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痛覚変調性疼痛とは?中枢性感作との違い・特徴・リハビリでの考え方

 「けがは治ってきているのに、痛みが続いている」
 「画像で確認できる変化だけでは、痛みの強さや広がりを説明しきれない」

 このような痛みを理解するときに役立つ概念が、痛覚変調性疼痛(nociplastic pain)です。

 痛みの仕組みを考える際は、組織の損傷や炎症、神経の病変に加え、痛みを受け取り調節する働きにも目を向ける必要があります。

痛覚変調性疼痛とは

 国際疼痛学会(IASP)は、痛覚変調性疼痛を、末梢の侵害受容器を活性化する組織損傷やそのおそれ、または痛みを引き起こす体性感覚神経系の病変・疾患について明確な証拠がないにもかかわらず、侵害受容の変化によって生じる痛みと定義しています。iasp-pain.org

 ここでいう「侵害受容」とは、身体を傷つける、あるいは傷つけるおそれのある刺激を神経系が検出・処理する働きです。痛みという主観的な体験とは区別されます。

 臨床では、組織や神経の状態を調べるとともに、痛みに対する過敏さや痛みの広がりなどから、この仕組みの関与を検討します。

 検査で異常が見つからないという理由だけで、痛覚変調性疼痛と判断することはできません。

侵害受容性疼痛・神経障害性疼痛との違い

 痛みは、背景にある仕組みから、次のように整理できます。

 これらは、必ずどれか1つに分かれるわけではありません。

 たとえば慢性腰痛では、組織に由来する痛みに、痛覚変調性疼痛の仕組みが重なる場合があります。複数の仕組みが併存する可能性を考えることが大切です。iasp-pain.org

中枢性感作との違い

 中枢性感作とは、中枢神経系の侵害受容ニューロンが、通常の入力や、本来は閾値以下の入力に対しても強く反応するようになった状態です。

 一方、痛覚変調性疼痛は、痛みの仕組みを臨床的に表す用語です。

 中枢性感作は、痛覚変調性疼痛に関係する重要な仕組みと考えられています。ただし、中枢性感作はほかの痛みでも生じるため、「中枢性感作=痛覚変調性疼痛」ではありません。

 また、痛覚変調性疼痛には、痛みの処理や調節の変化など複数の仕組みが関係すると考えられ、その全体像には未解明の部分もあります。iasp-pain.org

痛覚変調性疼痛でみられる特徴

 関与を考える手がかりには、次のようなものがあります。

  • 痛みが広い範囲や複数の部位にみられる
  • 通常なら痛くない刺激が痛い、または痛い刺激を強く感じる
  • 疲労感や睡眠の問題を伴う
  • 集中しにくいなどの困りごとを伴う
  • 光や音など、痛み以外の刺激にも過敏さがみられる

 ただし、これらは痛覚変調性疼痛に特有の症状ではなく、症状だけで判断することはできません。iasp-pain.org

 なお、通常は痛みを生じない刺激で痛むことをアロディニア、通常でも痛みを生じる刺激に対して痛みが増強することを痛覚過敏といいます。

 これらは神経障害性疼痛などでもみられるため、所見と、その背景にある仕組みを区別して考えます。iasp-pain.org

評価では何を確認するのか

痛みの分布・経過と過敏さ

 2021年には、筋骨格系の慢性痛を対象とした臨床基準が提案されました。

 「痛覚変調性疼痛の可能性がある(possible)」と考える基本条件は、次の4つです。

  1. 痛みが3か月を超えて続いている
  2. 痛みの分布が限局的ではなく、領域性・多部位性・広範性である
  3. 侵害受容性疼痛または神経障害性疼痛の仕組みだけでは、痛みを完全に説明できない
  4. 痛む領域に、痛みに対する過敏さを示す診察所見がある

 これは筋骨格系の慢性痛に対する提案基準です。3か月以上続く痛みすべてに当てはまるわけではなく、ほかの疾患の評価を省略するための基準でもありません。PubMed

痛みだけでなく生活への影響

 リハビリでは、痛みの強さに加えて、生活の中で何が難しくなっているかを確認します。

 以下は、問診・評価を組み立てるための例です。

 単一の点数だけで判断せず、診察所見と生活状況を合わせて検討します。

リハビリでの関わり方

痛みの体験を尊重する

 「画像に異常がないから痛くないはず」「気にしすぎ」と説明すると、患者さんの体験を否定することにつながります。

 IASPの痛みの定義でも、痛みは個人的な体験であり、その訴えを尊重することが示されています。iasp-pain.org

 患者さんへの説明は、たとえば次のように行います。

 痛みの強さは、組織の傷み具合だけでは決まりません。痛みを受け取ったり調節したりする働きも関わります。身体の状態を確認しながら、生活で困っていることを一緒に改善していきましょう。

 評価前から「あなたの神経が過敏になっている」と断定せず、本人の理解や疑問を確認しながら説明します。

本人に合った活動を支える

 関連する慢性疼痛診療では、運動や身体活動、心理的支援などを組み合わせて、生活機能の改善を目指します。iasp-pain.org

 実践では、本人が取り組みやすい動作や運動を選び、次のような反応を確認しながら量を調整します。

  • 実施中・実施後の痛み
  • 疲労や睡眠への影響
  • 翌日の生活への影響
  • 本人が感じる取り組みやすさ

 目標は痛みの数値だけに限定せず、「買い物に行く」「調理を再開する」など、本人が大切にしている活動と結び付けて設定します。

必要に応じて多職種で支援する

 睡眠、不安、気分、仕事や家庭の問題が大きく影響している場合は、医師や心理職などと連携します。

 英国NICEの慢性一次性疼痛のガイドラインでは、運動プログラムの提供や、適切な訓練を受けた専門職による認知行動療法(CBT)・アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)の検討が推奨されています。NICE

 ただし、慢性一次性疼痛と痛覚変調性疼痛は同じ分類ではありません。この推奨を痛覚変調性疼痛すべてにそのまま適用せず、病態や本人の状況に応じて判断します。

よくある誤解

 痛覚変調性疼痛という考え方は、患者さんの痛みを理解し、支援の選択肢を広げるために用います。組織・神経の評価と、痛みの処理・調節、生活への影響を合わせて捉えることが大切です。

参考文献

  1. IASP. Terminology.
  2. Kosek E, et al. Chronic nociplastic pain affecting the musculoskeletal system: clinical criteria and grading system. Pain. 2021;162(11):2629–2634. PubMed
  3. Fitzcharles MA, et al. Nociplastic pain: towards an understanding of prevalent pain conditions. Lancet. 2021;397(10289):2098–2110. PubMed
  4. Kosek E. The concept of nociplastic pain—where to from here? Pain. 2024. DOI
  5. NICE. Chronic pain (primary and secondary) in over 16s. NG193. 推奨事項

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