同じ病気や身体機能の状態でも、希望する生活や大切にしていることは一人ひとり異なります。
仕事を再開したい人、家族との生活を大切にしたい人、趣味を続けたい人など、リハビリテーションの目標には、その人の生活歴や価値観が関わります。
こうした本人の背景を理解するために確認するのが「個人因子」です。
この記事では、個人因子の基本と、評価・記録のポイントを解説します。
個人因子とは?
ICF(国際生活機能分類)では、個人因子は環境因子とともに背景因子として位置づけられます。本人の生活や人生の背景に関わるもので、年齢、生活習慣、経験、対処の仕方などが例として挙げられます。
ただし、個人因子には社会的・文化的な多様性があるため、ICFでは統一された分類コードは設けられていません。
以下で紹介する項目は、臨床で本人を理解するための整理例です。ICFの公式な個人因子分類ではありません。
個人因子を評価する目的
個人因子を確認する目的は、本人に合った目標や支援方法を考えることです。
例えば、これまで自分で家事を担ってきた人にとっては、家事の再開が重要な目標になることがあります。また、説明を読んで理解したい人と、実際に動いて確かめたい人では、伝え方を工夫できる場合があります。
本人が何を大切にしているかを理解することで、リハビリテーションの内容と生活上の希望を結びつけやすくなります。
個人因子の評価で確認する項目
| 評価する視点 | 確認する内容の例 |
|---|---|
| 生活歴 | これまでの仕事、家庭での役割、大切な経験 |
| 生活習慣 | 一日の過ごし方、運動習慣、余暇の過ごし方 |
| 関心・好み | 好きな活動、取り組みやすい課題、苦手なこと |
| 価値観 | 大切にしていること、支援を受ける際の考え |
| 希望・優先順位 | 再開したいこと、今困っていること、優先したい目標 |
| 対処の仕方 | 困ったときの相談方法、これまで役立った工夫 |
| 説明や学習の好み | 理解しやすい説明、練習方法、確認の仕方 |
年齢や職歴などの情報だけで、本人の希望や能力を判断しないことが重要です。背景情報を手がかりにしながら、本人の言葉で確認します。
個人因子を評価する方法
本人の言葉を聞く
生活場面に沿って質問すると、本人が大切にしていることを確認しやすくなります。
- これまで、どのような生活をしてきましたか。
- 一日の中で楽しみにしていることは何ですか。
- これからも続けたいことはありますか。
- リハビリで、まず取り組みたいことは何ですか。
- 支援を受けるときに、気になることはありますか。
- これまで困ったときに役立った方法はありますか。
行動と状況を合わせて確認する
練習への反応や取り組み方も参考になりますが、行動だけで本人の性格や意欲を決めつけないようにします。
練習を断った背景には、疼痛、疲労、不安、説明の理解しにくさ、時間帯の問題などがあるかもしれません。本人に理由を確認し、必要な評価につなげます。
時間をかけて確認する
初回の面談だけでは、希望を言葉にできないこともあります。
関係を築きながら確認し、身体状況や生活の変化に応じて、希望や優先順位を見直します。
心身機能・環境因子との違い
本人に関する情報を、すべて個人因子にまとめるわけではありません。
疼痛、認知機能、感情機能などは、心身機能としての評価が必要です。家族の支援、住宅、職場の配慮などは、環境因子として整理します。
| 情報の例 | 整理するときの考え方 |
|---|---|
| 膝が痛くて練習できない | 疼痛を評価し、動作への影響を確認する |
| 説明を理解しにくい | 伝え方や状況を確認し、必要に応じて認知・言語機能を評価する |
| 家族の付き添いが得られない | 環境因子として支援体制を確認する |
| 「家族の食事を自分で作りたい」 | 本人の価値観・希望を把握し、参加の目標につなげる |
| 困ったときに休憩を入れる習慣がある | 本人の対処の仕方として確認する |
情報によっては、複数の側面から捉える必要があります。分類することだけを目的にせず、支援にどう役立つかを考えます。
個人因子を記録するときのポイント
記録では、本人の発言、観察した事実、療法士の解釈を分けます。
| 避けたい記録 | 具体的な記録の例 |
|---|---|
| 意欲がない | 歩行練習の提案に「今日は膝が痛いので休みたい」と発言した |
| 頑固である | 杖の使用に対し「人に見られるのが気になる」と発言した |
| 依存的である | 更衣開始前に介助を求めた。自分で行いにくい理由を確認する必要がある |
| 積極的である | 自宅での運動方法について本人から質問があった |
否定的な言葉で本人を固定的に評価すると、支援者間の理解にも影響します。具体的な場面や発言を記録し、背景を検討しましょう。
評価結果を目標につなげる
例えば「家族の食事を作る役割を続けたい」という希望があれば、その希望を中心に必要な条件を整理します。
| 項目 | 整理の例 |
|---|---|
| 本人の希望 | 家族の食事づくりに関わりたい |
| 大切にしていること | 家庭での役割を続けること |
| 確認する条件 | 立位や座位での作業、手の使用、疲労、台所環境 |
| 支援の例 | 工程を分ける、座位で行う、家族と分担する |
| 再評価 | 希望する形で関われたか、負担や満足度はどうか |
個人因子の評価は、その人らしい生活を考えるための手がかりになります。本人の希望を確認しながら、心身機能・活動・参加・環境因子の評価と合わせて活用しましょう。
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