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神経障害性疼痛とは|原因・症状・発生機序・評価方法を解説

1.神経障害性疼痛とは

 神経障害性疼痛(Neuropathic Pain)とは、体性感覚神経系の病変または疾患によって生じる痛みのことです。

 国際疼痛学会(International Association for the Study of Pain:IASP)では、神経障害性疼痛を次のように定義しています。

体性感覚神経系の病変または疾患によって引き起こされる痛み

 体性感覚神経系とは、皮膚や筋肉、関節などからの触覚、温度覚、痛覚、位置覚などの情報を伝達・処理する神経系です。

 神経障害性疼痛では、末梢神経や脊髄、脳などの体性感覚神経系が損傷されることで、痛みの信号が異常に発生したり、痛みの情報処理が変化したりします。

 例えば、糖尿病性神経障害による足部の灼熱痛、帯状疱疹後神経痛、脳卒中後の中枢性疼痛などが代表的です。

侵害受容性疼痛が主に組織の損傷や炎症に伴う侵害受容器の活動によって生じるのに対し、神経障害性疼痛は体性感覚神経系自体の病変や疾患によって生じるという違いがあります。

 ただし、しびれや電撃痛があるだけで神経障害性疼痛と診断できるわけではありません。病歴、痛みの分布、神経学的所見などを組み合わせて判断する必要があります。

2.神経障害性疼痛の分類

 神経障害性疼痛は、障害される神経系の部位によって、大きく2つに分類されます。

① 末梢性神経障害性疼痛

 末梢神経や神経根などの病変・疾患によって生じる痛みです。糖尿病性神経障害、帯状疱疹後神経痛、外傷性末梢神経損傷などが含まれます。

Understanding Peripheral Neuropathy: Symptoms, Causes, Diagnosis, Treatments, and Prevention Strategies for a Healthier Outlook | by Dr. Brett Berner | Medium

② 中枢性神経障害性疼痛

 脳や脊髄などの中枢体性感覚神経系の病変・疾患によって生じる痛みです。脳卒中後中枢性疼痛、脊髄損傷後疼痛、多発性硬化症に伴う中枢性疼痛などが含まれます。

Central nervous system. Human skull diagram. Side view nerve system organs. Basic annotated central nervous system. White background. 2d drawing vector illustration.

主な原因疾患

 なお、神経疾患の患者に出現する痛みが、すべて神経障害性疼痛というわけではありません。

 例えば脳卒中患者の肩関節痛は、亜脱臼や関節周囲組織の障害などによる侵害受容性疼痛の可能性もあります。

3.神経障害性疼痛の発生機序

 神経障害性疼痛は、単一の機序で生じるものではありません。

 末梢神経の異常興奮や脊髄・脳における感覚情報処理の変化など、複数の機序が関与します。

① 神経の異所性興奮

 神経が損傷されると、通常とは異なる部位で異常な電気活動が生じることがあります。

 これを異所性興奮といいます。

 例えば、神経損傷部位や後根神経節などで自発的な活動電位が発生すると、明らかな外部刺激がなくても痛みを感じることがあります。

 このような異常な神経活動は、自発痛や電撃痛などに関係すると考えられています。

② 末梢性感作

 神経損傷や炎症に伴って、末梢の感覚神経の興奮性が高まることがあります。

 神経細胞のイオンチャネルや受容体の機能が変化することで、刺激に対する反応が増強されます。

 その結果、通常より弱い刺激でも強い反応が生じることがあります。

③ 中枢性感作

 脊髄後角や脳などの中枢神経系で、痛みに関連する神経回路の興奮性が高まる現象です。

 神経活動の増強や抑制性機構の低下などによって、痛みの情報処理が変化します。

 この結果、痛覚過敏やアロディニアなどが出現することがあります。

 ただし、中枢性感作は神経障害性疼痛に特有の現象ではありません。

 侵害受容性疼痛や痛覚変調性疼痛などにも関与するため、中枢性感作があることだけを根拠に神経障害性疼痛とは判断できません。

④ 下行性疼痛調節系の変化

 脳から脊髄に向かう下行性疼痛調節系には、痛みの伝達を抑制したり促進したりする働きがあります。

 神経障害性疼痛では、この調節機能が変化することで、痛みが増強・持続する場合があります。

 これらの神経生理学的な変化については、別記事「痛みの生理学」で詳しく解説します。

4.神経障害性疼痛にみられる症状

 神経障害性疼痛には、特徴的な痛みの表現や感覚異常がみられることがあります。

 代表的な症状を以下に示します。

アロディニアと痛覚過敏の違い

 この2つは臨床で混同しやすい症状です。

アロディニア(Allodynia)

 衣服や寝具が皮膚に軽く触れるだけで、痛みを感じる場合などが該当します。

痛覚過敏(Hyperalgesia)

 本来痛みを生じる刺激に対して、予想以上に強い痛みを感じる状態です。

 神経障害性疼痛では、感覚低下とアロディニアなどが同じ領域に併存する場合もあります。

 また、これらの症状は神経障害性疼痛だけに特有ではないため、症状の特徴だけでなく、原因疾患や神経解剖学的な分布を確認することが重要です。

5.神経障害性疼痛の評価方法

 神経障害性疼痛を評価する際には、痛みの強さだけでなく、原因疾患、痛みの分布、感覚障害、日常生活への影響などを総合的に確認します。

① 問診

 まず、痛みの特徴と出現までの経過を確認します。

 主な確認事項は以下のとおりです。

  • 痛みが出現した時期
  • 痛みが出現した部位と広がり
  • 痛みの性質(灼熱痛・電撃痛・刺痛など)
  • 持続痛か発作性の痛みか
  • 接触や温度変化による痛みの誘発
  • 神経損傷や関連疾患の既往歴
  • 睡眠、歩行、ADLへの影響

 特に、痛みの分布が末梢神経の支配領域や神経根の支配領域、あるいは中枢神経病変に対応しているかを確認します。

② 感覚検査

 神経障害性疼痛が疑われる場合には、感覚障害の有無と分布を調べます。

 感覚検査では、疼痛部位だけでなく、非疼痛部位や反対側との比較も行います。

 また、異常が確認された領域を身体図に記録すると、神経解剖学的な分布との関係や経時的な変化を把握しやすくなります。

③ 痛みの強さの評価

 疼痛強度の評価には、NRS(Numerical Rating Scale)やVAS(Visual Analogue Scale)などを使用します。

 安静時と運動時の疼痛、最も強い痛み、平均的な痛みなどを区別して記録することで、治療による変化を把握できます。

 ただし、これらは疼痛強度を測定するものであり、神経障害性疼痛の診断を目的とした評価ではありません。

④ 神経障害性疼痛のスクリーニング

 神経障害性疼痛の可能性を確認するための評価尺度として、以下のものがあります。

 これらは神経障害性疼痛の可能性を把握するために役立ちますが、スクリーニングの結果だけで診断を確定することはできません。

 2023年のEAN・EFIC・NeuPSIG合同ガイドラインでも、DN4やLANSSなどの評価尺度について、診断過程での利用が推奨されています。

6.神経障害性疼痛の診断確実性

 NeuPSIGでは、神経障害性疼痛の診断確実性を段階的に評価する方法が提案されています。

 例えば、脳卒中後に半身の痛みを訴えている場合でも、痛みの原因が神経障害性であるとは限りません。

 画像所見、感覚障害、疼痛分布などを照らし合わせることが重要です。

 なお、この分類は診断の確実性を示すものであり、痛みの重症度を表すものではありません。

7.神経障害性疼痛に対するリハビリテーション

 神経障害性疼痛に対するリハビリテーションでは、疼痛の軽減だけでなく、身体機能、ADL、QOLの改善を目的とします。

 薬物療法などの医学的治療と併せて、多面的に介入することが重要です。

① 運動療法

 痛みによって身体活動量が低下すると、筋力低下、持久力低下、活動制限などが生じる場合があります。

 患者の状態に応じて、関節可動域運動、筋力増強運動、有酸素運動、歩行練習などを実施します。

 ただし、疼痛を過度に増強させるような負荷は避け、運動中だけでなく運動後の反応も確認します。

② 感覚刺激への対応

 アロディニアがある場合、衣服や寝具などの日常的な接触刺激でも強い痛みが生じることがあります。

 刺激の種類や強さを調整し、患者が耐えられる範囲で感覚刺激への適応を図る方法が検討されます。

 ただし、感覚刺激を段階的に与える方法の有効性は、すべての神経障害性疼痛に対して確立されているわけではありません。

③ ADL・生活環境の調整

 神経障害性疼痛があると、衣服の着脱、入浴、歩行、睡眠などに影響する場合があります。

 例えば、衣服との摩擦によって痛みが増強する患者では、衣類の素材や着脱方法を調整することが考えられます。

 また、感覚低下を伴う患者では、皮膚損傷や熱傷などにも注意が必要です。

④ 疼痛教育と心理社会的支援

 神経障害性疼痛が長期間持続すると、不安、抑うつ、睡眠障害、活動への恐怖などが生じる場合があります。

 痛みの原因や特徴を説明し、無理のない活動量の調整や自己管理を支援することが重要です。

 なお、心理社会的要因が痛みを増強することはありますが、それによって痛みが心理的な原因だけで生じているという意味ではありません。

2026年のIASPの解説でも、運動や身体活動、心理的支援、日常生活への参加を含めた個別的な対応が重視されています。一方、個々の物理療法や徒手療法などには、効果に関するエビデンスが十分でないものもあります。

8.リハビリテーションで注意すること

 神経障害性疼痛の患者に介入する際には、次のような点に注意します。

① 痛みの原因を十分に検討する

 電撃痛やしびれがあっても、神経障害性疼痛と断定せず、関連する疾患や神経所見を確認します。

② 感覚低下と疼痛過敏の両方を評価する

 感覚が低下している部分でも、異常な疼痛が出現する場合があります。

③ 過剰な刺激を避ける

 アロディニアや強い痛覚過敏がある場合、通常の徒手的な刺激や運動でも痛みが増強することがあります。

④ 痛みだけでなく生活機能を評価する

 疼痛強度が大きく改善しない場合でも、睡眠、歩行能力、ADL、活動量などの改善が重要な治療成果になることがあります。

⑤ 新たな神経症状を見逃さない

 急激な筋力低下、進行性の感覚障害、膀胱直腸障害などが出現した場合は、新たな神経障害の可能性を考え、速やかに医師へ報告します。

9.侵害受容性疼痛との違い

 侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛の違いを以下にまとめます。

 ただし、痛みの表現だけで両者を明確に区別することはできません。

 また、両方の機序が同時に関与する混合性疼痛も存在します。

10.まとめ

 神経障害性疼痛とは、体性感覚神経系の病変または疾患によって生じる痛みです。

 末梢神経や中枢神経の障害によって、異常な神経活動や感覚情報処理の変化が生じ、灼熱痛、電撃痛、アロディニア、痛覚過敏などが現れることがあります。

 評価では、痛みの強さだけでなく、原因疾患、神経解剖学的な疼痛分布、感覚異常などを総合的に確認することが重要です。

 リハビリテーションでは、疼痛軽減だけでなく、運動機能、ADL、QOLの改善を目指し、患者の状態に合わせた介入を行います。

参考文献

  1. International Association for the Study of Pain(IASP). IASP Terminology: Neuropathic Pain.
  2. Finnerup NB, et al. Neuropathic pain: an updated grading system for research and clinical practice. Pain. 2016;157(8):1599–1606. DOI.
  3. Truini A, et al. Joint European Academy of Neurology–European Pain Federation–Neuropathic Pain Special Interest Group guidelines on neuropathic pain assessment. European Journal of Neurology. 2023;30:2177–2196. DOI.
  4. International Association for the Study of Pain. Identifying Neuropathic Pain in the Clinic: A Guide for Clinicians. 2026.
  5. International Association for the Study of Pain. Non-Medication Approaches to Help Manage Nerve Pain. 2026.

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