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心エコーの数値と略語の見方|EF・拡張機能・弁膜症・右心系を整理

 心エコーの報告書には、EF、LVDd、E/e′、TRPGなど、多くの略語と数値が記載されています。すべてを同時に覚えるよりも、「何を評価する指標なのか」で分類すると、結果を理解しやすくなります。

 この記事では、リハビリ職が報告書を読む際に知っておきたい主な指標を、収縮機能、心臓の大きさ、拡張機能、弁膜症、右心系に分けて解説します。

数値を読む前に確認したいこと

 最初に検査日と総合所見を確認します。過去の検査結果は、現在の病状を十分に反映していない場合があります。

 参考範囲を外れたこと、病気があること、運動を中止すべきことは、それぞれ別の判断です。 数値は、症状、診察所見、ほかの検査と合わせて読みます。

1.左室の収縮機能を見る指標

LVEF/EF:左室駆出率

 LVEF(Left Ventricular Ejection Fraction)は、拡張末期の左室内の血液のうち、1回の収縮で送り出された割合です。

LVEF(%)=(EDV-ESV)÷EDV×100

 例えばEDVが120mL、ESVが48mLなら、LVEFは60%です。EF60%は「心臓が正常の60%しか働いていない」という意味ではありません。

 ASE/EACVIの2015年指針では、二次元・二断面の容積法によるLVEFの参考範囲は、男性52~72%、女性54~74%です。これは当該資料・測定法の参考範囲であり、施設の参考値や別の測定法と区別して使います。[1]

 EFが保たれていても、心不全を否定できません。 EFは主に収縮機能に関する指標で、拡張機能や充満圧なども確認する必要があります。[2]

収縮機能に関係する主な略語

略語名称・単位意味
LVEF/EF左室駆出率・%左室内の血液を1回の収縮で送り出す割合
FS/%FS左室内径短縮率・%収縮によって左室内径が短くなる割合
EDV/LVEDV左室拡張末期容積・mL拡張末期の左室内の血液量
ESV/LVESV左室収縮末期容積・mL収縮末期に左室内に残る血液量
SV一回拍出量・mL/拍1回の拍動で送り出す量
CO心拍出量・L/分1分間に送り出す量
CI心係数・L/分/m²心拍出量を体表面積で補正した値

 容積差から求めるSVはEDV-ESVです。ただし逆流がある場合、この量がそのまま全身への有効な前方拍出量になるとは限りません。

 COはSVと心拍数から算出でき、CIはCOを体表面積(BSA)で割った値です。EFとCOは同じものではないため、EFだけで全身への血流量を把握することはできません。

 FSは内径に基づく指標で、心室の形や局所壁運動異常などの影響を受けます。報告書の壁運動所見も合わせて確認します。

2.心臓の大きさと壁の厚さを見る指標

略語名称・単位主な確認内容
LVIDd/LVDd左室拡張末期径・mm拡張末期の左室内径
LVIDs/LVDs左室収縮末期径・mm収縮末期の左室内径
IVSd/IVSTd心室中隔拡張末期厚・mm拡張末期の中隔の厚さ
LVPWd/PWTd左室後壁拡張末期厚・mm拡張末期の後壁の厚さ
LVM/LVMI左室心筋重量/左室心筋重量係数・g/g/m²心筋の量と体格補正値
LAD左房径・mm左房の一方向の径
LAVI左房容積係数・mL/m²左房容積を体表面積で補正した値
RV/RA右室/右房部位名。径・面積・容積など、何を測った値かを確認する

 略語末尾の「d」は拡張末期、「s」は収縮末期を表すことが多いです。壁厚は、拡張末期と収縮末期で同じ参考値を使わないようにします。

 心腔の大きさは性別や体格、測定部位・方法によって異なります。左室拡大を見たときも、径だけで収縮機能低下や心不全を断定せず、EF、弁膜症、総合所見と合わせます。

 左房は一方向の径だけでは全体の大きさを捉えにくいため、容積を体格補正したLAVIも確認します。ASE/EACVIの2015年指針では、LAVIの参考範囲は16~34mL/m²です。左房拡大は心房細動や弁膜症などでも生じるため、それだけで現在の充満圧上昇とは判断できません。[1]

3.拡張機能と充満圧を見る指標

 拡張機能は、心室がゆるんで血液を受け入れる働きに関係します。一方、充満圧は、血液が心臓へ流入する際の圧に関する情報です。両者は関連しますが、同じ意味ではありません。

略語名称・単位意味
E僧帽弁流入の拡張早期最大流速・cm/s拡張早期に左房から左室へ流れる血流の速度
A僧帽弁流入の心房収縮期最大流速・cm/s心房収縮に伴う流入の速度
E/AE波とA波の流速比流入パターンを見る指標
e′僧帽弁輪の拡張早期速度・cm/s組織ドプラーで測る弁輪の動く速度
E/e′Eとe′の比充満圧の推定に用いる指標のひとつ
DT/DcTE波減速時間・msE波が減速する時間
LAVI左房容積係数・mL/m²左房の大きさに関する情報

 Eは「血流の速度」、e′は「弁輪の動く速度」です。e′は中隔側・側壁側で測定され、E/e′もそれぞれの値か平均値かを確認します。

 E/Aが一見正常でも、拡張機能が正常とは限りません。 加齢、充満圧、心房細動、弁膜症などで流入パターンや解釈が変わります。

E/e′にも一律の診断を当てはめず、e′、左房所見、肺動脈圧に関係する所見などと組み合わせます。2025年のASE指針では評価手順が更新され、左房ストレインなどの追加指標や、疾患別の評価も扱われています。[2]

 リハビリ職は個々の数値に加えて、報告書の「拡張機能障害」「左房圧・充満圧上昇」などの総合所見を確認しましょう。

4.弁膜症に関係する略語と数値

弁の異常を表す略語

略語名称
AS大動脈弁狭窄症
AR大動脈弁逆流
MS僧帽弁狭窄症
MR僧帽弁逆流
TS/TR三尖弁狭窄症/三尖弁逆流
PS/PR肺動脈弁狭窄症/肺動脈弁逆流

 「狭窄」は弁が開きにくく血流が通りにくい状態、「逆流」は弁を越えて血液が逆方向に流れる状態です。逆流は「閉鎖不全」と表記されることもあります。

重症度評価で見かける数値

略語・表記名称・単位確認すること
Vmax最大血流速度・m/sどの弁・部位の流速か
peak PG最大圧較差・mmHg瞬時の最大圧較差
mean PG平均圧較差・mmHg対象期間の平均圧較差
AVA/MVA大動脈弁口面積/僧帽弁口面積・cm²弁口の面積
RVol逆流量・mL/拍1拍あたりの逆流量
EROA有効逆流弁口面積・cm²逆流の評価に用いる面積
mild/moderate/severe軽度/中等度/重度総合的な重症度判定

 最大圧較差と平均圧較差は、同じ数値として扱えません。 また、大動脈弁口「面積」の単位はcm²であり、径のmmやcmとは区別します。

 圧較差は流量にも左右されます。例えば大動脈弁狭窄症では、重症でも流量が少ないと圧較差が高くならないことがあります。流速、弁口面積、左室機能などを合わせて評価します。[4]

 カラードプラーの逆流表示の大きさだけでも重症度は決められません。リハビリでは、どの弁にどの程度の異常があり、症状や運動の指示にどう関係するかを確認します。

5.右心系と肺動脈圧に関係する指標

略語名称・単位主な意味
TAPSE三尖弁輪収縮期移動距離・mm右室の長軸方向の収縮を評価する
RV FAC右室面積変化率・%収縮による右室面積の変化を評価する
S′三尖弁輪収縮期速度・cm/s弁輪の収縮期の動く速度
TRV三尖弁逆流最大速度・m/s逆流ジェットの最大流速
TRPG三尖弁逆流圧較差・mmHg右室と右房の収縮期圧較差
RAP右房圧・mmHg心エコーでは多くの場合、推定値
RVSP右室収縮期圧・mmHgTRPGとRAPから推定する
PASP/sPAP肺動脈収縮期圧・mmHg条件が合えばRVSPから推定する

 TRPGは簡易ベルヌーイ式により、TRPG=4×TRV²で計算します。RVSPは、RVSP=TRPG+推定RAPです。

 例えばTRVが2.5m/sならTRPGは25mmHgです。推定RAPが3mmHgなら、推定RVSPは28mmHgになります。

 肺動脈弁狭窄や右室流出路狭窄などがない場合、RVSPはPASPの推定に用いられます。TRPGと肺動脈収縮期圧は同じではなく、収縮期圧と平均肺動脈圧も別の値です。

 測定できる逆流波形の質や、推定RAPの誤差にも注意が必要です。心エコーは肺高血圧の評価・スクリーニングに役立ちますが、診断の確定には必要に応じて右心カテーテル検査などが用いられます。右室機能も、TAPSEだけで判断せず複数の所見を合わせます。[3]

6.下大静脈から推定右房圧を読む

 IVC(Inferior Vena Cava)は下大静脈です。右房へ戻る血液の通り道で、径と吸気による虚脱を使って右房圧を推定します。

 成人の自然呼吸下で、スニッフ(短く吸い込む動作)による変化を評価する基本的な目安は次のとおりです。[3,4]

最大IVC径スニッフ時の虚脱率推定RAPの基本的な目安
≦21mm≧50%3mmHg
≦21mm<50%8mmHg
>21mm≧50%8mmHg
>21mm<50%15mmHg

 中間的な組み合わせは、追加所見によって推定が調整される場合があります。これは血液量を直接測る表ではありません。

 人工呼吸管理中、十分な吸気ができない場合などでは、同じ方法で正確に推定できないことがあります。IVC径だけで、うっ血や脱水を決めつけないようにしましょう。

7.ほかに見かける略語

略語意味・読むときのポイント
AoD/Ao root大動脈径・大動脈基部。測定部位と体格などを確認する
GLS左室全体の長軸方向ストレイン。負値の表記が多く、符号・測定法を確認する
EPSS僧帽弁前尖の拡張早期最大開放位置と心室中隔との距離
PEP/ET前駆出期/駆出時間。心拍数や負荷条件などの影響を受ける

 PEP、ET、EPSSなどが記載されていても、まずはEF、壁運動、拡張機能、弁膜症、右心系の総合評価を押さえると、報告書を整理しやすくなります。

リハビリで結果を活用するポイント

 心エコーから得られる情報は、患者さんの状態を理解し、運動への反応を観察するための手がかりになります。

報告書の所見合わせて確認したいこと
収縮機能低下・壁運動異常病状の安定性、治療内容、疲労感、胸部症状、血圧・脈拍の反応
拡張機能障害・充満圧上昇息切れ、呼吸状態、体重や浮腫の変化など
重度の弁膜症症状、治療方針、運動強度や負荷方法についての医師の指示
右室機能低下・肺高血圧を示唆する所見呼吸困難、SpO₂、循環反応、活動時の症状など

 EFが低いから一律にリハビリ禁止、EFが高いから安全、とは判断できません。 現在の症状、治療経過、医師の指示、施設の中止基準を踏まえて、実施可否と運動量を検討します。

まとめ

 心エコーの略語は、何を評価する指標かで分類すると理解しやすくなります。

– EF・FS:収縮機能に関する情報

– 左室径・容積・壁厚・LAVI:構造や大きさに関する情報

– E/A・e′・E/e′:拡張機能や充満圧に関する情報

– 流速・圧較差・弁口面積・逆流量:弁膜症に関する情報

– TAPSE・FAC・TRPG・IVC:右心系の機能や圧に関する情報

 数値の意味と測定条件を理解し、総合所見と患者さんの反応を結びつけて考えましょう。次の画像解説では、これらの指標が心臓のどの部分を観察・測定しているのかを確認します。

心エコーの略語一覧

 記事に出てくる主な略語を、英語の正式名称でまとめました。

 E、A、e′、S′は、波形・速度を表す記号です。

参考文献

1. Lang RM, et al. Recommendations for Cardiac Chamber Quantification by Echocardiography in Adults. J Am Soc Echocardiogr. 2015;28:1–39.e14. https://doi.org/10.1016/j.echo.2014.10.003

2. Nagueh SF, et al. Recommendations for the Evaluation of Left Ventricular Diastolic Function by Echocardiography and for Heart Failure With Preserved Ejection Fraction Diagnosis: An Update From ASE. 2025. https://doi.org/10.1016/j.echo.2025.03.011

3. Mukherjee M, et al. Guidelines for the Echocardiographic Assessment of the Right Heart in Adults and Special Considerations in Pulmonary Hypertension. 2025. https://doi.org/10.1016/j.echo.2025.01.006

4. Ohte N, et al. JCS 2021 Guideline on the Clinical Application of Echocardiography. Circ J. 2022;86:2045–2119. https://doi.org/10.1253/circj.CJ-22-0026

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