NRS(Numerical Rating Scale)は、痛みの強さを数字で表す自己評価尺度です。
一般的には、0を「痛みなし」、10を「想像できる最も強い痛み」とする、0~10の11段階で評価します。va.gov
短時間で確認でき、口頭でも実施できるため、リハビリテーション前後や安静時・動作時の痛みの把握に役立ちます。
ただし、NRSで評価するのは痛みの強さです。痛みの原因や性質、生活への影響については、別に確認する必要があります。
NRSで何がわかる?
NRSは、本人が感じている痛みの強さを数値で共有し、経過を追うために使用します。
| 評価場面 | 確認する内容 |
|---|---|
| 初回評価 | 対象となる痛みの強さ |
| 安静時・動作時 | どの場面で痛みが強くなるか |
| 介入前後 | 同じ条件で痛みがどう変化したか |
| 継続評価 | 数日・数週間での推移 |
数値になっていても、組織損傷の大きさを直接測定しているわけではありません。
また、別の患者さんの数値と単純に比較するのではなく、同じ患者さんの経過を中心に捉えることが大切です。
NRSの評価方法
1.評価する部位・場面・期間を決める
何について答えてもらうのかを、明確にします。
- 今の右膝の安静時痛
- 椅子から立ち上がるときの腰痛
- 過去24時間の平均的な痛み
- 過去24時間で最も強かった痛み
「現在の痛み」と「過去24時間の最大痛」では、評価している内容が異なります。経過を比較するときは、同じ質問を使用しましょう。
2.0と10の意味を説明する
説明例は次のとおりです。
痛みがまったくない状態を0、想像できる最も強い痛みを10とします。今の右膝の痛みは、0から10の整数でいうと、いくつくらいですか?
0~10の数字を並べた用紙を示し、指さしで答えてもらう方法もあります。
10の説明には複数の表現がありますが、同じ患者さんの経過をみる際には、説明の表現を揃えます。va.gov
3.本人の回答をそのまま記録する
NRSは本人による自己評価です。評価者が表情や動作を見て、点数を修正しないようにします。
「歩けているから3点くらいですね」など、回答を誘導する聞き方は避けましょう。
数字を選びにくい場合は説明の理解を確認し、必要に応じて別の尺度を検討します。評価者が推測した数値を、本人のNRSとして記録してはいけません。
安静時痛と動作時痛は分けて評価する
リハビリテーションでは、安静時の痛みが軽くても、立ち上がりや歩行で痛みが強くなることがあります。
そのため、実際の活動と結びつけて確認することが大切です。
| 評価場面 | 記録例 |
|---|---|
| 安静時 | 椅子座位で右膝痛NRS 1/10 |
| 立ち上がり時 | 肘掛けを使わない立ち上がりでNRS 5/10 |
| 歩行時 | 杖使用、平地20m歩行でNRS 4/10 |
※数値は例です。
介入前後で比較する場合は、次の条件を可能な範囲で揃えます。
- 姿勢や椅子の高さ
- 動作の方法や回数
- 歩行距離・速度
- 補助具や介助量
- 評価するタイミング
負荷条件が変わった場合は、その変更も記録しましょう。
NRSの結果の見方
点数だけで重症度や運動の可否を決めない
NRSが高いほど、本人が強い痛みを感じていると解釈します。
ただし、軽度・中等度・重度の区切りは、対象疾患や評価条件によって異なります。すべての患者さんに共通する絶対的な境界として扱わないことが大切です。britishpainsociety.org
また、「NRSが何点以下なら運動してよい」と一律には判断できません。
病態、術後の制限、痛みの出方、随伴症状、動作後の経過などと合わせて検討します。
変化量と変化率を確認する
慢性疼痛の研究では、0~10のNRSでおよそ2点、または約30%の低下が、患者さんにとって意味のある改善に対応したと報告されています。pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
IMMPACTの提言では、個人の痛みの強さの変化について、次の目安が示されています。
| 痛みの低下率 | 改善の目安 |
|---|---|
| 30%以上 | 中等度の重要な改善 |
| 50%以上 | 大きな改善 |
これらは主に慢性疼痛の臨床試験における解釈の目安です。すべての疾患・測定場面にそのまま適用できる合否基準ではありません。immpact.org
「2点下がれば必ず改善」「1点の変化には意味がない」と、機械的に判断しないようにしましょう。
痛みの低下率は、次のように計算します。
痛みの低下率(%)=(介入前NRS-介入後NRS)÷介入前NRS×100
例えば、6点から4点へ変化した場合は、2点の低下、約33%の低下です。
※介入前が0点の場合、この式では計算できません。
動作や生活の変化も確認する
痛みの強さと、生活への影響は別の側面です。NRSだけでは、痛みによる活動制限や生活の困りごとを十分に把握できません。pmc.ncbi.nlm.nih.gov
例えば、NRSが変わらなくても、歩行距離が伸びたり、夜間の睡眠が改善したりすることがあります。
反対に、痛みが下がっていても、活動を避けて生活範囲が狭くなっている場合があります。
「痛みが何点か」に加えて、「何ができるようになったか」も確認しましょう。
NRSの記録方法
「NRS 5」とだけ記載すると、評価した部位や条件が伝わりません。
次の内容を添えると、経過を比較しやすくなります。
| 記録する内容 | 例 |
|---|---|
| 部位・左右 | 右膝、左肩、腰部 |
| 評価場面 | 安静座位、立ち上がり、歩行 |
| 対象期間 | 現在、過去24時間の平均 |
| 動作条件 | 椅子の高さ、歩行距離、補助具 |
| 評価時点 | 運動前、終了5分後 |
| 関連情報 | 鎮痛薬の使用時刻、動作への影響 |
記録例
以下は記録例です。
右膝痛。安静座位でNRS 1/10。高さ40cmの椅子から、上肢支持なしで立ち上がる際にNRS 6/10。運動療法終了5分後、同条件の立ち上がりでNRS 4/10。本人より「立つときに体重をかけやすい」との発言あり。
この記録は、その時点での変化を示すものです。効果が持続しているか、介入だけによる変化かどうかは、継続して確認します。
NRS・VAS・VRSの違い
| 尺度 | 回答方法 | 特徴 |
|---|---|---|
| NRS | 0~10などの数字を選ぶ | 口頭や指さしで回答できる |
| VAS | 通常100mmの線上に印をつける | 一端から印までの距離を測定する |
| VRS | 「痛くない」「少し痛い」などの言葉を選ぶ | 数字での回答が難しい場合の選択肢になる |
いずれも痛みの強さを評価する方法ですが、回答形式が異なります。britishpainsociety.org
経過を追うときは同じ尺度を使用し、変更した場合は明記します。NRS 5/10とVAS 50mmを、同じ測定値として扱わないようにしましょう。
認知機能低下や失語がある場合の注意点
認知症や失語があることだけを理由に、自己評価ができないと決めつけないことが大切です。
数字の意味や説明を理解できるか、指さしなどで回答できるかを確認します。軽度~中等度の認知機能低下があっても、NRSや言語による尺度を使用できる場合があります。PMC
自己評価が難しい場合は、対象に適した観察式疼痛尺度などを検討し、表情、発声、動作時の防御反応、普段との行動の違いなどを確認します。
「回答できない」ことを「痛みなし=0点」と扱わないようにしましょう。
まとめ
NRSは、痛みの強さを0~10の数字で共有する、簡便な自己評価尺度です。
部位・場面・期間を明確にし、同じ条件で繰り返し評価することで、経過を把握しやすくなります。
リハビリテーションでは、NRSに加えて動作や生活の変化も確認し、患者さんにとって意味のある改善を捉えていきましょう。
参考文献・資料
- Department of Veterans Affairs. Numeric Pain Rating Scale.
- British Pain Society. Outcome Measures. 2019.
- Farrar JT, et al. Clinical importance of changes in chronic pain intensity measured on an 11-point numerical pain rating scale. Pain. 2001;94(2):149–158.
- Dworkin RH, et al. Interpreting the clinical importance of treatment outcomes in chronic pain clinical trials: IMMPACT recommendations. J Pain. 2008;9(2):105–121.
- Nugent SM, et al. Associations of Pain Numeric Rating Scale Scores Collected during Usual Care with Research Administered Patient Reported Pain Outcomes.
- Schofield P. The Assessment of Pain in Older People: UK National Guidelines. Age Ageing. 2018;47(suppl_1):i1–i22.
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