脳梗塞の患者さんの診療録に「心房細動あり」と記載されていたら、どの記録で確認されたのか、脳梗塞の原因としてどう評価されたのか、再発予防としてどのような治療が行われているのかを確認します。心電図は記録中の心臓のリズムを示します。脳梗塞の病型を理解するには、脳・血管画像や心臓の検査、発症前後の経過と照らし合わせることが大切です。
心房細動で脳梗塞が起こる仕組み
心房細動(atrial fibrillation、AF)では、心房の電気的な興奮がばらばらになり、心房全体でそろって収縮する力が弱くなります。その結果、左心房の一部である「左心耳」という袋状の場所に血液がよどみ、血栓ができやすくなります。血栓が心臓から流れ出て脳の動脈を詰まらせると、心原性脳塞栓症という脳梗塞を起こします。[1、2]
心房細動があっても動悸を自覚しないことがあります。脳梗塞をきっかけに行った心電図や、その後のモニタリングで初めて見つかることもあります。[1、2]
心房細動の心電図で見るポイント
まずR波から次のR波までの間隔(RR間隔)を数拍にわたって見ます。典型的な心房細動では、短い間隔と長い間隔が規則性なく並びます。次に、各QRS波の前に同じ形のP波が規則的に現れているかを確認します。心房細動では、この規則的なP波が確認できません。基線に細かな揺れ(細動波、f波)が見えることもありますが、目立たない記録もあります。[1]
期外収縮でもRR間隔が乱れます。また、体動や電極の接触不良によるノイズで基線が揺れることがあります。脈の不整やモニターの自動表示は手がかりとして扱い、波形の保存時刻、12誘導心電図、医師の判読結果を確認します。[1]

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その日の心電図が洞調律だったとき
発作性心房細動では、心房細動が出ている時間と洞調律に戻っている時間があります。外来や入院時に取った短時間の心電図では、たまたま発作が記録されないことがあります。過去の心電図、入院中の連続モニター、ホルター心電図などの結果と、いつ心房細動が確認されたかを見ます。原因が明らかでない脳梗塞では、病状や検査結果に応じて、より長い心電図モニタリングが検討されます。[1]
心電図と一緒に確認したい診療録
| 確認する資料 | 見る内容 |
| 心電図・モニター | 心房細動を確認した記録と日時、発作性かどうか、安静時・活動時の心拍数。 |
| 脳・血管画像と診断記録 | CT・MRIの梗塞部位、血管の閉塞や狭窄、医師が記載した脳梗塞の病型と根拠。 |
| 心エコー | 左房径や弁膜症、心機能。経食道心エコーが行われた場合は、左心耳血栓などの所見。 |
| 処方・経過記録 | 抗凝固薬の種類、実際の服用・休薬状況。心拍数に影響する薬の変更や、出血・転倒歴。 |

心房細動と脳梗塞が併存していても、頸動脈や頭蓋内動脈の病変など、ほかの原因が関与する場合があります。診療録に「心原性疑い」と記載されている段階では、疑いとして共有し、病型が確定しているかを確認します。[1、3]
抗凝固薬を確認するときのポイント
心房細動に伴う血栓塞栓症の予防には、患者さんの状態に応じてDOAC(直接作用型経口抗凝固薬)やワルファリンが使われます。抗血小板薬と抗凝固薬は薬歴上で区別します。薬の有無に加え、休薬や再開の指示、休薬理由も確認します。脳梗塞直後の開始・再開時期は、梗塞の大きさや出血性変化などを踏まえて医師が判断します。[1、3、4]
抗凝固薬を使用中の患者さんが転倒した場合は、頭部打撲の有無や状況を確認し、頭を打った可能性があれば、症状が乏しくても速やかに所属先の手順に沿って医療職へ連絡し、受診判断につなげます。[8]
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リハビリ前と実施中に確認すること
普段の麻痺・失語の程度と、離床時の心拍数や血圧、息切れの出方を把握しておくと、その日の変化を伝えやすくなります。既知の心房細動では、医師の活動指示と普段の反応を照合します。運動中は心拍数に加え、血圧、動悸、息切れ、めまい、運動全体のきつさを見ます。脈が不規則なときやβ遮断薬使用中は、心拍数だけで負荷を判断せず、症状やBorg RPEなども併用します。[5]
急性期では離床の指示と発症後の経過を確認します。回復期・地域包括ケア・療養病棟では、病棟スタッフと普段の動作や会話の状態を共有します。在宅や老健・デイケアでは、本人や家族、介護スタッフから普段の様子と服薬情報を確認します。
急に麻痺や言葉の変化が出たとき
顔の片側が下がる、片腕が上がりにくい、急に言葉が出ない・ろれつが回らないといった変化があれば、脳卒中を疑います。以前から麻痺や失語がある方では「いつもの状態から急に悪化したか」を確認します。突然の視野の変化や立てないほどのふらつきも、脳卒中を疑う手がかりです。[6]
その場で訓練を中止して安全を確保します。病棟・老健では直ちに院内施設内の緊急連絡手順に従います。在宅やデイケアなどで脳卒中が疑われる場合は、すぐに119番へ通報し、所属先の緊急連絡手順に沿って関係者に共有します。症状を見つけた時刻と、最後に普段どおりだったことを確認できた時刻は分けて伝えます。症状が短時間で消えても、速やかに報告します。[3、6、7、9]
報告例
「10時10分の移乗練習中に、急に右腕が上がりにくくなり、返答が出なくなりました。10時05分には普段どおり右手で手すりを握り、会話できていました。訓練は中止しています。心房細動の既往があり、抗凝固薬の服用歴があります」
まとめ
心房細動を確認した記録、脳梗塞の病型と根拠、抗凝固薬の服用状況を分けて整理します。リハビリでは普段との違いをとらえ、急な神経症状が出たときは、発見時刻と最後に普段どおりだった時刻を伝えます。
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参考資料
[1]欧州心臓病学会(ESC) 2024年 心房細動管理ガイドライン
[2]国立循環器病研究センター 知っておきたい循環器病176
[3]日本脳卒中学会 脳卒中治療ガイドライン2021[改訂2025]
[4]日本循環器学会・日本不整脈心電学会 2024年 不整脈治療フォーカスアップデート
[5]日本循環器学会ほか 2021年 心血管疾患におけるリハビリテーション
[7]米国心臓協会・米国脳卒中協会 2026年 急性期脳梗塞ガイドライン
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