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心電図の異常波形の見方|心房細動・期外収縮・ST変化をどう読む?

 12誘導心電図でいつもと違う波形を見つけたら、まず「どこが、どのように変わったか」を言葉にしてみましょう。「脈が不規則」「QRS波が広い」「下壁誘導でSTが上がっている」と整理すると、過去の心電図と比較しやすく、医師や看護師にも変化を伝えやすくなります。

 この記事では、成人の標準12誘導心電図を中心に、PT・OT・STが押さえておきたい異常波形を解説します。前の記事「12誘導心電図の見方と読む順番」で確認したリズム、P波・PQ時間、QRS波、ST部分・T波、QT時間を手がかりに読み進めます。

異常波形を見つけたときの確認順

 患者さんの状態を先に見ます。新たな胸部症状、冷汗、失神、意識変化、血圧低下などがあれば、リハビリを中断し、心電図を読み終える前に院内手順に沿って応援を要請します。状態が安定していれば、記録条件と過去波形を確認し、以下の順で変化を整理します。[1–4]

記録の乱れも確認する

 体動や筋電図の混入、電極の接触不良で、不整脈のように見えることがあります。状態が安定している場合は、表示心拍数を実際の脈拍と照らし合わせ、別の誘導でも同じ変化があるか、電極が浮いていないかを確認します。[4]

心拍数とリズムの異常

心房細動

 典型例では、はっきりしたP波が繰り返し現れず、R–R間隔が不規則になります。不規則な脈は期外収縮などでも生じるため、R–R間隔とP波をセットで見ます。既知の心房細動がある患者さんでは、普段の心拍数、今回の心拍数、動悸や息切れの有無を確認すると、今回の変化を伝えやすくなります。[1, 5]

上室性期外収縮と心室性期外収縮

 期外収縮は、次の拍を予想した位置より早く拍が出る所見です。上室性期外収縮のうち、心房期外収縮では、早く出たP波に続いて通常は狭いQRS波が現れます。P波が直前のT波に重なると、T波の形が変わって見えることがあります。心室性期外収縮(PVC)では、先行するP波と伝導関係のない、幅広く形の異なるQRS波が早めに現れるのが典型です。[1]

 所見を共有するときは、単発か連続か、安静時にもあるか、動作に伴って増えたか、症状や血圧変化があるかを添えます。幅広いQRS波の頻拍が続く場合は心室頻拍も考え、患者さんの状態を確認し、速やかに院内手順に沿って対応します。[3]

P波とQRS波の関係から見る房室ブロック

 PQ時間(PR間隔)はP波の始まりからQRS波の始まりまでです。房室ブロックを読むときは、P波の後にQRS波が続くか、続く場合はPQ時間がどう変化するかを見ます。[1, 6]

 P波2回につきQRS波が1回出る2対1房室ブロックでは、その波形だけでMobitzⅠ型かⅡ型かを区別できません。新たな徐脈に失神、意識変化、血圧低下などを伴うときは、緊急対応を優先します。[3, 6]

 見比べてほしいのは、Ⅱ度のMobitzⅠ型ではPQ時間が徐々に延びてからQRS波が抜け、MobitzⅡ型ではPQ時間が一定のままQRS波が抜ける点です。Ⅲ度では、P波とQRS波がそれぞれの周期で現れる様子を示しました。

QRS波の幅と形の異常

幅広いQRS波

 成人でQRS幅が0.12秒(120 ms)以上なら、脚ブロックや心室ペーシングなどを考えます。普段の拍がそろって幅広いのか、早く出た拍だけ幅広いのかを確認しましょう。幅広いQRS波が連続して心拍数も速い場合は、幅広いQRS波を伴う頻拍として区別し、前の項で述べたように対応します。[1, 3]

 狭いQRS波と幅広いQRS波を並べ、QRS波の始まりから終わり(J点)までを矢印で示しました。成人では0.12秒(120 ms)以上が幅広いQRS波の目安です。

Q波とR波の変化

 Q波はQRS波の最初に出る下向きの波です。誘導によっては正常でも小さなQ波が見られます。幅や深さ、関連する誘導への広がりから病的Q波が疑われる場合は、心筋梗塞の既往などを確認するきっかけになります。胸部誘導でR波の増高が乏しいときも、電極位置の影響を含めて過去波形と比べます。[1, 7]

 小さく狭いQ波と、幅が広く深いQ波を並べました。Q波がどの誘導に出ているかも確認します。

ST部分とT波の異常

ST上昇とST低下

 ST部分はQRS波の終わりからT波へ移る区間です。ST上昇は、QRS波の終点であるJ点が基線からどれだけ上がっているかを確認します。急性冠症候群が疑われる状況で、関連する複数の誘導に新たなST上昇があれば、速やかな評価が必要です。下壁を反映するⅡ・Ⅲ・aVFのように、関連する誘導をまとめて確認します。ST上昇の判定基準は誘導で異なり、V2・V3では年齢や性別も考慮します。[2]

 ST上昇は早期再分極や心膜炎などでも見られます。ST低下は心筋虚血の手がかりの一つですが、心室肥大や伝導異常などでも生じます。どの誘導で変化したか、過去からあるか、症状と同じ時間に出たかを合わせて確認します。初回の心電図で明らかなST上昇がなくても、急性冠症候群が疑われる症状があれば速やかに報告します。[1, 2]

T波の陰転と増高

 T波の向きは誘導によって異なり、aVRなどでは下向きでも正常です。関連する複数の誘導で新たに陰転した場合は、症状やST部分の変化も確認します。高く尖ったT波が目立つ場合には、高カリウム血症なども考え、採血結果や経過を照合します。[1, 2]

QT延長とQTc

 QT時間はQRS波の始まりからT波の終わりまでです。心拍数の影響を補正した値をQTcと呼びます。自動計測で延長が表示されたら、補正式、波形の質、以前の値、薬剤変更やカリウム・マグネシウムなどの情報を確認します。QTcが500 msを超える値は、薬剤性などのQT延長で危険な心室性不整脈を警戒する目安の一つです。[1, 8]

リハビリ中に変化を見つけたとき

 モニター心電図は、動作中の心拍数やリズムの変化、症状が出た時刻の波形を確認するのに役立ちます。誘導数が限られるため、虚血が疑われるときは、標準12誘導での評価が必要になります。患者さんに症状や循環不安定があれば、電極の調整や記録の取り直しより初動を優先します。[2–4]

歩行練習中に胸部圧迫感と冷汗が出た例

 歩行を中断して転倒を防ぎ、すぐに応援を呼びます。患者さんの意識・呼吸・循環を確認し、院内手順に従います。反応がなく、普段どおりの呼吸がなく、医療者が10秒以内に確実な脈拍を確認できない場合は、心停止として胸骨圧迫を開始し、AED・除細動器を手配します。[3, 9]

 報告例「歩行開始3分後の10時15分に胸部圧迫感と冷汗が出ました。歩行は中断しました。意識は清明で、血圧は開始前126/72 mmHgから92/58 mmHgに低下しています。モニターでは安静時と比べてST部分が下がって見えます。症状は続いています」

 記録には、発生時刻、姿勢・活動内容、症状、前後のバイタルサイン、観察した誘導、波形の持続時間、実施した対応と報告先を残します。症状が治まった場合も、その時刻と経過を共有し、再開は医療チームの指示と院内基準に沿って判断します。

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参考資料

[1]MSDマニュアル プロフェッショナル版 心電図

[2]ESC 急性冠症候群ガイドライン(2023)

[3]AHA 成人二次救命処置ガイドライン(2025)

[4]AHA 院内心電図モニタリングの実践基準(2017)

[5]ESC 心房細動ガイドライン(2024)

[6]MSDマニュアル プロフェッショナル版 房室ブロック

[7]第4次心筋梗塞普遍的定義(2018)

[8]AHA・ACCF 院内でのトルサード・ド・ポワント予防(2010)

[9]AHA 成人一次救命処置ガイドライン(2025)

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