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末梢性感作・中枢性感作とは?違いと痛みが敏感になる仕組みを解説

 炎症がある場所を少し押しただけで、いつもより強く痛む。傷が治ってきても、周囲に触れると痛みが出る。

 こうした痛みの過敏さを理解するうえで重要なのが、末梢性感作と中枢性感作です。

 どちらも侵害受容に関わる神経の反応性が高まる現象ですが、変化が起こる場所が異なります。

 この記事では、それぞれの違い、痛覚過敏やアロディニアとの関係、リハビリテーションでの評価と対応を解説します。

感作とは

 感作(sensitization)とは、侵害受容に関わる神経が、通常の入力に強く反応したり、それまで反応しなかった弱い入力にも反応したりするようになる現象です。

 ここでいう「侵害受容」は、身体に害を及ぼす刺激を神経系が検出・処理する働きです。本人が体験する「痛み」とは区別されます。

 感作は神経生理学的な用語です。日常診療では、痛みの過敏さなどから関与を間接的に推測します。 痛みが強いという理由だけで、感作が起きていると確定することはできません。iasp-pain.org

末梢性感作とは

 末梢性感作(peripheral sensitization)とは、末梢の侵害受容神経の反応性が高まり、反応するために必要な刺激の強さである「閾値」が低下する現象です。iasp-pain.org

 炎症や組織損傷があると、局所の環境変化によって侵害受容器が刺激に反応しやすくなります。そのため、同じ圧迫や動きでも、受傷前より痛みが出やすくなることがあります。

 例えば、捻挫後の患部を押すと強く痛む場合や、日焼けした皮膚が刺激に敏感になる場合には、末梢性感作が関わり得ます。

 急性期の過敏さには、患部を保護する役割もあります。したがって、末梢性感作が起きていること自体を、直ちに異常や慢性化と捉える必要はありません。

中枢性感作とは

 中枢性感作(central sensitization)とは、脊髄や脳などの中枢神経系にある侵害受容神経が、通常の入力や閾値以下の入力に対して、強く反応するようになる現象です。iasp-pain.org

 代表的な研究対象は、末梢からの侵害受容情報を受け取る脊髄後角です。

 持続・反復する侵害受容入力などをきっかけとして、中枢の神経の興奮性や神経間の伝達効率が変化し、過敏な反応が生じます。

 関連して観察される現象には、次のようなものがあります。

  • 通常は痛くない接触で痛みが生じる
  • 痛む部位の周囲にも過敏さが広がる
  • 刺激を繰り返すと痛みが強まる
  • 刺激をやめた後にも痛みが残る

 ただし、これらは中枢性感作を直接証明する所見ではありません。また、中枢性感作は慢性痛だけに起こるものではなく、急性の侵害刺激後にも生じ得ます。PubMed

 「中枢」という言葉は、脳だけを意味するものでも、脳や脊髄が必ず損傷していることを意味するものでもありません。

末梢性感作と中枢性感作の違い

 この表は理解のための整理であり、診断基準ではありません。

 両者は同じ患者さんに併存することがあります。 また、末梢の入力が中枢の過敏さを維持する場合もあるため、二者択一で判断しないことが大切です。PubMed

痛覚過敏とアロディニアの違い

痛覚過敏

 痛覚過敏(hyperalgesia)は、通常でも痛みを起こす刺激に対して、痛みが強くなることです。

 例えば、普段でも痛みが出る程度の圧迫が、炎症部位ではさらに強く痛む場合です。

アロディニア

 アロディニア(allodynia)は、通常は痛みを起こさない刺激によって、痛みが生じることです。

 例えば、衣服が触れたり、皮膚を軽くなでたりするだけで痛む場合です。

 どちらも観察される現象を表す言葉であり、それ自体で原因や機序を特定するものではありません。

 「アロディニアがあるから中枢性感作」とは断定できません。iasp-pain.org

一次性痛覚過敏と二次性痛覚過敏

 損傷や炎症が起きている部位の痛覚過敏を「一次性痛覚過敏」、その周囲の損傷していない部位に生じる痛覚過敏を「二次性痛覚過敏」と呼びます。

 一次性痛覚過敏には末梢性感作が関わり、中枢の変化が加わることもあります。二次性痛覚過敏は、中枢性感作を考えるうえで重要な現象です。

 ただし、臨床では痛みの分布だけから、各機序の寄与を正確に分けることはできません。PubMed

ゲートコントロール・下降性疼痛調節との関係

 ゲートコントロール理論は、脊髄で痛みの伝達が調節されることを説明する考え方です。

 下降性疼痛調節は、脳から脊髄へ向かう働きが、侵害受容情報の伝達を抑えたり、促進したりする仕組みを扱います。

 感作は、侵害受容に関わる神経の反応性が高まる現象です。中枢性感作には、興奮の増強や抑制の低下などが関係します。PubMed

 これらを合わせて学ぶことで、痛みの強さが局所の損傷だけで決まるわけではないことを理解しやすくなります。

中枢性感作と痛覚変調性疼痛は同じ?

 中枢性感作と痛覚変調性疼痛は、同義ではありません。

 中枢性感作は神経生理学的な機序を表す言葉です。一方、痛覚変調性疼痛は、侵害受容の変化に関連する痛みを表す分類上の用語です。

 中枢性感作は、炎症に伴う痛みや神経障害性疼痛でも関与し得ます。そのため、「中枢性感作=痛覚変調性疼痛」と一対一に対応させることはできません。iasp-pain.org

 また、「痛みが長引いている」「画像で十分な説明がつかない」という理由だけで、中枢性感作や痛覚変調性疼痛と判断しないことが大切です。

リハビリで確認したいこと

 以下は感作を確定するチェックリストではなく、痛みの状態と生活への影響を整理するための評価項目です。

 過敏さを確認するために、強い刺激を繰り返す必要はありません。検査の目的を説明し、本人の反応を見ながら行います。

 Central Sensitization Inventory(CSI)などの質問票は、関連する症状の把握を補助します。ただし、CSIは中枢神経の感作を直接測定する検査ではなく、点数だけで確定診断はできません。PubMed

リハビリテーションでの対応

1.局所の病態と必要な保護を確認する

 感作の可能性を考える場合も、炎症、組織損傷、神経障害などの評価を続けます。

 原疾患の治療や組織の回復段階に合わせ、保護と活動量を調整することが基本です。

2.痛みについて本人と理解を共有する

 「気にしすぎ」「脳が勘違いしているだけ」という説明は、痛みを否定されたと受け取られることがあります。

 例えば、次のように伝えます。

痛みは実際に起きています。患部の状態に加えて、痛みを伝える神経の敏感さも影響することがあります。身体の状態と、動いた後の反応を確認しながら、できる活動を一緒に探していきましょう。

 評価で分かっていることと、まだ分からないことを共有する姿勢が大切です。

3.負荷を調整し、活動を段階的に広げる

 運動・身体活動は、多くの慢性疼痛の管理において重要な役割を持ちます。ただし、適切な種類や量は、病態と本人の状態によって異なります。iasp-pain.org

 歩行時間、反復回数、動く範囲などを調整し、運動後の回復や翌日の生活への影響も確認します。

 「痛みがあるから全く動かさない」「痛くても我慢して続ける」と一律に決めず、実行可能な量を一緒に探します。

4.痛みの強さと生活機能の両方を見る

 経過を見る際は、痛みの点数に加えて、次のような変化も確認します。

  • 歩ける距離が伸びた
  • 眠れるようになった
  • 家事を再開できた
  • 動作への不安が軽くなった

 必要に応じて医師や他職種と連携し、睡眠、気分、薬物療法、生活環境なども含めて支援します。iasp-pain.org

まとめ

 末梢性感作は末梢の侵害受容神経、中枢性感作は脊髄や脳の侵害受容神経の反応性が高まる現象です。

 痛覚過敏やアロディニアは、その関与を考える手がかりになりますが、単独で機序を確定することはできません。

 リハビリテーションでは、局所の病態、感覚所見、負荷への反応、生活への影響を合わせて評価し、本人と理解を共有しながら活動を支えていくことが大切です。

参考文献・参考資料

  1. IASP. IASP Terminology.
  2. Woolf CJ. Central sensitization: implications for the diagnosis and treatment of pain. Pain. 2011;152(3 Suppl):S2–S15. doi:10.1016/j.pain.2010.09.030
  3. IASP. Allodynia and Hyperalgesia in Neuropathic Pain.
  4. Kosek E, et al. Chronic nociplastic pain affecting the musculoskeletal system: clinical criteria and grading system. Pain. 2021;162(11):2629–2634. PubMed
  5. Do “central sensitization” questionnaires reflect measures of nociceptive sensitization or psychological constructs? A systematic review and meta-analyses. Pain. 2023;164(6):1222–1239. PubMed
  6. IASP. Integrative Physical Activity and Exercise to Address Acute and Chronic Pain.

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