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痛みとは?IASPの定義と6つの補足事項をわかりやすく解説

 痛みは、リハビリテーションの場面でよく出会う症状です。動作や運動を妨げるだけでなく、睡眠や気分、日常生活にも影響します。

 しかし、患者さんの痛みを、画像所見や身体の状態だけで十分に説明できるとは限りません。

 痛みを理解するためには、身体に起きている変化とともに、その人がどのように痛みを体験しているかを捉えることが大切です。

 この記事では、国際疼痛学会(IASP)の定義をもとに、痛みの基本的な考え方とリハビリテーションでの視点を解説します。

IASPによる痛みの定義

 国際疼痛学会(International Association for the Study of Pain:IASP)は、2020年に痛みの定義を改訂しました。

 日本疼痛学会による日本語訳では、次のように示されています。

 実際の組織損傷もしくは組織損傷が起こりうる状態に付随する、あるいはそれに似た、感覚かつ情動の不快な体験

 出典:日本疼痛学会「痛みの定義2020 日本語訳」。

 この定義を理解するうえでは、「感覚と情動」「組織損傷との関係」「個人的な体験」という点が重要です。

痛みには感覚と情動が含まれる

 痛みには、場所や強さ、性質といった感覚の側面があります。

 例えば、「右膝が痛い」「ズキズキする」「焼けるように痛む」といった表現です。

 一方で、痛みは不快さやつらさを伴う体験でもあります。「このまま治らないのではないか」「動くと悪くなるのではないか」という不安や恐怖が、痛みの体験に関わることもあります。

 身体の状態に加えて、こうした気持ちにも目を向ける必要があります。

明らかな組織損傷が確認できなくても痛みは生じる

 定義にある「あるいはそれに似た」という表現は、痛みを組織損傷のある場合だけに限定しないために重要です。

 検査で痛みを十分に説明できる異常が見つからない場合でも、その人が痛みを体験していることはあります。

 「画像で異常がないから痛くない」「損傷が治ったから痛みもないはず」とは判断できません。

 ただし、原因が分からないことだけを理由に、心理的な問題と決めつけることも適切ではありません。身体や神経系の状態を含めて、引き続き評価する必要があります。

痛みの定義に添えられた6つの補足事項

 IASPは、定義とともに6つの補足事項を示しています。以下は、その内容を理解しやすいように要約したものです。

 これらは、痛みを身体の損傷だけで説明せず、その人の体験として理解するための基本になります。

痛みと侵害受容の違い

 痛みを学ぶ際には、痛みと侵害受容を区別することが大切です。

 侵害受容とは、身体の組織を傷つける、または傷つけるおそれのある刺激を、神経系が符号化する過程です。

 一方、痛みは、その人が体験する感覚と情動の不快な体験です。

 両者は関連しますが、同じ現象ではありません。神経の反応や身体の防御反応があることだけで、本人の痛みの体験すべてを説明することはできません。

 刺激がどのように伝わり、調節されるのかについては、「痛みの生理学」で詳しく解説します。

生物学的・心理的・社会的な視点で痛みを捉える

 IASPの補足事項では、痛みが生物学的・心理的・社会的な要因の影響を受けることが示されています。

 リハビリテーションでは、これを次のような情報収集につなげて考えます。

 これらは、どれか1つを痛みの原因に決めるための分類ではありません。その人が困っていることと、支援できることを整理するための視点です。

 例えば、膝の痛みで歩行を避けている場合には、膝の状態だけでなく、「動くと壊れると思っているのか」「仕事や家庭で無理を続けているのか」なども確認します。

 心理面や生活背景を確認することは、痛みを「気のせい」と扱うことではありません。

リハビリテーションで大切にしたいこと

本人の言葉を出発点にする

 痛みの評価では、まず本人がどのように感じ、何に困っているかを確認します。

 臨床での質問例として、次のようなものがあります。

  • どこが、どのように痛みますか。
  • いつから痛みが始まりましたか。
  • どんな動きや場面で強くなりますか。
  • 痛みのために、できなくなったことはありますか。
  • 痛みについて、特に心配していることはありますか。

 痛みの強さに加えて、動作や生活への影響を聞くことで、支援の目標を具体的にできます。

言葉で伝えられない人の痛みにも目を向ける

 失語症や認知機能の低下などによって、痛みを十分に言葉で伝えられない人もいます。

 言葉による訴えが乏しいことは、痛みがないことを意味しません。

 臨床では、表情、発声、身体をかばう動き、介助時の反応などを観察し、普段との違いを確認します。

 ただし、しかめ顔や動作の拒否が必ず痛みによるとは限りません。不安や理解の難しさなども考慮し、本人が答えやすい方法や、家族・スタッフからの情報を組み合わせて判断します。

痛みの訴えの尊重と原因の評価を両立する

 本人の痛みを尊重することと、原因を検討することは、どちらも必要です。

 痛みの訴えだけで組織損傷の程度を決めることはできません。一方で、検査結果だけから本人の痛みを否定することもできません。

 問診や身体所見、医学的情報、生活への影響を合わせて、痛みの状態を理解していくことが大切です。

まとめ

 IASPの定義では、痛みは「感覚かつ情動の不快な体験」とされています。

 痛みを理解する際には、次の点を押さえましょう。

  • 痛みは、その人自身が体験するものである。
  • 痛みと組織損傷の程度は、単純には対応しない。
  • 痛みと侵害受容は、異なる現象である。
  • 身体・心理・社会的な背景を合わせて捉える。
  • 言葉で伝えられない場合にも、痛みの可能性を考える。

 リハビリテーションでは、身体機能とともに、本人の言葉や生活上の困りごとを確認することが、痛みへの支援の出発点になります。

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  • 痛みの基礎知識:痛みを学ぶ全体像を確認する
  • 痛みの分類:痛みを仕組みや経過から整理する
  • 痛みの生理学:痛みの伝達と調節の仕組みを学ぶ

参考文献

  1. International Association for the Study of Pain. IASP Announces Revised Definition of Pain. 2020.
  2. 日本疼痛学会.痛みの定義2020 日本語訳.2020.
  3. Raja SN, et al. The revised International Association for the Study of Pain definition of pain: concepts, challenges, and compromises. Pain. 2020;161(9):1976–1982. doi:10.1097/j.pain.0000000000001939.

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