痛みの強さを確認するとき、患者さんから「数字で表すのは難しい」と言われることがあります。
VRS(Verbal Rating Scale)は、痛みの強さを表す言葉の中から、自分の状態に最も近いものを選んでもらう評価方法です。
「少し痛む」「かなり痛む」など、日常的な言葉で回答できるため、数字や線を使う評価方法では答えにくい患者さんにも、選択肢の一つとなります。
この記事では、VRSの評価方法、結果の解釈、NRS・VASとの違い、リハビリテーションでの活用について解説します。
VRSとは
VRSは、痛みの強さを段階的な言葉で評価する、患者さんの自己申告に基づく尺度です。
日本語では「言語評価尺度」などと呼ばれます。評価者が表情や動作から点数を決めるのではなく、患者さん自身が選んだ言葉を記録することが基本です。
VRSには複数の形式があり、選択肢の数や表現は統一されていません。日本ペインクリニック学会では、次の4段階が紹介されています。
| 点数 | 痛みの強さを表す言葉 |
|---|---|
| 0 | 痛くない |
| 1 | 少し痛む |
| 2 | かなり痛む |
| 3 | 耐えられない程痛む |
※本記事では、この4段階を用いて説明します。使用する評価用紙や施設の運用が異なる場合は、その選択肢と採点方法を確認してください。
VRSで評価できること
VRSで評価するのは、患者さんが感じている痛みの強さです。
安静時や動作時の痛み、治療前後の変化などを確認するときに使用します。
一方、VRSだけでは、痛みの原因や性質、生活への影響までは判断できません。「どこが痛むか」「どのように痛むか」「何をすると困るか」も、別に確認する必要があります。
例えば、同じ「少し痛む」という回答でも、歩行に支障がない人と、痛みへの不安から外出を控えている人では、対応すべき課題が異なります。
VRSの評価方法
1.評価する部位と場面を決める
最初に、どこの痛みを、どのような場面で評価するのかを明確にします。
例えば、次のように条件を分けます。
- 右膝の安静時痛
- 右膝の立ち上がり時痛
- 右膝の歩行時痛
複数の部位に痛みがある場合は、部位ごとに質問します。
また、「今の痛み」「過去24時間で最も強かった痛み」など、対象となる時間もそろえることが大切です。
2.すべての選択肢を伝える
患者さんに、痛みの強さを表す選択肢を提示します。
質問例
今、右膝を動かさずに休んでいるときの痛みについて教えてください。
「痛くない」「少し痛む」「かなり痛む」「耐えられない程痛む」の中で、最も近いものはどれですか?
口頭で伝えるほか、選択肢を紙に書いて示す方法もあります。発話が難しくても、言葉の意味を理解して指差しで選べる場合は、自己申告として回答してもらえます。
「少し痛むくらいですか?」など、特定の回答へ誘導する聞き方は避けます。
3.回答を言葉と点数で記録する
患者さんが選んだ言葉と、対応する点数を記録します。
例えば、「かなり痛む」を選んだ場合は、次のように記載します。
右膝・立ち上がり時:VRS 2「かなり痛む」
使用尺度:4段階、0~3点
点数だけでなく、選択した言葉も残すことで、使用した尺度や回答の意味を共有しやすくなります。
結果の見方と注意点
点数が高いほど、強い痛みを示す
本記事の4段階では、点数が高いほど、患者さんが強い痛みを感じていることを示します。
ただし、その点数だけで組織損傷の程度や疾患の重症度、運動の可否を決めることはできません。診察所見や動作の状態などと合わせて解釈します。
点数の間隔が同じとは限らない
VRSは、痛みの強さに順序がある「順序尺度」です。
「痛くない」から「少し痛む」への違いと、「かなり痛む」から「耐えられない程痛む」への違いが、同じ大きさとは限りません。
そのため、VRSが2から1になっても、「痛みが半分になった」とは解釈できません。数字は、選んだカテゴリーを表すために用います。
同じ点数でも、痛みが変化している場合がある
選択肢が少ないVRSでは、細かな変化が点数に表れない場合があります。
例えば、介入前後とも「かなり痛む」であっても、患者さんは「さっきより楽になった」と感じていることがあります。
点数に加えて、本人が感じた変化や動作の様子も確認します。言語尺度と数値尺度の反応性を比較した研究もあり、変化の捉え方は使用する尺度によって異なります。
継続評価では、選択肢をそろえる
VRSには4段階だけでなく、5段階などの形式もあります。
途中で選択肢の数や言葉を変えると、前回との比較が難しくなります。継続して評価するときは、同じ選択肢・同じ評価条件で確認することが基本です。
NRS・VASとの違い
VRS・NRS・VASは、いずれも痛みの強さを自己申告してもらう方法ですが、回答の表し方が異なります。
| 評価方法 | 回答の方法 | 使用時に確認したいこと |
|---|---|---|
| VRS | 痛みの強さを表す言葉を選ぶ | 選択肢の意味や程度の違いを理解できるか |
| NRS | 通常、0~10の数字を選ぶ | 痛みの強さを数字に置き換えられるか |
| VAS | 通常、100mmの線上に痛みの位置を示す | 線の意味を理解し、位置を示せるか |
なお、口頭で0~10の数字を答えてもらう方法はNRSです。声に出して答えること自体が、VRSの特徴ではありません。
VRSの点数をNRSの点数に、そのまま換算することも避けます。「VRS 2だからNRSでは必ず○点」といった、一律の対応関係はありません。
高齢者や認知機能が低下した患者さんへの使用
数字で痛みを表すことが難しくても、言葉の選択肢であれば回答できる場合があります。高齢者の疼痛評価でも、VRSやNRSなどを用いた自己申告の確認が示されています。
ただし、高齢者や認知症のある患者さんなら、必ずVRSを使用できるわけではありません。
実施時には、次の点を確認します。
- 質問や選択肢の意味を理解できているか
- 選択肢の程度の違いを区別できているか
- 聴力や視力に合わせた提示になっているか
- 対象となる部位や場面を理解できているか
自己申告が難しい場合は、無理にVRSの点数をつけず、表情、発声、動作、介助への反応なども確認し、対象に適した観察式の疼痛評価を検討します。
回答できないことを「痛みがない」と判断しないことが大切です。
リハビリテーションでの活用
安静時痛と動作時痛を分ける
安静時には痛くなくても、立ち上がりや歩行で痛みが出る場合があります。
リハビリテーションでは、安静時の評価に加えて、問題となる動作での痛みを確認します。
例えば、「歩行時痛」だけでなく、歩行距離、歩行補助具、介助条件なども記録すると、次回との比較に役立ちます。
介入前後は同じ条件で確認する
介入効果を確認するときは、可能な範囲で姿勢、動作、負荷、評価のタイミングをそろえます。
また、鎮痛薬の使用状況など、痛みに影響する条件も記録します。
痛みと活動の変化を合わせて捉える
VRSの改善だけでなく、患者さんが行える動作や生活の変化も確認します。
例えば、痛みのカテゴリーが変わらなくても、歩ける距離が伸びた、立ち上がりが楽になったといった変化は、リハビリテーションの経過を考えるうえで大切な情報です。
VRSの記録例
以下は、記録方法を示す架空の例です。
評価尺度:VRS 4段階(0~3点)
0:痛くない、1:少し痛む、2:かなり痛む、3:耐えられない程痛む
評価部位:右膝
安静座位:0「痛くない」
椅子からの立ち上がり:2「かなり痛む」
T字杖を使用した平地10m歩行:1「少し痛む」
介入後の再評価
同じ椅子からの立ち上がり:1「少し痛む」
本人より「立つときが先ほどより楽」との発言あり。
このように、尺度の形式、回答した言葉、部位、動作条件を残すことで、経過を共有しやすくなります。
まとめ
VRSは、痛みの強さを表す言葉から、自分の状態に最も近いものを選んでもらう評価方法です。
使用時には、選択肢の数と言葉を確認し、継続評価では同じ条件を用います。また、点数だけでなく患者さんが選んだ言葉も記録し、痛みの性質や生活への影響、動作の変化と合わせて解釈することが大切です。
参考文献・参考資料
- 日本ペインクリニック学会.痛みの基礎知識:痛みの診断と評価
- British Pain Society/Faculty of Pain Medicine.Outcome Measures(2019)
- Comparative responsiveness of verbal and numerical rating scales to measure pain intensity in patients with chronic pain
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