要としません。一方、TEEでは絶食や咽頭麻酔、必要に応じた鎮静などが行われます。検査後の飲食・活動は、麻酔や鎮静からの回復を含め、検査施設の指示に従います。
負荷心エコーは、適応やリスクを確認したうえで、監視・緊急対応の体制下で実施されます。
断層画像とドプラーの違い
心エコーでは、心臓の形や動きを観察する断層画像に加えて、血流を評価するドプラー法などを使用します。ドプラー法は、TTEやTEEと組み合わせる評価技術です。
| 評価方法 | 主に確認するもの |
| 断層画像(Bモード) | 心臓の形、心腔の大きさ、壁や弁の動き |
| Mモード | 一定の方向での構造の動きを、時間に沿って表示する |
| カラードプラー | 血流の方向などを色で表示する |
| パルス・連続波ドプラー | 血流速度や波形を測定する |
| 組織ドプラー | 心筋や弁輪などの動く速度を測定する |
リハビリ職が心エコーの結果を確認する順番
略語や測定値を順番に読むよりも、まず報告書の「総合所見」「結論」を確認すると、重要な情報をつかみやすくなります。
① 検査日と総合所見を確認する
検査がいつ行われたか、主な異常は何か、前回と比べて変化があるかを確認します。状態が変わった患者さんでは、過去の心エコー結果が現在の状態を十分に反映していない場合があります。
② 左室の収縮機能と壁運動を確認する
代表的な指標が、左室駆出率(LVEF)です。報告書では「EF」と記載されることもあります。
LVEFは、拡張末期に左室内にある血液のうち、1回の収縮でどれだけを送り出したかを示す割合です。左室全体の収縮機能に関する情報に加えて、局所的な壁運動異常の有無も確認します。
EFが保たれていても、心不全を否定できるわけではありません。 血液を受け入れる働きの障害などにより、EFが保たれた心不全(HFpEF)が生じることがあります。[2]
③ 弁膜症の有無と程度を確認する
弁に狭窄や逆流がある場合は、どの弁に、どの程度の異常があるかを確認します。弁膜症の種類・重症度・症状によって、運動時に注意する点は異なります。
④ 拡張機能・右心系・心嚢液を確認する
左室の拡張機能、右室機能、下大静脈などの所見も確認します。これらは、心臓内の圧やうっ血を考える際の情報になります。心嚢液がある場合は、量だけでなく心臓への影響に関する総合所見を確認します。[1]
⑤ 運動時の反応と照らし合わせる
心エコーの所見は、患者さんの息切れ・疲労感・胸部症状、血圧・脈拍・SpO₂、浮腫などと合わせて考えます。
心エコーの数値だけで、リハビリの実施可否や運動強度を決めることはできません。 現在の病状、治療内容、医師の指示、施設の中止基準を踏まえて判断します。
報告書でよく見かける略語
まずは、次の略語が何を示すかを押さえておくと、報告書を読みやすくなります。
| 略語 | 名称・意味 |
| LVEF/EF | 左室駆出率。左室の収縮機能に関する指標 |
| LVIDd/LVDd | 左室拡張末期径。拡張末期の左室内径 |
| LVIDs/LVDs | 左室収縮末期径。収縮末期の左室内径 |
| LAVI | 左房容積係数。左房容積を体表面積で補正した値 |
| E/e′ | 拡張機能評価や左室充満圧の推定に用いる指標のひとつ |
| AS/AR | 大動脈弁狭窄症/大動脈弁逆流 |
| MS/MR | 僧帽弁狭窄症/僧帽弁逆流 |
| TR | 三尖弁逆流 |
| TRPG | 三尖弁逆流の流速から計算する右室と右房の圧較差 |
| IVC | 下大静脈。径と呼吸による変化などを評価する |
略語や測定値の表記は施設によって異なることがあります。数値を読む際は、単位、測定方法、施設の参考範囲も確認しましょう。
心エコーで評価する主な疾患
| 疾患・状態 | 主な評価内容 |
| 心不全 | 左右の心室機能、拡張機能、弁膜症など |
| 心臓弁膜症 | 弁の構造、狭窄・逆流の程度、心臓への影響 |
| 心筋症 | 心筋の厚さ、心腔の大きさ、収縮・拡張機能 |
| 虚血性心疾患 | 局所壁運動異常など |
| 先天性心疾患 | 心臓の構造異常やシャントなど |
| 心嚢液貯留 | 液体の量や分布、心臓への圧迫所見など |
| 肺高血圧が疑われる状態 | 右心系の形態・機能や推定圧など |
これらの疾患は、心エコーだけで診断が完結するとは限りません。症状や診察所見、ほかの検査と組み合わせて判断されます。
心エコー検査の限界
心エコーは多くの情報を得られる検査ですが、肺の空気や体格などの影響で、十分な画像が得られないことがあります。測定値は画像の質や測定方法、そのときの血圧・心拍数などにも影響されます。
また、安静時の心エコーで明らかな異常がなくても、負荷時に生じる問題や冠動脈の狭窄を否定できるわけではありません。
リハビリでは、検査結果を参考にしながら、その日の症状と活動中・活動後の変化を観察することが大切です。
数値と画像の見方を詳しく知りたい方へ
心エコーの理解を深めるには、報告書の数値と、画像で観察している構造を結びつけて学ぶと役立ちます。
心エコーの数値・略語の見方では、指標を収縮機能、心腔の大きさ、拡張機能、弁膜症、右心系などに分けて解説します。
心エコー画像の見方では、基本断面ごとの心房・心室・弁の位置と、観察するポイントを解説します。
まとめ
心エコー検査は、心臓の構造・収縮・拡張・弁・血流などを評価する検査です。リハビリ職は、報告書の総合所見を入り口に、重要な異常と経時的な変化を確認し、患者さんの症状や運動時の反応につなげて考えましょう。
参考文献
1. 日本循環器学会ほか. JCS 2021 Guideline on the Clinical Application of Echocardiography. Circulation Journal. 2022;86:2045–2119. https://doi.org/10.1253/circj.CJ-22-0026
2. American Heart Association. Ejection Fraction Heart Failure Measurement. https://www.heart.org/en/health-topics/heart-failure/diagnosing-heart-failure/ejection-fraction-heart-failure-measurement
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