既往歴とは?リハビリテーションで確認する内容と活用方法
リハビリテーションの評価では、今回の病気やけがに加えて、これまでに経験した病気や治療についても確認します。
過去の病気による影響が残っていたり、以前からの疾患に対する治療が続いていたりすると、現在の身体機能や生活動作、運動時の反応に関係することがあります。
この記事では、既往歴の意味と、リハビリテーションで確認する内容、その情報の活用方法について解説します。
既往歴とは
既往歴とは、これまでにかかった病気や経験したけが、手術などの履歴です。
たとえば、以下のような情報が含まれます。
- 脳卒中や心筋梗塞などの病歴
- 呼吸器疾患や糖尿病などの診断・治療歴
- 骨折や関節疾患の病歴
- 手術や入院の履歴
- 感染症の病歴
- 過去の病気やけがによる後遺症
すでに治癒した病気だけでなく、以前に診断され、現在も治療が続いている疾患についても確認します。治療中の疾患は、併存疾患として現在の状態を整理することも大切です。
病名だけでなく、発症時期、治療内容、後遺症、現在への影響まで確認することが、リハビリテーションに役立ちます。
現病歴との違い
現病歴は、今回の診療につながった病気や症状について、発症から現在までの経過を整理したものです。
一方、既往歴は、それ以前に経験した病気や治療の履歴です。
たとえば、今回の脳卒中の発症から入院、治療までの経過は現病歴にあたります。以前に発症した心筋梗塞や、過去の大腿骨骨折などは既往歴として確認します。
リハビリテーションで既往歴を確認する理由
現在の身体機能や生活動作を理解するため
現在みられる機能低下が、今回の疾患だけによるものとは限りません。
たとえば、以前の脳卒中による麻痺や、骨折後の関節可動域制限が残っていると、今回の発症前から歩行や日常生活に支障があった可能性があります。
既往歴と発症前の生活状況を確認することで、以前からの問題と、今回新たに生じた問題を整理しやすくなります。
安全な運動量を検討するため
呼吸器疾患、循環器疾患、代謝障害などは、運動時の身体反応に関係します。
そのため、既往歴を踏まえて、運動の強度・時間・頻度、休憩の取り方などを検討する必要があります。
ただし、病名だけで運動量を決めることはできません。現在の病状、検査結果、治療内容、医師の指示、実際の運動に対する反応を合わせて判断します。
感染予防に必要な情報を把握するため
感染症の病歴や現在の感染・保菌状況は、対象者への対応だけでなく、医療職や他の患者への感染伝播を防ぐためにも必要な情報です。
過去に感染したことがあるという情報だけで、現在も感染性があるとは判断できません。現在の症状や検査結果、治療状況、必要な感染対策を確認することが大切です。
既往歴で確認する主な内容
| 分類 | 病気・治療歴の例 | リハビリテーションで確認したいこと |
|---|---|---|
| 脳・神経疾患 | 脳卒中、パーキンソン病、末梢神経障害など | 麻痺、感覚障害、認知機能、発症前の動作能力 |
| 呼吸器疾患 | COPD、気管支喘息、間質性肺疾患など | 息切れ、酸素療法、運動時の呼吸状態、増悪歴 |
| 循環器疾患 | 心筋梗塞、心不全、不整脈、高血圧など | 病状の安定性、運動制限、血圧・脈拍の反応 |
| 代謝・内分泌疾患 | 糖尿病、甲状腺疾患など | コントロール状況、低血糖歴、合併症、治療内容 |
| 運動器疾患 | 骨折、変形性関節症、骨粗鬆症など | 疼痛、可動域制限、荷重制限、手術後の注意点 |
| その他の内科疾患 | 慢性腎臓病、肝疾患など | 全身状態、疲労、検査結果、治療に伴う注意点 |
| 感染症 | 結核、ウイルス性肝炎など | 治療歴、現在の感染性、必要な感染対策 |
| 手術・入院歴 | 人工関節置換術、心臓手術など | 手術部位、残存する機能障害、現在も必要な制限 |
このほか、薬剤やラテックスなどのアレルギー歴、過去の治療による有害事象も、安全な対応のために併せて確認します。
呼吸・循環器疾患と運動量の検討
呼吸器疾患がある場合
呼吸器疾患がある人では、運動によって息切れが強くなったり、酸素化が低下したりすることがあります。
確認したい情報には、次のようなものがあります。
- 普段の息切れと活動範囲
- 病状の安定性と最近の増悪・入院歴
- 酸素療法の有無と指示内容
- 吸入薬などの治療内容
- 運動時の呼吸数、SpO₂、自覚症状の変化
これらを踏まえ、短時間の運動と休憩を組み合わせるなど、対象者の反応に応じて運動量を調整します。
酸素投与については、指示された条件を確認したうえで実施します。
循環器疾患がある場合
心筋梗塞や心不全、不整脈などの病歴がある場合は、現在の心機能や病状の安定性を確認します。
運動前後・運動中の血圧や脈拍に加え、胸部症状、息切れ、動悸、めまい、疲労感なども観察します。
心血管疾患の運動療法では、個々の病状や運動能力に応じた運動処方と安全管理が必要です。運動強度だけでなく、実施時間や休憩、段階的な負荷の増やし方も検討します。
既往歴は、運動を一律に制限するためではなく、安全に実施できる条件を検討するための情報です。
代謝障害と運動量の検討
糖尿病などの代謝障害がある場合も、現在のコントロール状況や治療内容を踏まえて運動量を検討します。
特に糖尿病では、インスリンや一部の血糖降下薬の使用、食事の摂取状況、運動の強度・時間などによって、低血糖の危険性が変わります。運動中だけでなく、運動後に生じる低血糖にも注意が必要です。
確認したい内容は、以下のとおりです。
- 血糖のコントロール状況
- 低血糖の既往と、そのときの症状
- 薬剤の種類と使用時間
- 食事の摂取状況と運動する時間帯
- 網膜症、腎症、神経障害などの合併症
- 足部の傷や皮膚の状態
代謝障害という病名だけで判断せず、必要な検査や合併症の評価、医師の指示を確認して、運動内容や時間、観察方法を調整します。
感染の情報を感染予防につなげる
リハビリテーションでは、対象者の身体に触れたり、歩行器や訓練台などの物品を共有したりする機会があります。
そのため、感染に関する情報は、対象者本人、医療職、他の患者を守るためにも重要です。
過去の感染歴と現在の状態を分けて確認する
感染症の病歴がある場合は、次の点を確認します。
- いつ感染し、どのような治療を受けたか
- 現在も感染症が活動性の状態にあるか
- 保菌状態について把握されているか
- 現在、どのような感染対策が指示されているか
既往歴に病名が記載されていても、治療が終了している場合や、現在は感染性がない場合があります。過去の病名だけで、隔離やリハビリテーションの制限を決めないことが大切です。
標準予防策を基本にする
感染症が判明しているかどうかにかかわらず、すべての患者への対応で標準予防策を実施します。
標準予防策には、手指衛生、曝露の危険性に応じた個人防護具の使用、共有する器具の適切な清掃・消毒などが含まれます。
さらに、感染が疑われる場合や確認されている場合は、感染経路に応じて接触・飛沫・空気予防策を追加します。具体的な対応は、医師や看護師、感染対策担当者と共有し、施設の方針に沿って実施します。
感染情報は、安全な対応に必要な範囲で共有し、本人のプライバシーにも配慮します。
既往歴の情報収集の方法
既往歴は、本人や家族からの聞き取りに加え、診療録、紹介状、退院時サマリーなどから確認します。服薬情報も、治療中の疾患を把握する手がかりになります。
聞き取りでは、病名だけでなく、生活への影響を具体的に尋ねます。
たとえば、次のような質問が役立ちます。
- 「これまでに、大きな病気や手術をしたことはありますか」
- 「今回の発症前から、歩きにくさや息切れはありましたか」
- 「現在も通院や治療を続けている病気はありますか」
- 「運動について、医師から注意されていることはありますか」
- 「以前の病気による症状は、今も残っていますか」
本人の記憶が曖昧な場合や、情報に食い違いがある場合は、記録や他職種への確認を行います。不明な情報は推測で補わず、確認が必要な事項として整理します。
既往歴を評価・計画に活用する
収集した既往歴は、現在の評価結果と結び付けて活用します。
たとえば、以前の骨折による可動域制限があれば、立ち上がりや歩行への影響を確認します。心不全や呼吸器疾患があれば、活動時の症状と回復の様子を観察し、運動量や休憩を検討します。糖尿病があれば、治療内容や食事との関係を踏まえて実施時間や観察項目を整理します。
「どの病気を経験したか」に加えて、「その情報が、現在の評価やリハビリテーションにどう関係するか」を考えることが重要です。
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既往歴に加えて、画像検査の情報も確認し、病変や組織の状態を評価につなげましょう。
まとめ
既往歴は、過去の病気や治療の履歴から、現在の身体機能や生活動作、安全なリハビリテーションの条件を理解するための情報です。
呼吸・循環器疾患や代謝障害では、現在の病状や治療内容を確認し、運動の強度・時間・頻度、休憩などを検討します。
感染に関する情報は、過去の感染歴と現在の感染・保菌状況を区別し、標準予防策と必要な感染経路別予防策につなげます。
病名の一覧で終わらせず、現在への影響を整理することで、既往歴を評価や計画立案に活用できます。
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