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ISWT(漸増シャトルウォーキングテスト)とは?実施方法・中止基準・結果の見方

 「歩行速度が上がると、どこまで対応できるのか」「歩行を続けられない理由は、息切れなのか、下肢の疲労なのか」。

 こうした運動耐容能を評価する方法の一つが、ISWT(Incremental Shuttle Walk Test:漸増シャトルウォーキングテスト)です。

 この記事では、ISWTの特徴、実施方法、結果の読み方、再評価の注意点を、リハビリテーションの臨床に沿って解説します。

ISWTとは

 ISWTは、音の合図に合わせて10mのコースを往復し、1分ごとに歩行速度を上げていく運動負荷試験です。自分でペースを決めるのではなく、音源で指定された速度に合わせる点が特徴です。

 主な評価指標は、終了までに完了した総歩行距離です。標準的な原法は12段階で構成されます。最大に近い運動負荷に至ることがあるため、実施前の適応判断と安全管理が必要です。[1,2]

6分間歩行試験・ESWTとの違い

 ISWTとESWTは同じコースを使用しますが、負荷のかけ方が異なります。評価目的に合わせて選択しましょう。[2,3]

ISWTに必要な準備

 標準化された専用音源と再生機器、コーン2個、距離を測る用具、記録用紙、ストップウォッチ、パルスオキシメーター、血圧計などを用意します。休息場所や緊急時の対応体制も整えます。

 コースは、平坦で障害物のない場所に設定します。10mのコースの両端から、それぞれ0.5m内側にコーンを置くため、コーン間は9mです。 コーンの周囲を回る折り返し部分を含めて、1区間を10mとして扱います。[1,3]

 専用音源は標準手順に対応するものを使用し、入手・利用条件を確認します。一般的な20mシャトルランの音源とは区別してください。[2,3]

ISWTの使用登録

 ISWTの日本語版を使用する際は、事前に使用登録を確認しましょう。長崎大学「夢塾」の公式案内では、日本語版シャトルウォーキング・テストの利用に使用登録が必要とされています。登録区分には「施設登録」と「個人登録」があります。[1]

施設登録と個人登録の違い

 施設登録では、登録した施設に所属する人が使用できます。退職者など、その施設に所属していない人は使用対象に含まれません。病院や事業所で導入する場合は、まず所属施設の登録状況を確認しましょう。[1]

 個人登録では、登録した本人が使用できます。所属先が変わっても本人は使用できますが、変更時は事務局への連絡が必要です。[1]

登録と申し込みの方法

 申し込みは、長崎大学「夢塾」の公式サイトにある「お問合せ」ページから、個人登録または施設登録の案内を確認して行います。登録区分に応じて、氏名・施設名、職種、送付先、連絡先などの必要事項を記載し、指定のメールアドレスへ送信します。[2]

 公式の申し込み先:senjyu@nagasaki-u.ac.jp(担当:千住秀明)
 申し込み案内:https://yumejuku.org/contact/

 評価セットの受け取り後、事務局の案内に従って料金を支払う流れです。費用や申込方法は変更される可能性があるため、申し込み時に公式ページの最新情報を確認してください。[1,2]

学会発表や論文で使用する場合

 公式案内では、学会・研究会・論文などで発表する場合にも、あらかじめ使用登録が必要とされています。個人登録を利用して同じ施設の人が発表する場合には、共同演者・共著者に関する条件も記載されているため、研究で使用する際は登録区分と発表条件を確認しましょう。[1]

ISWTの実施方法

1.検査前の状態を確認する

 病状の安定性、運動負荷試験の禁忌・注意事項、当日の症状を確認します。安静時の心拍数、血圧、SpO₂、息切れ、下肢疲労を記録し、歩行補助具や酸素療法の条件も残します。

 不安定な循環・呼吸状態などがある場合は、実施の可否を医師と確認します。酸素流量は担当者の判断だけで変更せず、処方と施設の手順に従います。[1]

2.音の合図に合わせて歩く

 検査の目的と方法を説明し、音の合図に合わせてコーンを回ることを確認します。

 開始後はゆっくりした速度から歩き、1分ごとの合図で速度を上げます。実施者は区間数を数えながら、歩行状態、症状、心拍数、SpO₂を観察します。声かけは標準手順に沿って行います。[1,4]

3.終了後の状態と回復を確認する

 終了時の歩行距離と中止理由を記録し、心拍数、SpO₂、息切れ、下肢疲労などを確認します。終了直後だけでなく、休息による回復も観察します。

 記録では「何m歩けたか」に加えて、「どのような反応で終えたか」が分かるようにしましょう。

ISWTの終了・中止基準

 患者さんが継続困難を訴えた場合や、安全に続けられないと実施者が判断した場合は終了します。

 速度については、合図の時点でコーンから0.5mを超えて離れた状態が、2区間連続した場合が終了の目安です。1回の遅れだけで直ちに終了とせず、標準手順に沿って対応します。[1]

 胸痛、ふらつき、冷汗、顔面蒼白、耐え難い呼吸困難などがあれば、距離の測定より安全確保を優先します。2014年のERS/ATS技術標準では、SpO₂が80%未満になった場合に実施者が中止することを示しています。ただし、これは80%まで継続してよいという意味ではありません。個別の指示や施設基準に従い、症状と測定値を合わせて判断します。[1]

結果の記録と読み方

総歩行距離を基本にする

 総歩行距離は、最後まで完了した10m区間の合計で記録します。例えば32区間を完了した場合は320mです。到達段階や実施時間も補助的に残すと、経過を把握しやすくなります。[1,2]

 臨床では、次の項目を一緒に整理すると役立ちます。

距離だけで原因を決めない

 歩行距離が短くても、それだけで心肺機能の低下とは断定できません。臨床的には、疼痛、歩行バランス、方向転換、音の理解などが成績に影響していないかも確認します。

 例えば、息切れより膝痛が先に強くなって終了した場合と、疼痛はなく息切れで終了した場合では、その後に追加する評価や介入の検討が変わります。

 ISWTは運動耐容能の評価に役立ちますが、制限要因の特定には、症状、身体所見、ほかの評価を組み合わせる必要があります。

再評価で気をつけること

学習効果を考慮する

 ISWTには、検査に慣れることで成績が変わる学習効果があります。ERS/ATS技術標準では2回実施し、良い方の距離を採用することを推奨しています。[1,5]

 同日に行う場合は少なくとも30分の間隔を空け、心拍数とSpO₂が検査前の状態へ戻ったことを確認します。30分経過したことだけで再開を判断しないようにします。[6]

 再評価時も、酸素療法、補助具、服薬のタイミング、コース、音源、声かけなどの条件をできるだけそろえ、変更点を記録します。

改善量は対象集団に合わせて解釈する

 COPD患者の呼吸リハビリテーションでは、臨床的に意味のある最小変化量(MID)として、約35~36mを示した報告があります。[2,7]

 ただし、この数値をすべての疾患・年齢・実施場面に共通する基準として使うことはできません。患者さん自身の変化の実感、症状、生活場面での歩行能力も合わせて判断します。

ISWTをリハビリテーションに生かす

 ISWTの結果は、運動耐容能の把握や介入前後の比較に活用できます。臨床では、距離に加えて、終了に至った症状や歩行の様子を整理すると、次の評価につながります。

 息切れが目立つ場合は呼吸・循環反応を、下肢疲労が目立つ場合は筋力や筋持久力を、方向転換で遅れる場合はバランスや歩行動作を追加して確認する、といった使い方が考えられます。

 「歩行速度が上がる条件で、どこまで対応できたか」と「何が継続を妨げたか」を合わせて捉えることが、ISWTを臨床に生かすポイントです。

参考文献・資料

1. Holland AE, et al. An official European Respiratory Society/American Thoracic Society technical standard: field walking tests in chronic respiratory disease. Eur Respir J. 2014;44:1428–1446. https://doi.org/10.1183/09031936.00150314

2. American Thoracic Society. Field Walking Tests. https://site.thoracic.org/assemblies/pr/outcome-measures/field-walking-tests

3. University Hospitals of Leicester NHS Trust. Pulmonary rehabilitation information for health professionals. https://www.uhleicester.nhs.uk/services/pulmonary-rehabilitation/pulmonary-rehabilitation-information-for-health-professionals/

4. Cambridge University Hospitals. Incremental Shuttle Walk Test. https://www.cuh.nhs.uk/our-services/lung-function-unit/incremental-shuttle-walk-test/

5. Singh SJ, et al. An official systematic review of the ERS/ATS: measurement properties of field walking tests in chronic respiratory disease. Eur Respir J. 2014;44:1447–1478. https://doi.org/10.1183/09031936.00150414

6. Holland AE, et al. How to carry out a field walking test in chronic respiratory disease. Breathe. 2015;11:128–139. https://publications.ersnet.org/content/breathe/11/2/128

7. Evans RA, Singh SJ. Minimum important difference of the incremental shuttle walk test distance in patients with COPD. Thorax. 2019;74:994–995. https://thorax.bmj.com/content/74/10/994

6分間歩行試験、Borgスケール、SpO₂、ESWT

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 運動負荷試験や歩行持久力評価の使い分けについては、「運動負荷試験・歩行持久力」の記事をご覧ください。

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