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SIAS(脳卒中機能障害評価法)の評価方法と結果の見方|7領域22項目を解説

1.SIASとは

 SIAS(Stroke Impairment Assessment Set:脳卒中機能障害評価法)は、脳卒中患者に生じる機能障害を総合的に評価するために開発された評価法です。

 脳卒中では、運動麻痺だけでなく、筋緊張異常、感覚障害、関節可動域制限、疼痛、体幹機能障害、高次脳機能障害など、さまざまな障害が出現します。

 これらの障害は、それぞれが独立して存在するだけでなく、相互に影響しながら患者の日常生活動作や移動能力に関係しています。

 SIASは、このような脳卒中による機能障害を多面的に捉え、障害の特徴や重症度、経時的な変化を把握することを目的としています。

SIASの特徴

  • 脳卒中による機能障害を22項目で評価できる。
  • 運動麻痺だけでなく、感覚、筋緊張、体幹機能なども評価できる。
  • 各項目を点数化し、経時的な変化を確認できる。
  • 特別な大型機器を必要とせず、臨床で実施しやすい。
  • FIMなどのADL評価と組み合わせることで、機能障害と活動制限の関連を検討できる。

 SIASは、ICF(国際生活機能分類)の構成要素のうち、主に「心身機能・身体構造」に関連する評価です。

 したがって、SIASの結果だけで患者のADL自立度や社会参加の状態を判断することはできません。

2.SIASの評価項目と分類

 本記事では、SIASの22項目を以下の7領域に分類して解説します。

分類評価項目項目数配点
① 運動機能上肢近位、上肢遠位、下肢近位(股)、下肢近位(膝)、下肢遠位525点
② 筋緊張上肢筋緊張、下肢筋緊張、上肢反射、下肢反射412点
③ 感覚上肢感覚(手掌)、下肢感覚(足底)、上肢位置覚、下肢位置覚412点
④ 関節可動域・疼痛上肢関節可動域、下肢関節可動域、疼痛39点
⑤ 体幹機能垂直性、腹筋26点
⑥ 高次脳機能視空間認知、言語26点
⑦ 健側機能握力、健側大腿四頭筋筋力26点
合計2276点

 ※7領域は本記事での説明上の分類です。原著などでは、筋緊張と反射、関節可動域と疼痛、視空間認知と言語機能をそれぞれ別領域として整理しています。

 SIASの各項目は0〜3点または0〜5点で評価され、原則として高得点ほど機能障害が軽度であることを示します。

 ただし、各項目は評価する機能が異なるため、合計点だけでなく、項目別の得点を確認することが重要です。

3.SIASの評価方法

3-1.運動機能

 運動機能は、麻痺側上肢2項目、麻痺側下肢3項目の計5項目で構成されています。

 各項目は0〜5点で評価し、合計25点です。

 運動機能の評価では、随意運動の有無だけでなく、課題の達成度、動作の円滑さ、非麻痺側との違いを確認します。

① 上肢近位(Knee-Mouth Test)

評価目的

 肩関節と肘関節を中心とした麻痺側上肢の随意運動機能を評価します。

評価方法

 患者を座位とし、麻痺側の手を同側の膝の上に置きます。

 その位置から手を口元まで移動させ、再び膝の上に戻す動作を指示します。

観察するポイント

  • 手が膝から離れるか。
  • 手を口元まで移動できるか。
  • 肩関節と肘関節の協調運動が可能か。
  • 体幹による代償運動が出現していないか。
  • 動作の円滑さや非麻痺側との差。

採点の考え方

 0点は随意運動が認められない状態、5点は非麻痺側と同程度に円滑な運動が可能な状態を示します。

 中間の得点では、運動の達成度やぎこちなさを評価します。

臨床的な解釈

 上肢近位機能の低下は、食事や整容、更衣など、上肢を身体に近づける動作に影響することがあります。

 ただし、上肢近位機能が良好であっても、手指の分離運動が不十分な場合には、実用的な上肢機能が制限される可能性があります。

② 上肢遠位(Finger-Function Test)

評価目的

 麻痺側手指の随意運動および分離運動機能を評価します。

評価方法

 麻痺側手指の屈曲・伸展を中心とした運動課題を実施し、手指の随意運動と分離運動の状態を確認します。

観察するポイント

  • 手指の随意運動が認められるか。
  • 集団屈曲・集団伸展が可能か。
  • 手指の分離運動が可能か。
  • 動作の円滑さ。
  • 非麻痺側との違い。

採点の考え方

 0〜5点で評価します。低得点域では1A・1B・1Cの細分類が用いられます。

 手指の運動が全く認められない状態から、分離運動が可能となり、円滑に運動できる状態までを段階的に評価します。

臨床的な解釈

 手指機能は、食事、更衣、整容、書字、物品操作などのADLに関係します。

 SIASで手指機能の障害を確認した場合、必要に応じてSTEFやBox and Block Testなどを併用すると、より詳細な上肢機能の評価が可能になります。

③ 下肢近位(股):Hip-Flexion Test

評価目的

 麻痺側股関節の屈曲運動を中心とした随意運動機能を評価します。

評価方法

 患者を座位とし、麻痺側の股関節を屈曲させ、大腿部を持ち上げるよう指示します。

観察するポイント

  • 股関節屈曲の随意運動があるか。
  • 大腿部を持ち上げられるか。
  • 運動範囲が十分か。
  • 体幹後傾などの代償運動がないか。
  • 動作の円滑さ。

臨床的な解釈

 股関節屈曲機能の低下は、歩行時の下肢振り出しや段差昇降などに影響することがあります。

 ただし、座位での股関節屈曲能力と歩行時の下肢振り出し能力は必ずしも一致しないため、実際の歩行動作も確認する必要があります。

④ 下肢近位(膝):Knee-Extension Test

評価目的

 麻痺側膝関節伸展の随意運動機能を評価します。

評価方法

 患者を座位とし、麻痺側の膝関節を伸展するよう指示します。

観察するポイント

  • 膝関節伸展の随意運動があるか。
  • 下腿を持ち上げられるか。
  • 十分な膝関節伸展が可能か。
  • 代償運動が出現していないか。
  • 動作の円滑さ。

臨床的な解釈

 膝関節伸展機能は、立ち上がり、立位保持、歩行時の下肢支持などに関係します。

 しかし、SIASは座位での随意運動を評価するため、立位時の膝折れや荷重時の膝関節制御を直接評価するものではありません。

⑤ 下肢遠位:Foot-Pat Test

評価目的

 麻痺側足関節の背屈を中心とした随意運動機能を評価します。

評価方法

 患者を座位とし、踵を床につけた状態で前足部を持ち上げる動作を指示します。

観察するポイント

  • 足関節背屈の随意運動があるか。
  • 前足部を持ち上げられるか。
  • 反復運動が可能か。
  • 動作速度やリズム。
  • 足部内反などの異常運動の有無。

臨床的な解釈

 足関節背屈機能の低下は、歩行遊脚期の足部クリアランス低下に関係します。

 また、筋緊張異常や足関節可動域制限が併存する場合には、足部の引っかかりがさらに強くなる可能性があります。

3-2.筋緊張

 筋緊張の領域は、上肢筋緊張、下肢筋緊張、上肢反射、下肢反射の4項目で構成されます。

 各項目は0〜3点で評価し、合計12点です。

 脳卒中後には、筋緊張の亢進や低下、深部腱反射の異常などが認められることがあります。

 これらの異常は随意運動や姿勢制御に影響するため、運動機能と併せて評価することが重要です。

⑥ 上肢筋緊張

評価目的

 麻痺側上肢の筋緊張異常を評価します。

評価方法

 麻痺側上肢を他動的に動かし、筋の抵抗や筋緊張の状態を確認します。

観察するポイント

  • 他動運動に対する抵抗の程度。
  • 筋緊張の亢進または低下。
  • 関節運動時の抵抗の変化。
  • 関節拘縮との区別。

臨床的な解釈

 上肢の筋緊張亢進は、肘関節屈曲や手指屈曲などの姿勢異常につながる場合があります。

 ただし、他動運動時の抵抗には筋や関節周囲組織の短縮も関係するため、抵抗が強いことだけで痙縮と判断しないことが重要です。

⑦ 下肢筋緊張

評価目的

 麻痺側下肢の筋緊張異常を評価します。

評価方法

 麻痺側下肢を他動的に動かし、筋緊張や運動抵抗の状態を確認します。

観察するポイント

  • 筋緊張の亢進または低下。
  • 他動運動時の抵抗。
  • 足関節底屈筋群などの筋緊張異常。
  • 関節可動域制限の影響。

臨床的な解釈

 下肢の筋緊張異常は、立位姿勢や歩行パターンに影響することがあります。

 特に足関節底屈筋群の筋緊張亢進は、尖足や内反などの姿勢異常に関連する場合があります。

⑧ 上肢反射

評価目的

 麻痺側上肢の深部腱反射の異常を評価します。

評価方法

 打腱器を用いて上肢の深部腱反射を確認します。

観察するポイント

  • 深部腱反射の亢進。
  • 反射反応の減弱や消失。
  • 非麻痺側との左右差。
  • 異常な反射反応の有無。

臨床的な解釈

 脳卒中による上位運動ニューロン障害では、深部腱反射の亢進が認められる場合があります。

 ただし、急性期には反射が減弱する場合もあり、発症時期や病態を考慮する必要があります。

⑨ 下肢反射

評価目的

 麻痺側下肢の深部腱反射の異常を評価します。

評価方法

 打腱器を用いて、膝蓋腱反射やアキレス腱反射などを確認します。

観察するポイント

  • 深部腱反射の亢進または減弱。
  • 非麻痺側との左右差。
  • クローヌスなどの異常反応。
  • 筋緊張異常との関連。

臨床的な解釈

 深部腱反射の異常は、中枢神経系の運動制御障害を把握するための所見の一つです。

 反射の亢進が認められた場合には、筋緊張や随意運動、歩行時の運動パターンなどを併せて確認します。

 筋緊張領域の評価で注意すること

 SIASの筋緊張・反射項目は、筋緊張異常や反射異常を簡便に把握するためのものです。

 痙縮の詳細な評価が必要な場合には、Modified Ashworth Scale(MAS)やModified Tardieu Scaleなどを併用します。

3-3.感覚

 感覚の領域は、上肢感覚(手掌)、下肢感覚(足底)、上肢位置覚、下肢位置覚の4項目で構成されています。

 各項目は0〜3点で評価し、合計12点です。

 感覚障害は、随意運動や姿勢制御、物品操作、歩行などに影響することがあります。

⑩ 上肢感覚(手掌)

評価目的

 麻痺側上肢の触覚機能を評価します。

評価方法

 患者に閉眼を指示し、麻痺側の手掌に触覚刺激を与えます。

 刺激を感じるか、非麻痺側と比較して感覚に違いがあるかを確認します。

観察するポイント

  • 触覚刺激を認識できるか。
  • 感覚の鈍麻や脱失。
  • 非麻痺側との感覚の違い。
  • 刺激に対する反応の一貫性。

臨床的な解釈

 手掌の触覚障害は、物品把持や操作に影響する場合があります。

 特に、視覚情報が利用できない状況では、物品の保持や操作が不安定になる可能性があります。

⑪ 下肢感覚(足底)

評価目的

 麻痺側足底の触覚機能を評価します。

評価方法

 患者に閉眼を指示し、麻痺側足底に触覚刺激を与えます。

 非麻痺側と比較しながら、感覚の低下や消失の有無を確認します。

観察するポイント

  • 足底の触覚刺激を認識できるか。
  • 感覚の鈍麻や脱失。
  • 左右差。
  • 刺激に対する反応の安定性。

臨床的な解釈

 足底感覚は、立位や歩行時の身体制御に関係する重要な感覚情報です。

 足底感覚が低下している場合、荷重状態の認識や姿勢調整に影響する可能性があります。

⑫ 上肢位置覚

評価目的

 麻痺側上肢の関節位置覚を評価します。

評価方法

 患者に閉眼を指示し、検査対象の関節を他動的に動かします。

 患者が関節の位置や運動方向を認識できるか確認します。

観察するポイント

  • 関節位置を認識できるか。
  • 運動方向を正しく判断できるか。
  • 小さな運動を認識できるか。
  • 非麻痺側との違い。

臨床的な解釈

 上肢位置覚の障害は、到達運動や物品操作の正確性に影響する場合があります。

 また、視覚による代償が強い患者では、閉眼時に動作の正確性が著しく低下することがあります。

⑬ 下肢位置覚

評価目的

 麻痺側下肢の関節位置覚を評価します。

評価方法

 患者に閉眼を指示し、検査対象の関節を他動的に動かして、関節位置や運動方向を認識できるか確認します。

観察するポイント

  • 関節位置を認識できるか。
  • 運動方向を判断できるか。
  • 感覚障害の程度。
  • 非麻痺側との違い。

臨床的な解釈

 下肢位置覚障害は、立位や歩行時の下肢位置の認識に影響します。

 特に、麻痺側下肢の位置を正確に認識できない場合、荷重やステップ動作が不安定になることがあります。

 感覚領域の評価で注意すること

 感覚検査では、患者の理解力や注意機能、失語症の影響を考慮する必要があります。

 また、触覚や位置覚の障害が認められた場合には、必要に応じてより詳細な感覚検査を実施します。

3-4.関節可動域・疼痛

 関節可動域・疼痛の領域は、上肢関節可動域、下肢関節可動域、疼痛の3項目で構成されています。

 各項目は0〜3点で評価し、合計9点です。

 脳卒中患者では、運動麻痺や筋緊張異常、長期間の不動などによって関節可動域制限が生じる場合があります。

 また、疼痛は随意運動やADLの遂行を妨げる要因となるため、併せて評価することが重要です。

⑭ 上肢関節可動域

評価目的

 麻痺側上肢の関節可動域制限を評価します。

評価方法

 SIASでは、上肢の代表的な関節可動域として肩関節外転可動域を評価します。

観察するポイント

  • 肩関節外転可動域。
  • 関節可動域制限の程度。
  • 疼痛の有無。
  • 筋緊張や軟部組織の短縮の影響。

臨床的な解釈

 肩関節可動域制限は、更衣や整容などのADLに影響する場合があります。

 また、麻痺側肩関節では、疼痛や亜脱臼、筋緊張異常などが併存することがあるため、評価時には注意が必要です。

⑮ 下肢関節可動域

評価目的

 麻痺側下肢の関節可動域制限を評価します。

評価方法

 SIASでは、下肢の代表的な関節可動域として足関節背屈可動域を評価します。

観察するポイント

  • 足関節背屈可動域。
  • 下腿三頭筋などの短縮。
  • 筋緊張異常。
  • 関節拘縮の有無。

臨床的な解釈

 足関節背屈制限は、立位時の下腿前傾や歩行時の足関節運動に影響する場合があります。

 特に、立脚期に必要な背屈可動域が不足している場合、膝関節や股関節などに代償運動が生じる可能性があります。

⑯ 疼痛

評価目的

 脳卒中患者に認められる疼痛の程度や影響を評価します。

評価方法

 疼痛の有無や程度、日常生活や運動に対する影響を確認します。

観察するポイント

  • 疼痛の有無。
  • 疼痛の部位。
  • 疼痛の程度。
  • 運動やADLへの影響。

臨床的な解釈

 脳卒中後には、麻痺側肩関節痛、筋骨格系疼痛、中枢性脳卒中後疼痛などが認められる場合があります。

 疼痛が強い場合、随意運動や関節可動域の評価結果にも影響するため、疼痛の原因を検討する必要があります。

 なお、疼痛の詳細な強度を把握する場合には、NRSやVASなどを併用します。

3-5.体幹機能

 体幹機能は、垂直性と腹筋の2項目で構成されています。

 各項目は0〜3点で評価し、合計6点です。

 体幹機能は、座位保持、立位、移乗、歩行など、さまざまな基本動作に関係しています。

⑰ 垂直性(Verticality)

評価目的

 座位において体幹を垂直に保持する能力を評価します。

評価方法

 患者を座位とし、体幹の傾斜や姿勢保持の状態を確認します。

観察するポイント

  • 体幹を垂直に保持できるか。
  • 側方への傾斜が認められるか。
  • 姿勢の修正が可能か。
  • 姿勢保持に介助が必要か。

臨床的な解釈

 垂直性の障害は、座位保持や立位、移乗動作などに影響することがあります。

 また、身体の垂直認知に障害がある場合、患者自身が傾斜した姿勢を垂直と認識している可能性もあります。

 ただし、SIASの垂直性項目だけで主観的身体垂直やLateropulsionの状態を詳細に判断することはできません。

⑱ 腹筋(Abdominal Muscle Strength)

評価目的

 体幹屈曲に関わる腹筋機能を評価します。

評価方法

 患者に体幹屈曲運動を指示し、腹筋の収縮や課題遂行能力を確認します。

観察するポイント

  • 体幹屈曲運動が可能か。
  • 腹筋の収縮が認められるか。
  • 動作時の代償運動。
  • 運動の達成度。

臨床的な解釈

 腹筋機能の低下は、起き上がりや座位姿勢の制御などに影響する場合があります。

 ただし、腹筋機能だけで体幹全体の姿勢制御能力を判断することはできません。

 必要に応じてTrunk Control Test(TCT)やTrunk Impairment Scale(TIS)などを併用します。

3-6.高次脳機能

 高次脳機能の領域は、視空間認知と言語の2項目で構成されています。

 各項目は0〜3点で評価し、合計6点です。

 脳卒中では、運動機能の障害だけでなく、視空間認知障害や失語症などが認められる場合があります。

 これらの障害は、リハビリテーションの実施や日常生活に影響するため、早期から評価することが重要です。

⑲ 視空間認知

評価目的

 視空間情報を認識・処理する機能を評価します。

評価方法

 SIASでは、線分二等分課題を用いて視空間認知機能を評価します。

観察するポイント

  • 線分の中央を正しく判断できるか。
  • 二等分位置の偏り。
  • 左右の空間認識の違い。
  • 課題への注意の状態。

臨床的な解釈

 視空間認知障害がある場合、身体や周囲の空間を正確に認識できず、ADLや移動に影響することがあります。

 特に半側空間無視が疑われる場合には、BITなどの詳細な高次脳機能評価を実施することが望まれます。

⑳ 言語

評価目的

 脳卒中による失語症を中心とした言語機能の障害を評価します。

評価方法

 患者との会話や言語理解、言語表出の状態を確認します。

観察するポイント

  • 自発話の状態。
  • 言語理解の状態。
  • 言語表出の困難さ。
  • コミュニケーションへの影響。

臨床的な解釈

 失語症がある場合、患者が検査指示を十分に理解できないことがあります。

 そのため、運動機能や感覚機能の評価結果にも影響する可能性があります。

 失語症が疑われる場合には、標準失語症検査(SLTA)などの専門的な評価を併用します。

3-7.健側機能

 健側機能は、握力と健側大腿四頭筋筋力の2項目で構成されています。

 各項目は0〜3点で評価し、合計6点です。

 脳卒中患者では、麻痺側だけでなく、非麻痺側の筋力や身体機能もADL能力に影響します。

 なお、本記事では一般的な分類に合わせて「健側」という表現を使用しますが、非麻痺側にも筋力低下や運動機能障害が認められる場合があります。

㉑ 握力

評価目的

 非麻痺側上肢の握力を評価します。

評価方法

 握力計を使用し、非麻痺側の握力を測定します。

観察するポイント

  • 握力の測定値。
  • 年齢や体格などの影響。
  • 既存の筋力低下。
  • 全身状態や廃用の影響。

臨床的な解釈

 非麻痺側握力は、物品操作や移乗動作などに関係する場合があります。

 また、非麻痺側の筋力低下が著しい場合には、全身的な筋力低下や廃用の影響も検討する必要があります。

㉒ 健側大腿四頭筋筋力

評価目的

 非麻痺側大腿四頭筋の筋力を評価します。

評価方法

 非麻痺側膝関節の伸展筋力を評価します。

観察するポイント

  • 膝関節伸展筋力。
  • 抵抗に対する運動能力。
  • 筋力低下の有無。
  • 既存の整形外科的疾患などの影響。

臨床的な解釈

 非麻痺側大腿四頭筋筋力は、立ち上がり、立位保持、移乗、歩行などに関係します。

 非麻痺側筋力が低下している場合には、麻痺側の機能障害に加えて、移動能力がさらに制限される可能性があります。

4.SIASの採点方法と結果の見方

4-1.採点方法

 SIASは、22項目をそれぞれ0〜3点または0〜5点で評価し、合計76点満点で算出します。

 一般に、得点が高いほど機能障害が軽度であることを示します。

 ただし、SIASの得点は順序尺度であり、各得点間の機能的な差が等しいとは限りません。

 また、各項目で採点基準が異なるため、評価時には正式な判定基準を確認する必要があります。

4-2.領域別得点の確認

 SIASでは、合計点だけでなく、各領域の得点を確認することが重要です。

 例えば、運動機能が改善していても、感覚障害や体幹機能障害が残存している場合、ADLや歩行能力の改善が十分に得られないことがあります。

 以下は、領域別の得点を整理するための記録例です。

 SIAS領域別得点の記録

入力例

各領域の得点を入力すると、合計点と得点の分布を確認できます。

運動機能     満点 25

筋緊張      満点 12

感覚       満点 12

関節可動域・疼痛 満点 9

体幹機能     満点 6

高次脳機能    満点 6

健側機能     満点 6

合計得点 0 / 76

未入力の領域があります クリア

※この入力欄は領域別得点を確認するための補助ツールであり、正式なSIAS評価票ではありません。項目別の正式な採点を終えてから入力してください。

4-3.経時的な変化の確認

 SIASは、初回評価と再評価を比較することで、機能障害の変化を確認できます。

 例えば、下肢近位機能が改善しても、下肢遠位機能の改善が乏しい場合には、足関節背屈機能や歩行時の足部制御について検討する必要があります。

 ただし、SIASの合計点が改善したからといって、ADLや歩行能力が必ずしも同程度に改善するわけではありません。

 SIASによる機能障害の変化と、実際の動作能力の変化を関連づけて解釈することが重要です。

5.SIASと他の脳卒中評価との違い

 脳卒中患者の評価には、SIAS以外にもさまざまな評価法があります。

 SIASは機能障害の全体像を把握するのに適しています。

 一方、運動機能の詳細な評価にはFMA、日常生活動作の自立度にはFIMなど、評価目的に応じた指標を組み合わせることが望まれます。

6.SIAS評価時の注意点

評価条件の統一

 経時的な比較を行う場合には、評価姿勢や検査方法、患者への指示などを統一する必要があります。

意識・注意・言語機能の影響

 意識障害や注意障害、失語症などがある場合、患者が検査指示を理解できず、評価結果に影響する可能性があります。

疼痛や関節拘縮の影響

 疼痛や関節可動域制限がある場合、随意運動が十分に発揮されないことがあります。

合計点の解釈

 SIASは合計76点ですが、合計点による一律の重症度分類だけで患者の状態を判断することは適切ではありません。

 また、各項目の得点変化には床効果や天井効果が存在する可能性があります。

7.まとめ

 SIASは、脳卒中患者の機能障害を22項目、76点満点で総合的に評価する方法です。

 本記事では、SIASを運動機能、筋緊張、感覚、関節可動域・疼痛、体幹機能、高次脳機能、健側機能の7領域に分類しました。

 SIASの特徴は、運動麻痺だけでなく、感覚障害、筋緊張異常、体幹機能障害などを多面的に把握できることです。

 臨床では、合計点だけでなく、各項目の得点や経時的な変化を確認することが重要です。

 また、SIASによって明らかになった機能障害を、基本動作やADLの制限と関連づけて解釈することで、より具体的なリハビリテーション目標や治療計画の立案につなげることができます。

8.参考文献

  1. Chino N, Sonoda S, Domen K, Saitoh E, Kimura A. Stroke Impairment Assessment Set (SIAS). The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine. 1994;31(2):119–125. 原著論文
  2. 慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室.SIAS 脳卒中機能障害評価法.
  3. Sonoda S, et al. The stroke impairment assessment set: its internal consistency and predictive validity. PubMed掲載論文.

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