痛みを評価するとき、「どのくらい痛いですか?」と強さを確認することは大切です。しかし、痛みの強さだけでは、患者さんが抱えている困りごとの全体像は分かりません。
同じ強さの痛みでも、歩行や着替えが難しくなる人もいれば、眠れないことや仕事を続けられないことに悩む人もいます。
リハビリテーションでは、痛みの特徴と、身体・生活・心理社会面への影響を組み合わせて評価することが重要です。IASPも、痛みの評価では強さに加えて、心理的な苦痛や日常活動への影響などを捉える必要性を示しています。
このページでは、痛みの評価方法を7つの領域に分けて紹介します。各ページから、目的に合った評価項目の方法や結果の見方を確認できます。
痛みの評価方法を目的から探す
| 評価領域 | 主に確認すること |
|---|---|
| 強さ | どのくらい痛むか |
| 性質 | どのような痛みか |
| 神経障害性疼痛 | 神経の病変・疾患に関連する痛みが疑われるか |
| ADL | 日常生活の動作がどのくらい妨げられているか |
| QOL | 健康状態や生活の質にどのような影響があるか |
| 疾患別 | 疾患・部位に特有の症状や機能障害があるか |
| 心理社会面 | 不安、痛みへの捉え方、生活背景などがどう関わるか |
すべての評価尺度を一律に実施する必要はありません。患者さんの訴えと評価の目的に合わせて、必要なものを選びます。
痛みの強さの評価
痛みの程度を、数字や線、言葉などで表す評価です。現在の状態を把握し、治療前後や経過による変化を確認するために用います。
代表的な評価には、NRS、VAS、VRSなどがあります。
評価時には、安静時か動作時か、現在の痛みか一定期間の平均・最大の痛みかを明確にします。再評価でも、できるだけ同じ条件で比較することが大切です。
痛みの性質の評価
「ズキズキする」「焼けるように痛い」「締めつけられる」など、患者さんが感じている痛みの特徴を確認します。
問診では、痛みの表現に加えて、部位や広がり、持続時間、出現するタイミング、増悪・軽減する条件などを整理します。痛みを表す言葉を系統的に確認する質問票として、McGill Pain Questionnaireなどがあります。
痛みの性質は病態を考える手がかりになりますが、表現だけで原因や痛みの機序を断定しないことが大切です。
神経障害性疼痛の評価
神経障害性疼痛は、体性感覚神経系の病変や疾患によって生じる痛みです。電気が走るような痛み、灼熱感、感覚低下などの訴えに着目し、痛みの分布と神経学的所見を確認します。
代表的なスクリーニングツールには、DN4やpainDETECTなどがあります。
ただし、質問票の得点だけで診断するものではありません。病歴、神経の支配領域との対応、感覚検査などを合わせて判断します。
痛みによるADLへの影響の評価
痛みによって、起き上がり、歩行、着替え、入浴などがどのくらい妨げられているかを確認します。
「できる・できない」だけでなく、動作に時間がかかる、途中で休む、痛みを恐れて避けるといった変化にも着目します。BPIの生活への支障に関する項目なども、痛みによる影響を捉えるために用いられます。
一般的なADL尺度を使用する場合には、動作の制限が痛み、筋力低下、麻痺などのどの要因に関連しているかを併せて整理します。
痛みに関連するQOLの評価
QOLの評価では、健康状態や生活の質を、身体面・心理面・社会生活などから広く捉えます。
ADLが「生活動作をどのくらい行えるか」に着目するのに対し、QOLでは、痛みのために楽しみが減った、外出や交流が難しくなったなど、より広い生活への影響を確認します。
代表的な健康関連QOL尺度には、EQ-5DやSF-36などがあります。これらは痛み専用の尺度ではないため、ほかの病気や生活状況の影響も含めて結果を解釈します。
疾患別・部位別の痛みの評価
疾患や痛みの部位に応じて、特徴的な症状や機能障害、生活上の支障を評価します。
例えば、腰痛、頸部痛、肩関節痛、変形性関節症などでは、それぞれの病態や困りごとに対応する評価尺度が使われます。
疾患別の尺度には、痛みだけでなく、動作や生活への影響を含むものがあります。総得点が何を表しているのかを確認し、痛みの強さの点数と区別して解釈することが大切です。
痛みの心理社会面の評価
痛みに伴う不安や気分の落ち込み、動作への恐怖、痛みに対する考え方、家族・仕事などの生活背景を確認します。
代表的な評価には、痛みに対する破局的思考を確認するPCSや、痛みがあっても活動できるという自信を確認するPSEQなどがあります。
心理社会面の評価は、痛みを「気のせい」と判断するためのものではありません。患者さんの痛みの体験を尊重しながら、生活を妨げている要因と、回復を支える要因を把握するために行います。
評価方法を選ぶときのポイント
まず問診で、痛みの部位、発症時期、経過、増悪・軽減する条件、生活上の困りごとを整理します。そのうえで、評価したい内容に合った尺度を選びます。
選択時には、次の点を確認しましょう。
- 患者さんの年齢、認知・言語機能、回答の負担に合っているか
- 対象疾患や使用場面に適した尺度か
- 日本語版の信頼性・妥当性や使用条件が確認されているか
- 再評価で、同じ方法と条件を用いて比較できるか
本人による回答が難しい場合には、表情や行動などを観察する方法も検討します。回答できないことだけを理由に、痛みがないとは判断しません。
評価結果は、点数の変化と、患者さんが大切にしている活動の変化を合わせて確認することが大切です。「痛みがどれだけ減ったか」に加え、「何ができるようになったか」をリハビリテーションの目標につなげましょう。
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