Motricity Index(モトリシティ・インデックス:MI)は、脳卒中後の上肢・下肢の運動麻痺を、代表的な動作の筋力から評価する方法です。Demeurisseらが1980年に報告しました。PubMed
上肢3項目、下肢3項目で構成され、麻痺側の筋力を把握し、経過を記録する際に役立ちます。一方、手先の器用さや動作の滑らかさ、日常生活での使いやすさまでを、MIだけで判断することはできません。
Motricity Indexの評価項目
MIでは、上肢・下肢の近位・中間・遠位を代表する、次の6つの動作を評価します。
| 部位 | 評価項目 | 確認する動作 |
|---|---|---|
| 上肢 | つまみ動作 | 母指と示指で立方体をつまむ |
| 上肢 | 肘関節屈曲 | 肘を曲げる |
| 上肢 | 肩関節外転 | 上腕を身体の外側へ上げる |
| 下肢 | 足関節背屈 | 足先を上へ持ち上げる |
| 下肢 | 膝関節伸展 | 膝を伸ばす |
| 下肢 | 股関節屈曲 | 大腿を持ち上げる |
各項目は最大33点で、点数が高いほど、その動作で発揮できる筋力が保たれていることを示します。PMC
評価に必要な物品と準備
一辺約2.5cmの立方体、安定して座れる椅子またはベッド、記録用紙を準備します。
基本は座位で行い、体幹を安定させ、評価する関節の動きが確認できるようにします。実施前には、指示の理解、疼痛、関節可動域、疲労、座位保持の状態も確認します。
運動が行えない場合は、筋力低下だけでなく、失語や失行、疼痛などが影響していないかを検討します。
各項目の評価方法
以下は手順の要点です。実際の評価では、採用する評価用紙と実施手順を統一してください。
| 項目 | 評価方法の要点 |
|---|---|
| つまみ動作 | 母指と示指で立方体をつまみ、持ち上げて保持できるか、軽く引かれても保持できるかを確認する |
| 肘関節屈曲 | 肘を約90度曲げた位置を基本に、肘を曲げる力を確認する |
| 肩関節外転 | 肘を曲げ、上腕を胸郭の近くに置いた状態から、上腕を外側へ上げてもらう |
| 足関節背屈 | 足関節を底屈させた位置から、足先を上げてもらう |
| 膝関節伸展 | 座位で膝を約90度曲げた位置から、膝を伸ばしてもらう |
| 股関節屈曲 | 座位で股関節を約90度曲げた位置から、大腿をさらに持ち上げてもらう |
筋収縮の有無、重力に抗した運動、抵抗への反応を確認します。体幹の傾きなどによる代償にも注意します。なお、つまみ動作は、握力計による測定や手全体で物を握る動作とは異なります。
採点方法
MIは、MRCの筋力段階を基に、重みを付けて点数化しています。つまみ動作と、その他5項目では配点が異なります。
以下は採点基準を理解するための日本語による要約であり、検証済みの日本語版評価票ではありません。
つまみ動作の配点
| 点数 | 判定の要点 |
|---|---|
| 0 | 指の動きがみられない |
| 11 | つまもうとする動きが始まり、母指または示指に動きがある |
| 19 | 立方体をつまめるが、重力に抗して保持できない |
| 22 | 立方体を持ち上げて保持できるが、軽く引かれると保持できない |
| 26 | 軽く引かれても保持できるが、反対側・正常な力と比べて弱い |
| 33 | 正常なつまみの力がある |
その他5項目の配点
| 点数 | 判定の要点 |
|---|---|
| 0 | 筋収縮・運動が認められない |
| 9 | 筋収縮を触知できるが、関節運動は起こらない |
| 14 | 関節運動はあるが、重力に抗した全可動域の運動には至らない |
| 19 | 重力に抗して全可動域を動かせるが、抵抗には抗せない |
| 25 | 抵抗に抗して動かせるが、反対側・正常な力と比べて弱い |
| 33 | 正常な筋力がある |
一般的なMMTの数字をそのまま合計せず、MIの所定の配点を使用します。
合計点の計算方法
上肢・下肢は、それぞれ3項目の単純合計では0~99点です。100点満点で表示するため、各肢の合計に1点を加える方式が使われます。
| スコア | 計算式 |
|---|---|
| 上肢 | つまみ動作+肘関節屈曲+肩関節外転+1 |
| 下肢 | 足関節背屈+膝関節伸展+股関節屈曲+1 |
| 片側 | (上肢スコア+下肢スコア)÷2 |
例えば、つまみ動作22点、肘関節屈曲25点、肩関節外転19点の場合、上肢スコアは次のようになります。
22+25+19+1=67点
上肢と下肢を合計した値を、そのまま片側スコアと記載しないように注意します。
「99点満点」と「100点満点」の扱いに注意
資料によって、3項目の単純合計で示すものと、1点を加えるものがあります。2025年のイタリア語版の研究では、合計99点の場合にのみ1点を加える手順が採用されています。
常に1点を加える式では、3項目すべてが0点でも合計は1点になります。そのため「0~100点」という説明だけで判断せず、使用する評価票の規則を確認する必要があります。PMC
記録には、例えば「上肢67点〈3項目合計+1方式〉」と計算方式を明示し、経過比較では同じ方式を使用しましょう。
結果の見方
合計点と各項目の両方を確認する
同じ合計点でも、肩・股関節など近位の筋力が弱い場合と、手指・足関節など遠位の筋力が弱い場合では、動作への影響が異なります。
合計点に加えて、どの項目が低いか、何ができるようになったかを確認します。
例えば足関節背屈が14点から19点になった場合は、重力に抗して全可動域を動かせる段階へ変化したことを意味します。ただし、歩行中のつま先の引っかかりが改善したかは、実際の歩行で確認する必要があります。
点数を「回復率」として扱わない
MIは点数の間隔が均等ではない順序尺度です。80点だからといって「正常の80%まで回復した」とは解釈できません。
同じ点数差でも、変化した項目と運動段階を確認することが大切です。PMC
MIだけで歩行・ADLの自立を判断しない
MIが高くても、感覚障害、バランス障害、注意障害、失行、持久力低下などにより、生活動作に介助を要する場合があります。
臨床では、歩行評価、上肢の活動評価、FIMやBarthel Indexなどと組み合わせ、筋力の変化が生活動作にどうつながっているかを確認します。
評価時の注意点
- 疼痛・拘縮の影響を記録する
動かせない理由が、筋力低下だけとは限りません。 - 指示理解を確認する
課題を理解できず実施できない場合は、直ちに筋力0点と解釈しないようにします。 - 反対側の状態も確認する
両側に筋力低下がある場合は、左右が同程度という理由だけで正常と判断しないようにします。 - 再評価の条件をそろえる
姿勢、支持、抵抗の加え方、声かけをできるだけ統一します。
MIの信頼性は研究で検討されていますが、測定誤差は存在します。わずかな点数変化だけで改善・悪化を断定せず、実際の運動と併せて確認しましょう。PMC
記録例
以下は記録例です。
右片麻痺。MI右上肢67点〈つまみ22、肘屈曲25、肩外転19〉、右下肢70点〈足背屈19、膝伸展25、股屈曲25〉、右側スコア68.5点。各肢は3項目合計+1方式。座位で実施。足背屈は抵抗に抗せず、歩行時の足部クリアランスを別途確認する。
合計点だけでなく、各項目の点数、計算方式、実施条件、動作上の特徴を残すと、再評価や情報共有に役立ちます。
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参考文献
- Demeurisse G, Demol O, Robaye E. Motor evaluation in vascular hemiplegia. Eur Neurol. 1980;19(6):382–389. DOI
- Collin C, Wade D. Assessing motor impairment after stroke: a pilot reliability study. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1990;53(7):576–579. 本文
- Longo D, et al. Development of the Italian version of the Motricity Index and evaluation of its reliability in adults with stroke. J Rehabil Med. 2025;57:40441. 本文

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