心不全の患者さんの心電図では、心房細動や脚ブロック、過去の心筋梗塞を示唆する所見などが見つかることがあります。リハビリでまず確認したいのは、その所見が以前からあるのか、息切れや血圧の変化と同じタイミングで現れたのか、という点です。
心不全の評価で心電図をとる理由
心電図は心臓の電気活動を記録する検査です。心拍数やリズム、電気の伝わり方を調べることで、心不全の背景にある心疾患や、増悪に関わる不整脈・心筋虚血を探す手がかりになります。日本循環器学会・日本心不全学会の2025年ガイドラインでは、心不全で受診した患者の初期評価に12誘導心電図を推奨しています[1]。
心不全の有無は、息切れなどの症状、浮腫などの身体所見、BNP・NT-proBNP、心エコーなどを組み合わせて判断します。心電図が正常でも、症状があれば評価は続けます。左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)も含め、心不全の病型やうっ血の程度は、心電図だけでは判断できません[1, 2]。
心不全で確認したい心電図所見
| 心電図所見 | 何を考えるか |
| 心房細動 | RR間隔が不規則で、一定したP波を認めません。心拍数が速い状態が続くと心不全の増悪に関わることがあり、従来のリズムと安静時・活動時の心拍数を確認します。 |
| 洞性頻脈 | 心不全増悪に伴うことがあります。発熱、貧血、脱水、疼痛などでも起こるため、発生時の状態と合わせて確認します。 |
| 病的Q波やST・T波の変化 | 病的Q波は既往の心筋梗塞、ST・T波の変化は虚血などを考える手がかりです。胸部症状を伴う新しい変化は速やかに共有します。 |
| 左室肥大を示唆する所見 | 高血圧や弁膜症などの背景を考える手がかりです。心電図の電位所見は、心エコーでの心筋の厚さや弁の所見と照らし合わせます。 |
| QRS幅の延長や左脚ブロック | 心室内の伝導異常を考えます。以前の心電図と比較し、心エコーの左室駆出率や症状と合わせて評価します。 |






リハビリでの確認の流れ
開始前は普段の状態と比べる
最新の12誘導心電図やモニター記録があれば、普段のリズム・心拍数と比べます。病棟では、最近の安静時の息切れ、横になると苦しくなる起坐呼吸、体重増加、浮腫、酸素投与量の変化も確認します。いつもより軽い動作で息切れが出る場合は、運動を始める前に病棟スタッフと情報を共有し、実施条件を確認します[1, 3]。
実施中は症状と循環の変化を一緒にみる
離床や歩行中に息切れ、胸部不快感、めまい、冷汗が出たら、心拍数とリズムに加え、血圧、SpO₂、呼吸状態を確認します。β遮断薬の使用中などは心拍数の上がり方が変わるため、自覚的なきつさや会話のしやすさ、実施した活動量も記録します[1, 3]。
新たな胸部圧迫感、強い呼吸困難、失神・意識の変化、症状を伴う急な血圧低下やリズム変化があれば、活動を中止して院内手順に沿って速やかに応援を要請します。モニター波形に体動ノイズが混じる場合も、患者さんの状態を先に確認します。必要に応じて医療チームが12誘導心電図で評価します[1, 3]。
終了後は回復の経過を記録する
中止した場合は、どの動作で、開始から何分後に症状が出たかを記録します。安静時との違い、中止後の回復時間、症状が残っているかを共有すると、次回の離床や運動負荷の判断に役立ちます。
病棟での報告例
「歩行開始2分で普段より強い息切れが出たため、中止しました。心房細動は以前からありますが、モニター心拍数は開始前80台から130台に上がり、血圧は118/68から94/60 mmHgに低下しました。座位で3分後に心拍数は100台となり、息切れは残っています。評価をお願いします」
数値は架空の報告例です。実施・中止の判断は、症状、安静時からの変化、医師の指示、施設の基準を合わせて行います。
まとめ
心不全患者の心電図を読むときは、まず普段の波形と比べ、次に波形の変化が症状や血圧の変化と重なるかを確認します。いつ、どの活動で、何が変わり、休息後にどう回復したかを伝えると、所見をリハビリの判断につなげられます。
参考文献
[1]JCS/JHFS 2025 Guideline on Diagnosis and Treatment of Heart Failure. Circ J. 2025. doi:10.1253/circj.CJ-25-0002
[2]2021 ESC Guidelines for the diagnosis and treatment of acute and chronic heart failure. Eur Heart J. 2021. doi:10.1093/eurheartj/ehab368
[3]JCS/JACR 2021 Guideline on Rehabilitation in Patients With Cardiovascular Disease. Circ J. 2023. doi:10.1253/circj.CJ-22-0234
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