FMA(Fugl-Meyer Assessment:フューゲルマイヤー評価法)は、脳卒中後の運動機能や感覚などの障害を評価する方法です。
評価結果を活用するためには、合計点だけでなく、「どの領域に障害があるか」「どの運動が可能になったか」「生活動作にどのような変化があるか」を整理することが大切です。
本記事では、FMAの結果の見方と、再評価で比較しやすい記録方法を解説します。
FMAの結果を見る前に、評価した範囲を確認する
FMAは、全領域を実施する場合と、上肢・下肢の運動機能など、特定の領域を実施する場合があります。
そのため、「FMAが40点だった」という情報だけでは、結果を正しく読み取れません。何を評価した得点なのか、満点とセットで確認することが必要です。
| 評価領域 | 満点 |
|---|---|
| 上肢運動機能 | 66点 |
| 下肢運動機能 | 34点 |
| 運動機能合計 | 100点 |
| 感覚 | 24点 |
| バランス | 14点 |
| 関節可動域 | 44点 |
| 関節痛 | 44点 |
| 全領域合計 | 226点 |
上肢運動機能66点と下肢運動機能34点は、運動機能合計100点の内訳です。全領域の合計を計算するときに、重複して加算しないように注意しましょう。
記録するときは、次のように評価範囲を明示します。
- FMA上肢運動機能:40/66点
- FMA下肢運動機能:24/34点
- FMA運動機能合計:64/100点
なお、上肢のみの感覚や関節可動域を評価した場合は、全上下肢を合わせた満点とは異なります。使用した評価用紙に合わせて分母を記載してください。
FMAの得点はどのように解釈する?
得点が高いほど、その領域の障害が少ない
FMAは、基本的に得点が高いほど、評価対象となる機能が良好であることを示します。
運動項目の多くは、以下の考え方で採点されます。
| 得点 | 基本的な考え方 |
|---|---|
| 0点 | 課題を遂行できない |
| 1点 | 課題を部分的に遂行できる |
| 2点 | 課題を十分に遂行できる |
ただし、すべての項目に同じ説明をそのまま当てはめることはできません。 反射、感覚、関節可動域、関節痛などは、それぞれに定められた採点基準を確認します。
特に関節痛は、高得点ほど痛みが少ない方向です。「痛みの点数が高いほど痛みが強い」と解釈しないように注意しましょう。
得点を「回復した割合」として解釈しない
例えば、上肢運動機能が33/66点であっても、「上肢が50%回復した」とは言い切れません。
FMAは順序尺度であり、それぞれの1点が、同じ大きさの機能差を表しているわけではないためです。
また、同じ合計点でも、肩・肘の運動が比較的保たれている人と、手関節や手指の運動が比較的保たれている人では、動作上の課題が異なります。
合計点は全体像を把握する指標として使い、具体的な状態は項目別の得点から読み取ります。
合計点だけでなく、得点の内訳を見る
上肢運動機能は、近位と遠位の違いを確認する
上肢運動機能は、次の内訳で整理できます。
| 区分 | 満点 | 結果を見るときの視点 |
|---|---|---|
| 肩・肘・前腕を中心とした上肢項目 | 36点 | 共同運動と、共同運動から離れた運動の遂行状況 |
| 手関節 | 10点 | 手関節の保持や運動の遂行状況 |
| 手指 | 14点 | 手指の運動や把持課題の遂行状況 |
| 協調性・速度 | 6点 | 振戦、測定障害、動作時間 |
| 合計 | 66点 | 上肢運動機能の全体像 |
例えば、合計点が上昇していても、改善が主に肩・肘の項目で生じている場合、手指操作には引き続き課題が残ることがあります。
「上肢が改善した」という記録に加えて、どの部位・課題が改善したのかを記載すると、介入方針につなげやすくなります。
下肢運動機能は、歩行の観察と合わせて考える
下肢では、股関節・膝関節・足関節の運動や、共同運動から離れた運動、協調性などを項目別に確認します。
そのうえで、立ち上がりや歩行の観察と照らし合わせます。
例えば、足関節の運動課題で得点が上がった場合でも、それだけで歩行中のつま先の引っかかりが解消したとは判断できません。実際の歩行で、足部の動きや介助量などを確認する必要があります。
感覚・関節可動域・関節痛を合わせて確認する
運動項目の低得点には、運動麻痺だけでなく、感覚障害、関節可動域制限、疼痛などが関わっている可能性があります。
例えば、肩を動かす課題が困難であった場合は、次のように整理します。
- 随意的に動かすことが難しいのか
- 他動的にも関節の動きが制限されているのか
- 痛みによって運動が妨げられているのか
- 感覚や課題理解の問題が影響しているのか
得点だけで原因を決めつけず、他の評価所見と合わせて解釈しましょう。
再評価では「何点変わったか」と「何が変わったか」を確認する
再評価では、同じ領域の得点を比較し、変化量を計算します。
変化量=再評価時の得点-前回評価時の得点
例えば、上肢運動機能が24/66点から30/66点になった場合、変化量は+6点です。
ただし、「6点改善した」という記録だけでは、具体的な変化が伝わりません。
次の内容も合わせて確認します。
- 0点から1点になった項目
- 1点から2点になった項目
- 得点が変わらなくても、動作の様子が変化した項目
- 疼痛や疲労など、評価条件の違い
- 生活場面での使用状況や介助量の変化
採点基準に達していなければ、動作に変化があっても得点を上げることはできません。そのような変化は、観察所見として文章で残します。
何点上がれば、意味のある改善といえる?
FMAの変化を解釈するときは、測定誤差を超える変化の目安であるMDCと、臨床的に意味のある変化の目安であるMCID・CIDを区別します。
上肢運動機能では、慢性期の軽度〜中等度の麻痺を対象とした研究で、CIDが4.25〜7.25点と報告されています。一方、回復期の中等度〜重度の麻痺を対象とした研究では、MCIDとして12.4点が報告されています。
これらは、対象者や判断方法などの条件が異なる研究結果です。「FMAは何点上がれば改善」と、すべての患者に共通する基準として使うことはできません。
研究値を参考にするときは、病期、重症度、評価領域、評価間隔などを確認し、実際の動作や本人の実感と合わせて判断します。
FMAの記録に残しておきたい内容
再評価や担当者間の情報共有に活用するため、次の内容を記録しておくと整理しやすくなります。
| 記録項目 | 記載する内容 |
|---|---|
| 基本情報 | 評価日、発症日または発症後日数、麻痺側、評価者 |
| 評価範囲 | 上肢運動機能、下肢運動機能など |
| 使用した資料 | 評価用紙・マニュアルの版や言語 |
| 評価結果 | 領域別・項目別の得点、満点 |
| 前回との比較 | 前回得点、変化量、変化した項目 |
| 観察所見 | 共同運動、代償動作、運動範囲、動作の安定性など |
| 影響した要因 | 疼痛、疲労、覚醒状態、課題理解など |
| 実施状況 | 未実施項目、中止理由、標準手順からの変更 |
| 生活動作との関係 | 麻痺側の使用状況、介助量、残っている課題 |
評価手順や採点方法は、使用する標準化されたマニュアルに従います。再評価でも同じ手順を用いることが、結果を比較するうえで重要です。
未実施と0点を区別する
疼痛や体調不良などにより実施できなかった項目を、記録上の都合だけで0点に置き換えないようにします。
「課題を遂行できず0点だった場合」と「評価していない場合」では、結果の意味が異なります。
未実施時は理由を明記し、集計の扱いは使用するマニュアルや研究・施設の規定に従います。全項目がそろっていない場合は、そのことが分かる形で記録し、完全な評価結果と同じ条件で比較しないようにしましょう。
FMAの記録例
以下は、記録方法の例です。
経過を一覧にした記録例
| 評価領域 | 初回 | 再評価 | 変化量 |
|---|---|---|---|
| 上肢運動機能 | 24/66点 | 30/66点 | +6点 |
| 下肢運動機能 | 20/34点 | 23/34点 | +3点 |
| 運動機能合計 | 44/100点 | 53/100点 | +9点 |
この表は運動機能のみの記録です。感覚、バランス、関節可動域、関節痛を含む226点満点の結果ではありません。
診療記録への記載例
【評価条件】
発症後42日、左片麻痺。FMA上肢・下肢運動機能を実施。前回と同じ評価用紙・手順を使用した。途中に休憩を挟み、全項目を実施した。【結果】
上肢運動機能30/66点、下肢運動機能23/34点、運動機能合計53/100点。14日前と比較して、上肢+6点、下肢+3点。【主な変化】
上肢では肩・肘を中心とした一部の運動項目で得点が上昇した。手指の選択的な運動には引き続き困難がみられる。下肢では一部の運動項目で得点が上昇したが、歩行中の足部クリアランス低下は残存している。【生活動作との関係】
食事場面では麻痺側上肢の使用が少なく、非麻痺側への依存が続いている。歩行は引き続き見守りを要する。【方針】
得点が変化した項目と残存課題を踏まえ、上肢の物品操作と実際の生活場面での使用、歩行時の足部の動きを継続して評価・練習する。
実際の記録では、「一部の運動項目」とまとめず、項目名や得点の変化を具体的に記載すると、さらに比較しやすくなります。
FMAの得点だけでADLや予後を判断しない
FMAは、主として身体機能の障害を捉える評価です。上肢運動機能の得点が高いことと、生活場面でその上肢を十分に使えていることは、同じ意味ではありません。
食事、更衣、移乗、歩行などには、認知機能、注意、持久力、環境、補助具、動作方法なども関わります。
そのため、FMAと合わせて、次のような評価を目的に応じて組み合わせます。
- ADLの評価と実際の生活動作の観察
- 上肢の物品操作や生活場面での使用状況
- 歩行速度、歩行の安定性、介助量
- バランスや転倒に関する評価
また、FMAの点数だけから、歩行自立の可否や今後の回復を断定することは避けます。
まとめ
FMAの結果を記録するときは、評価領域・得点・満点を明示し、項目別の変化と実際の動作を合わせて残すことが大切です。
合計点の増減に加えて、何ができるようになり、どの課題が残っているのかを整理することで、目標設定や介入方針に活用できます。
再評価では評価手順や条件をそろえ、FMAで捉えた機能の変化が生活動作にどのようにつながっているかを確認していきましょう。
参考文献・資料
- Fugl-Meyer AR, et al. The post-stroke hemiplegic patient. I. A method for evaluation of physical performance. Scand J Rehabil Med. 1975;7(1):13–31.
- University of Gothenburg. Fugl-Meyer Assessment:評価用プロトコル・マニュアル.
- Page SJ, Fulk GD, Boyne P. Clinically important differences for the upper-extremity Fugl-Meyer Scale in people with minimal to moderate impairment due to chronic stroke. Phys Ther. 2012;92(6):791–798.
- Hiragami S, Inoue Y, Harada K. Minimal clinically important difference for the Fugl-Meyer assessment of the upper extremity in convalescent stroke patients with moderate to severe hemiparesis. J Phys Ther Sci. 2019;31(11):917–921.
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