2分間歩行試験(2-minute walk test:2MWT)は、2分間に歩けた距離から歩行持久力や機能的な運動能力を把握する評価です。6分間歩行試験の実施が負担となる場合などに、短時間で歩行能力を確認する選択肢になります。[1]
ただし、歩行距離には心肺機能だけでなく、麻痺、筋力、バランス、疼痛、方向転換能力なども影響します。本記事では、測定の進め方、安全管理、結果の解釈、他の歩行試験との使い分けを解説します。
2分間歩行試験で何がわかるか
主要な結果は2分間歩行距離(2MWD)で、単位はmです。できるだけ長い距離を歩くように説明し、対象者が自分で速度を調整します。専用音源に合わせて歩行速度を変えるシャトルウォーキングテストとは方法が異なります。[1]
歩行距離に加えて、息切れ、下肢疲労、休憩の有無、歩容の変化を観察すると、距離を制限している要因を検討しやすくなります。2MWTだけで最大酸素摂取量や心肺疾患の重症度を確定することはできません。
どのような対象者に用いるか
虚弱高齢者、下肢切断者、脳卒中や多発性硬化症などの神経疾患、呼吸器疾患をもつ人などで検討されています。ただし、信頼性や妥当性の根拠は対象集団によって異なります。[1,3]
短時間の検査が適している人でも、安全に実施できることが前提です。補助具を使用しての実施は可能ですが、身体的な歩行介助を必要とする場合は、標準的な結果や参考値との比較に注意が必要です。安全確保のために介助した場合は、その内容を必ず記録します。[1]
準備する物品と測定環境
平坦で障害物のない歩行路、距離を測るメジャー、折り返し位置を示すコーン、ストップウォッチ、記録用紙、休息用の椅子を用意します。臨床では血圧計やパルスオキシメータなども、対象者の状態に応じて準備します。[1,2]
歩行路には複数の設定があり、30mの直線路を推奨する手順もあります。一方、研究では約15~30mの往復路などが用いられています。30mを確保できない場合も、実際の片道距離、折り返し方法、測定条件を記録して、再評価でそろえることが大切です。[2,5]
2分間歩行試験の測定方法
以下は臨床で手順をそろえるための実施例です。2MWTにはプロトコルの違いがあるため、研究の参考値を用いる場合は、その研究の歩行路、指示、声かけ、練習回数などを確認してください。[3,5]
1 実施前の確認
医師の指示、運動制限、全身状態、疼痛、転倒リスクを確認します。十分に座位で休息し、心拍数、血圧、必要に応じてSpO₂、息切れや疲労の程度を記録します。NIHの公開手順では、測定前に少なくとも10分間の安静を設けています。[2]
靴、杖、歩行器、装具、酸素療法の条件を確認します。処方された酸素は指示どおり使用し、流量、投与機器、運搬方法を記録します。比較のために酸素条件を無理に維持するのではなく、必要な処方変更を優先し、変更を記録してください。
2 対象者への説明
「これから2分間、走らずに、できるだけ長い距離を歩いてください。コーンの所で折り返します。疲れたら立ち止まって休んでも構いません。休んでいる間も時間は進みます。再び歩けそうなら再開してください。胸の痛みや強い息苦しさ、めまいなどが出たら、すぐに教えてください。」
上記は記事用に作成した説明例です。折り返しを実演して、指示の理解を確認します。強い症状が出た場合は、安全上の中止判断を優先します。
3 歩行を開始して観察する
開始の合図とともに計時し、2分間の歩行を測定します。検者が前方を歩いてペースを作らないようにし、必要な見守りを行います。通過した区間数を数え、方向転換、ふらつき、歩行補助具の使用状況なども観察します。
声かけの内容と時点はあらかじめ決めて統一します。例えば残り1分を伝える方法がありますが、採用するプロトコルに合わせます。対象者によって励ましの頻度を変えると、結果を比較しにくくなります。[5]
4 休憩と終了時の対応
一時的に休憩しても計時を続け、再開した場合はその後の距離も含めます。休憩の回数、時間、理由を記録してください。2分経過時に合図を出し、停止位置までの端数距離を測定します。安全上の理由で途中中止した場合は、実施時間とその時点の距離を記録し、2分完遂時の距離と区別します。
終了直後に症状とバイタルサインを確認し、回復まで観察します。SpO₂を測定する場合は、可能なら歩行中の変化も確認し、体動による誤測定や信号不良に注意します。
歩行距離と記録のポイント
総距離は、歩き終えた区間の距離に、最後の区間の途中まで進んだ距離を加えて求めます。例えば片道30mを5区間歩き、最後に8m進んだ場合、総距離は158mです。「1周」が片道なのか往復なのかを決めておくと、数え間違いを防ぎやすくなります。
| 記録する項目 | 具体的な内容 |
| 主要な結果 | 総歩行距離、2分完遂の有無、中止時の実施時間 |
| 歩行の条件 | 歩行路の長さ、靴、補助具、装具、見守りや介助の内容 |
| 酸素療法 | 流量、投与機器、機器の運搬方法、変更の有無 |
| 身体反応 | 心拍数、血圧、必要に応じたSpO₂、息切れ、疲労、回復状況 |
| 検査中の出来事 | 休憩回数と時間、休憩や中止の理由、疼痛、ふらつき |
| 再評価の条件 | 日時、服薬との関係、声かけ、練習と測定回数、採用値 |
安全管理と中止を考える所見
2分間という短さだけで、低負荷で安全な検査と判断しないでください。対象者によっては速い歩行を行うため、相応の負荷がかかります。急性増悪や不安定な循環動態が疑われる場合は、実施の可否を医師に確認します。
胸痛、強い呼吸困難、めまい、冷汗、顔面蒼白、意識状態の変化、著しいふらつき、新たな強い下肢痛などが出現した場合は中止し、状態を評価します。血圧、心拍数、SpO₂などの開始・中止条件は、基礎疾患や医師の指示、施設の運動負荷試験基準に沿って事前に定めます。[2]
本記事では、6分間歩行試験の基準をそのまま「2MWT共通の絶対基準」として提示していません。SpO₂などの単一の数値だけで判断せず、症状、変化の速さ、測定の信頼性を合わせて確認します。
正常値やカットオフ値はあるか
すべての対象者に共通する正常値や、歩行自立・退院可否を一律に決めるカットオフ値はありません。成人の原著研究では年齢などとの関連が報告されており、参考値を使う場合は対象集団と測定条件を確認する必要があります。[4]
海外の健常成人の値を、日本の入院患者や要介護高齢者の合否判定にそのまま使うことは避けます。療養病棟などでは、同じ人の条件をそろえた経時変化と、日常生活で必要な歩行の達成状況を組み合わせると解釈しやすくなります。
改善したかをどのように判断するか
距離が伸びても、測定への慣れ、声かけ、補助具、酸素条件、当日の体調などが影響した可能性があります。距離の変化に加えて、息切れや休憩、歩容、実生活の変化を確認します。
最小可検変化量(MDC)は測定誤差を超えた変化の目安、臨床的に重要な最小変化量(MCID)は患者にとって意味のある変化の目安です。両者は異なり、疾患や対象集団の違う数値を流用できません。2MWTの測定特性は集団によって異なるため、「何m伸びれば必ず改善」と一律には判断しません。[3]
結果の記載例
以下は例です。
「2MWDは前回86m、今回101m。いずれも20m往復路、同じ歩行器と靴を使用し、酸素条件と声かけを統一。休憩は前回1回、今回はなし。終了時の息切れは同程度。距離の増加と休憩の減少がみられたが、測定誤差を超える変化か、生活上の改善につながるかは追加評価する。」
他の歩行試験との違い
| 検査 | 主に確認する内容 | 使い分けの視点 |
| 2MWT | 2分間の歩行距離 | 短時間で歩行持久力を把握する選択肢 |
| 6MWT | 6分間の歩行距離 | より長く歩いたときの症状や反応を確認 |
| 10m歩行試験 | 一定区間の歩行速度 | 短距離の速度や歩行能力を確認 |
| ISWT | 音源に合わせた漸増負荷での歩行成績 | 外部から速度を規定する運動負荷を評価 |
| ESWT | 設定した一定速度での持続時間など | 一定の負荷に対する持久性を評価 |
2MWTの距離を3倍しても、6MWTを実施した結果にはなりません。2分以降の速度低下、休憩、息切れや酸素化の変化を反映できないためです。また、6MWTの最初の2分間の距離も、最初から2分間の検査として説明した2MWTとは、ペース配分が異なる可能性があります。
2分間歩行試験の限界
短時間で測定できる反面、長い歩行で現れる疲労や症状を捉えにくいことがあります。また、短い往復路では方向転換の影響を受けやすく、麻痺、疼痛、バランス障害なども距離を制限します。距離の低下を心肺機能の低下だけで説明しないことが大切です。
使用許可やライセンスについて
Shirley Ryan AbilityLabの公開情報では、2MWTの費用は無料とされています。今回確認した資料では、一般的な2MWTの実施について、事前登録を求める案内は確認されません。[1]
ただし、検査の実施と、第三者が作成した説明文、記録用紙、図表、尺度の転載・配布は分けて確認します。既存資料をそのままブログや販売教材に掲載する場合は、提供元の利用条件を確認し、必要に応じて許諾を取得してください。米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の評価資料一覧にも、一部の資料には著作権や追加の許諾確認が必要との案内があります。[6]
まとめ
2分間歩行試験は、短時間で歩行持久力を把握する方法です。歩行路、補助具、酸素条件、指示や声かけをそろえ、距離と症状を合わせて記録しましょう。再評価では測定条件の違いを確かめ、日常生活で歩ける範囲や必要な介助量の変化にもつなげて解釈します。
参考文献と公開資料
[1]Shirley Ryan AbilityLab. 2 Minute Walk Test. RehabMeasures Database. https://www.sralab.org/rehabilitation-measures/2-minute-walk-test
[2]NIH NIEHS / IMACS. 2 Minute and 6 Minute Walk Test Instructions. Version 1, June 2025. https://www.niehs.nih.gov/sites/default/files/2025-08/2mwt_6mwt_instructions_508.pdf
[3]Pin TW. Psychometric properties of 2-minute walk test: a systematic review. Arch Phys Med Rehabil. 2014;95(9):1759–1775. doi:10.1016/j.apmr.2014.03.034. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24814460/
[4]Bohannon RW, Wang YC, Gershon RC. Two-minute walk test performance by adults 18 to 85 years: normative values, reliability, and responsiveness. Arch Phys Med Rehabil. 2015;96(3):472–477. doi:10.1016/j.apmr.2014.10.006. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25450135/
[5]Bohannon RW. Normative reference values for the two-minute walk test derived by meta-analysis. J Phys Ther Sci. 2017;29(12):2224–2227. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpts/29/12/29_jpts-2017-467/_article
[6]NIH NIEHS. Other Tools. https://www.niehs.nih.gov/research/resources/imacs/othertools
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