痛みは、続いている期間や経過によって「急性痛」と「慢性痛」に分けられます。
急性痛は、けがや手術、病気などに伴って生じ、身体の異常を知らせたり、傷ついた部位を守ったりする役割を持ちます。一方、慢性痛は長期間持続・反復し、身体機能だけでなく、睡眠、気分、仕事や家庭生活にも影響することがあります。
リハビリテーションでは、痛みの強さだけでなく、発症からの経過、原因となる病態、生活への影響を確認することが大切です。
急性痛と慢性痛の違い
| 比較項目 | 急性痛 | 慢性痛 |
|---|---|---|
| 期間・経過 | けがや手術、病気などに伴って生じ、一般に比較的短期間で経過する | 一般に3か月を超えて持続または反復する |
| 身体を守る役割 | 異常を知らせ、損傷部位を保護する役割が大きい | 身体を守る役割だけでは説明できない場合がある |
| 背景 | 組織損傷や炎症などとの関係が比較的明確なことが多い | 持続する病変、神経の障害、痛みの処理の変化など、背景はさまざま |
| 評価の視点 | 原因、治癒過程、合併症、動作との関係 | 原因の評価に加え、活動、睡眠、心理・社会的要因など |
| 対応の重点 | 原因への治療と鎮痛、必要な保護、安全な活動の再開 | 原因への治療と痛みの軽減に加え、生活機能や社会参加の改善 |
これらは一般的な特徴であり、急性痛と慢性痛を完全に切り分けられるとは限りません。慢性痛がある人に、新しい急性痛が加わることもあります。
急性痛とは
急性痛は、けが、手術、炎症などをきっかけとして生じる痛みです。
例えば、足関節を捻挫した直後の痛みや、手術後の創部痛などが挙げられます。痛みがあることで患部への過剰な負荷を避け、身体を保護する行動につながります。
原因となる病態や組織の回復に伴って軽減することが多いものの、経過には個人差があります。「急性痛だから、そのうち治る」と放置せず、原因の確認と適切な疼痛管理を行うことが必要です。
急性痛があるときのリハビリ
リハビリでは、痛みだけを目安に運動量を決めず、組織の治癒過程、固定や荷重の制限、医師の指示などを確認します。
例えば術後では、痛みが軽くても、修復した組織を保護するために動作や負荷を制限する場合があります。反対に、適切な鎮痛と保護のもとで、離床や運動を進める場合もあります。
大切なのは、必要な保護を行いながら、その時期に適した活動を確保することです。
慢性痛とは
慢性痛は、一般に3か月を超えて持続または反復する痛みを指します。毎日続く痛みだけでなく、繰り返し生じる痛みも含まれます。
ただし、3か月という期間は分類のための目安です。その時点で身体の状態や痛みの仕組みが一斉に変わるわけではありません。期間と併せて、原因となる病態や回復経過を評価します。
慢性痛でも、原因となる病変が続いていることがある
慢性痛には、持続する疾患や炎症、神経の障害などに関連する痛みがあります。また、最初の損傷が回復した後も痛みが続く場合があります。
したがって、「慢性痛だから組織の問題はない」「痛みが続くのは気持ちの問題」と判断することはできません。
慢性痛の分類には、痛み自体が主要な健康問題となる「慢性一次性疼痛」と、基礎疾患などに関連する「慢性二次性疼痛」という見方もあります。両者が併存する場合もあります。
急性痛・慢性痛と、痛みの仕組みによる分類は別のもの
「急性痛・慢性痛」は、主に期間や経過による分類です。
一方、「侵害受容性疼痛」「神経障害性疼痛」「痛覚変調性疼痛」は、痛みが生じる仕組みに着目した分類です。
| 分類の視点 | 主な分類 |
|---|---|
| どのくらい続いているか | 急性痛・慢性痛 |
| どのような仕組みで生じているか | 侵害受容性疼痛・神経障害性疼痛・痛覚変調性疼痛 |
例えば、組織の炎症に関連する侵害受容性疼痛が長期間続くこともあります。神経障害性疼痛も、発症して間もない時期から認められる場合があります。
慢性痛であることだけを理由に、神経障害性疼痛や痛覚変調性疼痛と判断することはできません。期間と仕組みを分けて整理することが、評価や対応を考える助けになります。
痛みが長引く背景
痛みの経過には、身体の状態だけでなく、心理面や生活環境も関係します。
確認する要素として、次のようなものがあります。
- 原因となる疾患、炎症、神経の障害
- 痛みに関わる神経系の反応性の変化
- 睡眠の状態や疲労
- 動作への不安や、痛みに対する捉え方
- 活動量の減少や、無理な活動の繰り返し
- 仕事、家庭、周囲の支援状況
関与する要素やその程度は、人によって異なります。また、心理・社会的要因は慢性痛だけでなく、急性痛にも影響します。患者さんの訴えを尊重しながら、その人の状況を確認します。
リハビリで確認したい評価のポイント
急性痛・慢性痛のどちらでも、まず発症時期、きっかけ、痛む部位、強さ、性質、増悪・軽減する条件を確認します。
そのうえで、次の視点を加えます。
| 評価する視点 | 確認する内容の例 |
|---|---|
| 経過 | 改善しているか、悪化しているか、いつから変化したか |
| 病態・治療 | 診断、検査結果、治療内容、運動や荷重の制限 |
| 身体機能・動作 | 関節運動、筋力、感覚、姿勢、動作との関係 |
| 活動・参加 | 歩行、身の回り動作、家事、仕事、趣味への影響 |
| 睡眠・心理面 | 眠れているか、痛みへの不安や動作への恐怖があるか |
| 生活環境 | 家族の支援、仕事の負担、休息を取りやすいか |
痛みの数値だけでは、生活への影響を十分に捉えられません。例えば、痛みの強さが同じでも、「夜に眠れるようになった」「買い物に行けるようになった」といった変化は、経過を判断する大切な情報になります。
慢性痛があるときのリハビリの考え方
慢性痛では、原因となる疾患への治療と痛みの軽減を図りながら、生活でできることを増やす視点を持ちます。
目標は、患者さんが困っていることや希望する生活から具体化します。
- 近所の店まで歩いて買い物に行く
- 家事を休憩しながら行う
- 趣味や仕事に参加できる時間を増やす
運動や活動の内容は、病態、身体能力、本人の希望、実施後の反応を確認して調整します。慢性一次性疼痛に対するNICEのガイドラインでも、本人の能力や希望を考慮した運動プログラムと身体活動が推奨されています。
「痛みが完全になくなるまで動かない」「痛くても我慢して動く」と一律に決めるのではなく、その人に適した活動量を一緒に探すことが大切です。
また、慢性痛がある人でも、痛みの部位や性質が変わった場合、新しい症状が加わった場合には、原因を再評価します。「いつもの痛み」と決めつけず、必要に応じて医師と情報を共有します。
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参考資料
- International Association for the Study of Pain(IASP). Pain Management Center – Chapter 1.
- International Association for the Study of Pain(IASP). Chronic Pain.
- International Association for the Study of Pain(IASP). Terminology.
- NICE. Chronic pain (primary and secondary) in over 16s: assessment of all chronic pain and management of chronic primary pain(NG193).
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