心電図を見ると、細かなマス目の上にさまざまな波形が並んでいます。「どこから見ればよいのか」「上向きと下向きの波には何の違いがあるのか」と、難しく感じることもあるでしょう。
まずは、用紙のマス目、波形の名前、心拍数、12誘導の意味を押さえると、心電図を読むための土台ができます。
この記事では、リハビリテーションに関わる医療職に向けて、心電図の基本的な見方を解説します。
心電図とは?
心電図(ECG:Electrocardiogram)は、心臓の電気的活動を体表面の電極から記録したものです。
心臓では、電気的な興奮が伝わることで心筋の収縮が起こります。心電図は、その電気的活動の変化を波形として表しています。
心電図からは、心拍数や拍動の規則性、電気的な興奮の伝わり方などを確認できます。
ただし、波形の高さをそのまま「心臓が収縮する力」として読むことはできません。心臓の状態は、症状や身体所見、心エコーなどの情報と合わせて評価します。
心電図用紙の見方
心電図用紙では、横方向が時間、縦方向が電位を表します。
波形を見る前に、記録速度と感度の設定を確認しましょう。標準的な設定は、記録速度が25 mm/秒、感度が10 mm/mVです。
横のマス目は「時間」を表す
記録速度が25 mm/秒の場合、1秒間の波形は横に25 mmの長さで記録されます。
小さいマスは1 mm、大きいマスは5 mmです。
| 横方向の長さ | 時間 |
|---|---|
| 小さいマス1個:1 mm | 0.04秒=40 ms |
| 大きいマス1個:5 mm | 0.20秒=200 ms |
| 大きいマス5個:25 mm | 1秒=1,000 ms |
つまり、大きいマス5個で1秒、小さいマス1個で0.04秒と覚えると、波形の時間を測りやすくなります。
例えば、ある波形の幅が小さいマス2個分なら、時間は0.08秒です。
縦のマス目は「電位」を表す
感度が10 mm/mVの場合、縦方向は次のように読みます。
| 縦方向の高さ | 電位 |
|---|---|
| 小さいマス1個:1 mm | 0.1 mV |
| 大きいマス1個:5 mm | 0.5 mV |
| 大きいマス2個:10 mm | 1 mV |
記録速度や感度が変更されている場合は、同じマス数でも意味が変わります。用紙に記載された「25 mm/s」「10 mm/mV」などの表示を確認することが大切です。
心電図の波形の名前と意味

心電図の基本的な波形には、P波、QRS波、T波があります。
| 名称 | 表している電気的活動 |
|---|---|
| P波 | 心房の脱分極:心房に電気的な興奮が広がる |
| QRS波 | 心室の脱分極:心室に電気的な興奮が広がる |
| T波 | 心室の再分極:心室が電気的に回復する |
ここでいう「脱分極」は電気的に興奮する過程、「再分極」は次の興奮に備えて電気的な状態が戻る過程です。
P波
P波は、心房に電気的な興奮が広がるときの波形です。
通常の洞調律では、P波に続いてQRS波が現れます。P波を見るときは、「確認できるか」「形がそろっているか」「QRS波との関係はどうか」に注目します。
QRS波
QRS波は、心室に電気的な興奮が広がるときの波形です。
基線からの振れ方によって名前がつきます。
- Q波:最初の上向きの波より前に現れる下向きの波
- R波:上向きの波
- S波:R波の後に現れる下向きの波
すべての誘導でQ・R・Sがそろうわけではありません。小さなr波と深いS波の組み合わせや、全体が下向きのQS型になることもあります。
T波
T波は、心室の電気的な回復を表す波形です。
上向きか下向きか、高さや形に変化があるかを確認します。ただし、T波の向きは誘導によって異なるため、下向きという理由だけで異常とは判断できません。
波形の「間隔」と「幅」を確認する
波形そのものに加えて、波形の始まりから終わりまでの時間にも注目します。
| 項目 | 測定する範囲 | 基本的な見方 |
|---|---|---|
| PR間隔〈PQ間隔〉 | P波の始まりからQRS波の始まりまで | 心房から心室へ興奮が伝わる時間をみる |
| QRS幅 | QRS波の始まりから終わりまで | 心室内に興奮が広がる時間をみる |
| QT間隔 | QRS波の始まりからT波の終わりまで | 心室の脱分極から再分極までの時間をみる |
| ST部分 | QRS波の終わりからT波の始まりまで | 基線に対する上昇・低下などをみる |
成人のPR間隔は、一般に0.12〜0.20秒が目安です。記録速度25 mm/秒では、小さいマス3〜5個に相当します。
QRS幅は通常0.12秒未満で、0.12秒以上の場合は心室内の伝導の遅れなどを検討します。
QT間隔は心拍数によって変化するため、一定の数値だけで判断せず、心拍数で補正したQTcも確認します。
これらの数値は、年齢、波形の測定方法、病態なども踏まえて解釈します。
心拍数の計算方法
心拍数は、R波から次のR波までの間隔〈R-R間隔〉から求められます。
R-R間隔が短いほど心拍数は多く、長いほど少なくなります。
規則的な波形では「300÷大きいマスの数」
記録速度25 mm/秒では、大きいマス1個が0.20秒です。
したがって、1分間には大きいマス300個分が入ります。
心拍数〈回/分〉=300÷R-R間隔の大きいマス数
| R-R間隔 | 計算 | 心拍数 |
|---|---|---|
| 大きいマス2個 | 300÷2 | 150回/分 |
| 大きいマス3個 | 300÷3 | 100回/分 |
| 大きいマス4個 | 300÷4 | 75回/分 |
| 大きいマス5個 | 300÷5 | 60回/分 |
| 大きいマス6個 | 300÷6 | 50回/分 |
小さいマスを使う場合は、次の式になります。
心拍数〈回/分〉=1,500÷R-R間隔の小さいマス数
例えば、小さいマス20個分なら、1,500÷20=75回/分です。
不規則な波形では、一定時間内のQRS波を数える
R-R間隔が不規則な場合、1か所の間隔だけでは平均的な心拍数を表しにくくなります。
この場合は、例えば連続した10秒間のQRS波の数を数えて6倍すると、平均的な心拍数を概算できます。
10秒間にQRS波が12個あれば、12×6=72回/分です。
記録全体が10秒でも、各誘導の表示が2.5秒ずつに分かれている用紙があります。計算するときは、同じ誘導の連続した時間を確認し、同じ拍動を重複して数えないようにしましょう。
12誘導心電図とは?
12誘導心電図は、心臓の電気的活動を12通りの方向から観察する検査です。
Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・aVR・aVL・aVF・V1〜V6は、波形そのものの名前ではなく「誘導の名前」です。
標準的な12誘導心電図では、四肢に4個、胸部に6個の計10個の電極を使用します。電極の組み合わせから、12誘導の波形を記録します。
四肢誘導と胸部誘導
| 分類 | 誘導 | 観察する方向 |
|---|---|---|
| 四肢誘導 | Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・aVR・aVL・aVF | 主に前額面から心臓の電気的活動をみる |
| 胸部誘導 | V1・V2・V3・V4・V5・V6 | 主に水平面から心臓の電気的活動をみる |
同じ心臓の電気的活動でも、観察する方向が違えば波形の形も変わります。
上向き・下向きの波形になる理由
脱分極の電気的なベクトルが誘導のプラス側へ向かうと、基本的に上向きの波形になります。プラス側から遠ざかると、下向きになります。
そのため、「上向きだから正常」「下向きだから異常」とは判断できません。 その誘導で通常どのような波形が見られるかを知ることが大切です。
12誘導それぞれの基本的な特徴

以下は、成人の正常心電図でよく見られる代表的な傾向です。電気軸、体格、年齢、電極位置などによって変わるため、固定的な正常基準として使うものではありません。
| 誘導 | 観察する方向・領域の目安 | よく見られる波形の傾向 |
|---|---|---|
| Ⅰ | 左方向・側壁 | P波とQRS波は上向きになりやすい |
| Ⅱ | 左下方向・下壁 | P波が見やすく、リズムの確認に使いやすい |
| Ⅲ | 右下方向・下壁 | QRS波の向きや大きさには個人差がある |
| aVR | 右肩方向 | P波・QRS波・T波は通常、全体として下向き |
| aVL | 左肩方向・高位側壁 | QRS波が小さい場合や、下向きになる場合もある |
| aVF | 足方向・下壁 | 正常軸ではQRS波が上向きになりやすい |
| V1 | 右前胸部・中隔領域 | 小さなr波と深いS波が見られやすい。P波が二相性になることがある |
| V2 | 前胸部・中隔領域 | V1と同様にS波が優位になりやすい |
| V3 | 前壁 | R波が大きくなり、R波とS波の高さが近づくことがある |
| V4 | 前壁・心尖部付近 | R波が優位になりやすい |
| V5 | 左側胸部・側壁 | 大きなR波が見られやすい |
| V6 | 左側胸部・側壁 | R波が優位で、S波は小さいか見られないことがある |
「下壁」「側壁」などは、関連する領域を理解するための目安です。各誘導が、その領域だけの電気的活動を記録しているわけではありません。
胸部誘導はV1からV6への変化を見る
胸部誘導では、一般にV1からV4〜V5へ向かってR波が大きくなり、S波が小さくなります。この変化をR波の増高〈R-wave progression〉といいます。
R波とS波の高さがほぼ等しくなる場所は「移行帯」と呼ばれ、通常はV3〜V4付近に見られます。
ただし、移行帯の位置には個人差があります。正常な変化が見られない場合も、電極の位置や過去の心電図と比較して判断する必要があります。
心電図を見る順番
最初からすべての異常を探そうとせず、見る順番を決めておくと整理しやすくなります。
- 記録条件:患者情報、記録日時、速度、感度を確認する。
- 心拍数:速さを確認する。
- リズム:R-R間隔の規則性と、P波・QRS波の関係を見る。
- 電気軸:四肢誘導のQRS波の向きから大まかな方向を確認する。
- 波形と間隔:P波、PR間隔、QRS幅などを見る。
- ST・T・QT:形や時間の変化を確認する。
- 比較:過去の心電図と比較し、新たな変化がないか確認する。
初学者は、まず「心拍数・規則性・P波とQRS波の関係」を繰り返し確認するとよいでしょう。
リハビリテーションで心電図を確認するポイント
リハビリテーションでは、心電図の変化を患者さんの状態と結びつけて考えることが重要です。
波形と一緒に症状・バイタルサインを見る
運動前、運動中、運動後には、心拍数やリズムだけでなく、次の情報も確認します。
- 胸痛や胸部の圧迫感
- 息切れ、動悸
- めまい、ふらつき
- 冷汗、顔色、意識状態
- 血圧やSpO₂の変化
新たな胸痛、強い呼吸困難、めまい、循環動態の悪化などが出現した場合は、運動を中止し、院内の対応手順に沿って医師・看護師へ連絡します。反応がなく正常な呼吸がない場合は、院内救急対応を開始します。
運動の開始・中止・再開は、個別の病態、医師の指示、施設の基準に基づいて判断します。
モニター心電図と12誘導心電図を区別する
病棟などのモニター心電図は、心拍数やリズムの継続的な観察に役立ちます。一方、12誘導心電図では複数の方向から波形を比較できます。
モニターの1誘導が普段どおりに見えることだけで、心筋虚血などを否定することはできません。
症状や新たな波形変化がある場合は、その状況を共有し、必要な評価につなげます。
波形の乱れにはアーチファクトもある
体動、筋活動、電極の接触不良などによって、心臓の電気的活動とは異なる波形が混入することがあります。これをアーチファクトといいます。
波形が乱れたときは、患者さんの状態を確認するとともに、電極やコードの状態も確認します。見た目だけで不整脈と決めつけたり、反対に「体動のせい」として見過ごしたりしないことが大切です。
まとめ
心電図の基本は、用紙のマス目と波形の意味を理解することから始まります。
記録速度25 mm/秒では、小さいマス1個が0.04秒、大きいマス1個が0.20秒です。規則的な波形では、「300÷R-R間隔の大きいマス数」で心拍数を計算できます。
P波・QRS波・T波は電気的活動の各段階を表し、Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・aVR・aVL・aVF・V1〜V6は、その活動を観察する方向を表します。
リハビリテーションでは、波形の読み方に加えて、症状、バイタルサイン、過去の記録との比較を大切にし、状態の変化を医療チームで共有しましょう。
参考資料
- American Heart Association:[Electrocardiogram(EKG or ECG)](https://www.heart.org/en/health-topics/heart-attack/diagnosing-a-heart-attack/electrocardiogram)
- Kligfield P, et al.:[Recommendations for the Standardization and Interpretation of the Electrocardiogram: Part I](https://doi.org/10.1161/CIRCULATIONAHA.106.180200)
- Hockstad E:[ECG Review 2020](https://www.heart.org/en/-/media/Files/Affiliates/MWA/Kansas-City/KC-Cardiac-and-Stroke-Symposium/2020-Event-Documents/Cardiac-Presentations/2-ECG-Hockstad.pdf)
- 日本循環器学会・日本心臓リハビリテーション学会:[2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン](https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/03/JCS2021_Makita.pdf)
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