ACE-IIIは、注意・見当識、記憶、言語流暢性、言語、視空間機能を確認できる認知機能検査です。総得点に加えて領域別の結果を得られるため、詳しい評価や生活場面の観察につなげる情報として活用できます。
この記事では、ACE-IIIの実施方法、配点、日本語版の研究で報告された判定の目安と、リハビリテーションでの見方を解説します。
ACE-IIIとは
ACE-IIIはAddenbrooke’s Cognitive Examination IIIの略です。満点は100点で、低得点ほど認知機能の低下を示す方向の尺度です。[1]
ACE、ACE-R、ACE-III、短縮版のM-ACEは区別して扱います。名称が似ていても、課題や配点、基準を混ぜることはできません。
評価領域と配点
| 領域 | 満点 | 確認する内容の概要 |
| 注意・見当識 | 18点 | 時間・場所の把握、注意など |
| 記憶 | 26点 | 記銘、再生、再認など |
| 言語流暢性 | 14点 | 条件に沿った語の想起 |
| 言語 | 26点 | 理解、呼称、復唱、読み書きなど |
| 視空間機能 | 16点 | 図形の構成や視覚情報の処理など |
| 合計 | 100点 | 全体の成績 |
日本語版の検証研究でも、この5領域の配点が示されています。[1]
ACE-IIIの評価方法
1.正式な日本語版を準備する
本人の言語・文化的背景に対応した正式な版と採点資料を使用します。英語の課題をその場で訳したり、難しそうな課題を独自に差し替えたりすると、検証された検査と条件が変わります。
評価票、筆記具、提示資料を準備し、公式の実施・採点ガイドで手順を確認します。[2]
2.実施条件を確認する
静かな環境で、聴力、視力、覚醒、疲労、上肢機能、失語などを確認します。教育歴や年齢も解釈に関わるため記録します。日本語版研究では、年齢と教育年数が得点に影響したと報告されています。[1]
3.規定の順序で実施する
教示、提示回数、制限時間、再生までの順序などに従います。記憶課題は途中にほかの課題を挟むため、自由に順番を変更しないようにします。規定外のヒントは与えません。[2]
4.総得点と領域別得点を記録する
総得点だけでなく、各領域の得点、回答の特徴、実施できなかった理由を記録します。中断や非標準的な補助があった場合は、標準条件での得点と同じように解釈しないようにします。
結果の見方
日本語版研究の判定目安
Takenoshitaらの2019年の日本語版研究では、次の境界が報告されています。[1]
| 研究上の判別目的 | 境界 | 低得点側の目安 |
| MCI群と対照群の判別 | 88/89点 | 88点以下 |
| 認知症群と非認知症群の判別 | 75/76点 | 75点以下 |
「88/89」は88点と89点の間に境界を置くという意味です。この結果から76~88点を一律にMCIと判定したり、89点以上なら問題なしと断定したりすることはできません。研究対象は大学病院の物忘れ外来の集団で、認知症群は非常に軽度から軽度の症例が中心でした。[1]
英語版の公式ガイドでは、認知症が疑われる目安として88点や82点のカットオフが紹介されています。[2] 日本語版研究と対象・目的が異なるため、どの資料の基準を使うか明記します。
領域別得点を読む
各領域の満点は異なります。例えば記憶と視空間機能の生の得点をそのまま比較し、「数字が小さい領域ほど悪い」とは判断できません。
各領域でどの課題が難しかったかを確認し、必要に応じて詳しい検査を追加します。領域のプロフィールだけで認知症の病型や病巣を確定することもできません。
リハビリテーションでの活用
次の表は、追加観察や支援を考える実務上の例です。
| 気になった領域 | 生活場面で確かめること |
| 注意・見当識 | 複数の情報が入ると手順が途切れるか |
| 記憶 | 新しい練習内容を時間を置いて再現できるか |
| 言語 | 口頭説明、文字、実演のどれが理解しやすいか |
| 視空間機能 | 物品探索や衣服の向きの判断で困るか |
評価結果は仮説として扱い、本人に合った説明や環境調整を実際に試します。
記録例
記録例:ACE-III日本語版78/100点。注意・見当識15/18、記憶16/26、言語流暢性9/14、言語24/26、視空間14/16。年齢・教育歴・実施条件を併記。得点のみでは診断せず、生活機能と医師の評価を合わせて検討する。
評価時の注意点
急な認知・注意の変化がある場合は、体調やせん妄などを確認します。再検査では、間隔や使用版、疲労、学習による慣れも記録します。評価票の転載やアプリ化は、公式の利用条件を確認してください。
まとめ
ACE-IIIは、総得点と領域別の結果を合わせて読む検査です。日本語版に対応する資料を使い、判定の目安を診断と混同せず、詳しい評価と生活支援につなげましょう。
参考資料
[1] Takenoshita S, et al. Validation of Addenbrooke’s cognitive examination III for detecting mild cognitive impairment and dementia in Japan. BMC Geriatr. 2019;19:123. https://doi.org/10.1186/s12877-019-1120-4
[2] University of Sydney. UK ACE-III and M-ACE Administration and Scoring Guide, 2017. https://www.sydney.edu.au/content/dam/corporate/documents/brain-and-mind-centre/june19/ACE-III%20ScoringUK2017.pdf
資料確認日:2026年10月9日。
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