Borg RPEスケール|運動全体のきつさを評価する
運動中の負担を把握するときには、心拍数や血圧などの数値に加えて、本人が「どのくらいきついと感じているか」を確認することが大切です。
Borg RPEスケールは、運動中に感じるきつさを6~20の数値で表す、自覚的運動強度の評価尺度です。
歩行練習や自転車エルゴメータなどの運動療法で、負荷の調整や経過の確認に活用します。
この記事では、Borg RPEスケールの基本、評価方法、結果の見方、修正Borgスケールとの違いを解説します。
Borg RPEスケールとは
Borg RPEスケールは、Gunnar Borgが開発した、運動に伴う主観的なきつさを数値化する尺度です。
RPEは、Rating of Perceived Exertionの略で、日本語では「自覚的運動強度」と呼ばれます。
基本となる尺度は6~20で構成され、数値が大きいほど、本人が感じる運動のきつさが強いことを示します。
何を評価するのか
本記事では、Borg RPEスケールを用いて、運動全体として感じるきつさを評価する方法を扱います。
息切れだけに注目するのではなく、脚の疲労感や身体に力を入れる感覚なども踏まえて、運動全体の負担を回答してもらいます。
全身のきつさを尋ねるのか、脚など特定の部位のきつさを尋ねるのかによって回答が変わるため、評価する対象をあらかじめ明確にしておきます。
Borg RPEスケールの数値の意味
Borg RPEスケールは、6を運動によるきつさがない状態、20を最大限のきつさとして評価します。
代表的な目安として、11は軽い運動、13はややきつい運動、15はきつい運動に相当します。実際の測定では、使用する正規の日本語版に記載された言語表現を確認してください。
言葉が付いている数値だけでなく、その間の数値も選択できます。評価者が回答を決めるのではなく、本人の感覚に合う数値を選んでもらいます。
なぜ6~20なのか|心拍数との関係
Borg RPEスケールが6~20で構成されているのは、開発時に運動中の心拍数との対応を意識して設計されたためです。
「RPEの値を10倍すると心拍数のおおよその目安になる」と説明されることがありますが、RPEから実際の心拍数を正確に計算できるわけではありません。
年齢、体力、疾患、服薬などによって、心拍数と自覚的運動強度の関係は変わります。
そのため、「RPEが13だから心拍数は130回/分」と判断せず、心拍数は実測し、本人のきつさとは別の情報として確認します。
Borg RPEスケールの評価方法
1.運動前に尺度の使い方を説明する
運動を始める前に尺度を提示し、数値と言葉の意味を説明します。
確認しておきたい点は、次のとおりです。
- 評価するのは、今行っている運動のきつさであること
- 本記事の方法では、運動全体のきつさを回答すること
- 周囲の人と比較せず、自分の感覚で選ぶこと
- 言葉の間にある数値も選べること
初めて使用する場合は、軽い運動で回答を練習するなど、尺度に慣れる機会を設けます。正式な評価では、尺度に付属する説明文に沿って実施してください。
2.運動中に本人の回答を確認する
尺度を見てもらい、現在の運動全体のきつさに合う数値を選んでもらいます。
評価者は「13くらいですよね」などと答えを誘導せず、本人が選んだ値を記録します。
息切れや脚の疲労感も個別に評価する場合は、全身のRPEとは質問を分け、何を評価した数値なのかを明確にします。
3.評価するタイミングをそろえる
経過を比較する場合は、評価するタイミングをそろえます。
例えば、次のように設定します。
- 歩行開始から3分後
- エルゴメータの各負荷段階の終了前
- 運動終了直前
- 運動終了直後
休憩後では運動中のきつさが変化しているため、「運動中の回答」と「休憩後の回答」を区別して記録することが大切です。
4.運動条件と身体反応を一緒に記録する
RPEの数値だけでは、どの程度の運動に対する回答だったのか判断できません。
運動の種類、負荷量、時間に加えて、心拍数、血圧、必要に応じたSpO₂、自覚症状などを併記します。
結果の見方と運動療法への活用
運動負荷を調整する
RPEは、本人の感覚を踏まえて、歩行速度やエルゴメータの負荷などを調整する際に役立ちます。
例えば、日本循環器学会・日本心臓リハビリテーション学会の2021年改訂版ガイドラインでは、運動処方における自覚的運動強度の利用が示されています。心不全の有酸素運動では、RPE 11~13などが強度設定の目安として用いられます。
ただし、目標とするRPEは、疾患、病期、運動の目的、運動負荷試験の結果などに応じて設定します。
すべての対象者に同じ数値を当てはめたり、目標範囲内という理由だけで運動の安全性を判断したりすることはできません。
同じ運動に対する負担の変化を確認する
同じ速度・同じ時間の歩行で、以前よりRPEが低くなった場合は、その運動をより少ないきつさで行えるようになった可能性があります。
一方で、RPEは体調、疲労、不安、尺度への慣れなどにも影響されます。単独で改善を断定せず、歩行距離や心拍数などの変化と合わせて解釈します。
自主練習の自己管理に活用する
本人が運動のきつさを数値で表せるようになると、自主練習時の負荷調整にも活用できます。
指導では、目標とするRPEとともに、休憩が必要な症状や運動を中止する条件を具体的に伝えます。
修正Borgスケールとの違い
Borg RPEスケールと修正Borgスケールは、どちらも主観的な感覚を数値化しますが、尺度の構成が異なります。
| 比較項目 | Borg RPEスケール | 修正Borgスケール |
|---|---|---|
| 主な数値範囲 | 6~20 | 一般的に0~10 |
| 臨床での代表的な用途 | 運動全体のきつさの評価 | 息切れや下肢疲労などの評価 |
| 記録のポイント | 6~20の尺度を使用したことを明記する | 使用した版と、評価した症状を明記する |
Borg CR10スケールは、息切れだけでなく、運動のきつさや疲労、痛みなどにも使用できる尺度です。また、「修正Borgスケール」という名称で流通している表には複数の表現があるため、使用する版を確認する必要があります。
したがって、RPEは全身専用、修正Borgは息切れ専用と厳密に分けられるわけではありません。
臨床では、尺度の種類と評価対象を明確にして使い分けます。両者の数値を単純に換算することは避けてください。
記録の例
以下は、記録方法の例です。
平地歩行を一定速度で5分間実施。終了直前の全身RPEは13/20。心拍数は安静時76回/分、歩行終了時102回/分。SpO₂は安静時97%、歩行終了時96%。胸痛・めまいなし。
息切れを別に評価した場合は、次のように追記します。
息切れは修正Borgスケールで3。全身RPEとは別に聴取した。
「Borg 3」「Borg 13」とだけ記録すると、尺度や評価対象が伝わりにくくなります。
「全身RPE 13/20」「息切れ:修正Borg 3」のように、何をどの尺度で評価したのかを記載しましょう。
評価時の注意点
本人による理解と回答が必要
RPEは本人の感覚を評価する尺度です。
数値や言葉の理解が難しい場合、あるいは意思表示に制限がある場合は、回答の妥当性を慎重に判断します。発語が難しくても、尺度を理解して指差しで選べる場合があります。
本人が回答できないときに、評価者の推測を本人のRPEとして記録することは避けます。
運動耐容能を直接測定する検査ではない
RPEからわかるのは、ある運動に対して本人が感じたきつさです。
最大酸素摂取量や歩行可能距離を直接測定するものではないため、運動耐容能を把握する際は、歩行試験や運動負荷試験などと組み合わせます。
数値が低くても身体反応を確認する
RPEが低くても、血圧異常、不整脈、酸素化の低下などがないとは限りません。
胸痛、めまい、冷汗、普段と異なる呼吸困難などが出現した場合は、RPEの数値にかかわらず運動を中断し、状態を確認します。運動の継続・中止は、疾患別の基準や個別の指示に基づいて判断します。
参考文献・資料
- Borg GA. Psychophysical bases of perceived exertion. Med Sci Sports Exerc. 1982;14(5):377–381.
PubMedで確認する - 日本循環器学会・日本心臓リハビリテーション学会.2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン.
ガイドラインを確認する - BorgPerception. Scale administration.
尺度の実施方法を確認する
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